第29話「VSトラップ」
バーサスが先行し、抜け道を歩いていく。
すぐ後ろにはエリザベスがゾンビをぞんざいに引きずりながら運んでいく。
コンクリートの打ちっ放しの通路が続くが、ところどころ機械音が低音で響渡り、この通路までもに
「何もないというのは薄気味悪いな」
スケルトンは全員、集まって巨大なスケルトンと化したのか、1体すら出て来なかった。
しかし、バーサスは油断することなく、歩みを進めていると、ピッと機械音が聞こえた。
「やはりっ!」
声を上げると同時にしゃがむと、頭上をレーザーが通り抜ける。
「おおっ! すごい、良く避けた!!」
バーサスは両手を叩いて褒めるエリザベスを睨みつける。
「そんな顔するなよ。大丈夫ちゃんと致命傷にならない
「謎の説得力があるわね」
今はエリザベスの手元で落ち着くユキエは安全圏から、そんな意見を述べる。
「お前の性格上、罠を仕掛けているのは分かっていた。我が言いたいのは、今のごときを避けられないと思っていた事が心外だ」
「ああ~。なるほど。それはすまなかった」
バーサスの意見に珍しく納得を見せ、素直に謝罪する。
「罠自体はいいのね。なんかだんだんアタシが一番の常識人のような気がしてきたわ」
ユキエはスマホの画面の中で、肩をすくめ、もはやこの2人に関しては何も言うまいと誓った。
「さて、行くぞ」
バーサスは先ほどよりさらに慎重に進み、直感的に怪しいところを見つけると迂回した。
「ふむ。良く
エリザベスは感心しながら、呟く。
「簡単だ。スケルトンもここを通っているはず。だったら確実に罠には引っかかっているだろう。そして、粉にまでなったものは修復しない」
「なるほどね。骨の粉があるところには罠があるということか~。いや、それは盲点だった。あの骨ども、私の食料だけじゃなく、華麗な
エリザベスから、「ふっ、ふふっ」と笑い声が漏れるのだが、この場にいた誰もがその顔を恐ろしくて直視することが出来なかった。
「ア、アタシ、バーサスに持っててもらおうかな~」
罠よりもエリザベスの方が脅威と判断したユキエの台詞は、しかし、バーサスの声によって掻き消された。
「扉だ。ここが目的地か?」
「ああ、そうだね。今開ける。ちょっとそこをどいてくれ」
ナンバーロックになっている扉に淀みなく数字を入力すると、ピピッという音の後、鍵の外れた音が静かに響く。
「こういう時のお約束は、開けるとゾンビが居たりするんだが、バーサスが先に入ってくれないか?」
エリザベスの言葉に渋々従うバーサスだが、内心では、中にゾンビが待ち受けていることよりも、わざわざ先に入るように言ったエリザベスによる特性トラップが仕掛けられている方が余程脅威だと考えていた。
かくして扉を開けてバッと現れたのは1体のゾンビだった。
「ゾンビが生きているなら罠はないな」
本来は安堵する場面ではないのだが、バーサスは息を吐きながら、ゾンビの首に手を添え、ゴキッと一回転させた。
「良しっ。他は問題なさそうだ」
研究所の中をぐるりと見回してからバーサスは告げた。
その言葉を聞いたエリザベスは悠々と扉の中へ入っていく。
「ようこそ。私の
エリザベスは
「さぁ、実験を始めよう!」
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