第31話「VSビッグスケルトン その2」

 バーサスは、あっという間に罠を掻い潜り出口へと辿り着く。


 出口の光に目を細めながら出ると、そこには、骨の槍に四肢を貫かれ、身動きとれなくなっているドニーの姿が飛び込んできた。


「ドニー……」


 バーサスはドニーをそんな姿にした張本人、巨大なビッグスケルトンを眺める。


「ちゃんと、獲物は取って置いてくれたようだな。礼を言う」


「倒さない、大変」


 正直に感想を述べるドニーは、バーサスの姿を見止めると、自分の役目は終わりと、ばかりに体の力を抜き、ダラリと骨の槍に体重を任せ安楽な姿勢をとる。


「まずは、これから」


 左手の籠手に付く、通信装置をいじると、ビッグスケルトンの顔のすぐ近くに小型のドローンが浮かぶ。


「位置良し。点火!」


 小型ドローンは爆破し、スケルトンの頭蓋を砕く。


 ぐらぁ~と揺れるビッグスケルトンの隙を見逃さず、バーサスはマシンガンで足を撃つ。


 タタタタッ!


 小気味良い音が響き、足の骨が削れていく。


「なかなかに硬い。カルシウム、しっかり摂っているようだな。こっちも試すか」


 肩を少し動かすと、肩当てから、小さいピストルのようなものが飛び出すと、レーザーが照射され、スケルトンの骨を焼き斬る。


 バランスを崩し、倒れ掛かるビッグスケルトンは最後の抵抗とばかりに骨の槍を無数にバーサスに向かって投げつける。


「いろいろ試させてくれる良い獲物だ」


 笑みを浮かべると、エリザベスから渡された小物の1つを投げつける。

 それは空中で開くと、中からネットが飛び出し、骨の槍を覆い包む。


「捕獲用とはエリザベスにしては珍しいが、役に立ったな」


 ネットが完全に相手を無力化するだけの武器だと思っていると、ネットは自動でどんどん中身を締め上げるように収縮していく。

 骨がバキバキと音を立てても終ることなく、どんどんと締め上げていく。

 最後に中身がバラバラになってようやく収縮機能が止まった。


「捕獲用……ではなかったようだな」


 一瞬でもエリザベスが捕獲用の武器を自分に渡してきたと思ったことを恥じつつ、戦闘面ではそのことをおくびにも出さずに冷静に次の動作に移る。


 倒れてきたスケルトンに潰されない位置に移動し、しっかりと倒れたのを見届けると、右腕の籠手から刃を出し、首元に跳ぶ。


「トドメだ!」


 刃を顎から刺し込み、頭蓋を脊椎から力任せに引き抜きにかかる。

 

「ガガガタガタっ!」


 声なのか、歯がぶつかりあった音なのか、スケルトンから苦しそうな音が漏れる。


 ガキンッ!!


 変な擬音が響くと、頭蓋が脊椎から無理矢理に外された。

 刃を抜くと、スケルトンはビクンッビクンッと体が震えている。


「甦るかもしれないし、粉々にするのがエリザベスとの約束だったな」


 バーサスは刃を再び刺しては抜き、刺しては抜きを繰り返す。

 徐々に頭蓋骨としての形状を維持できなくなってくると、刺すと言うより、叩き潰すといったていで刃を振るう。


 完全に頭部がなくなり、身じろぎ一つとらなくなったビッグスケルトンであったが、バーサスの攻撃は止まらなかった。


「ハハハッ!!」


 エリザベスとの約束どおり、骨の1本すら残さぬ勢いで、全てを粉々にしていく。

 白い粉の山が出来上がり、ようやく刃を収めると、そこでようやくバーサスはドニーの方へ向かい、骨の槍を抜き、宙へ放ると、レーザーで消し炭にする。


「動けるか?」


 ドニーの手を取り、起き上がらせる。


「大丈夫。問題ない」


 ドニーの四肢は服が破れた以外、刺さっていた跡は一つも見られず、ぐるんぐるんと回す腕、グッグッと屈伸する足にも特に怪我の影響は見られなかった。


「あとはエリザベスが、ゾンビとデュラハンとやらをなんとかするはずだが、いったいどうするのか、想像もしたくないな」


 バーサスは遠い目をしながら呟いた。

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