第2話「ドヤ顔の美少女」


「…………」 じぃー


「…………」



 やばい……。


 清水さんが僕のことを物凄い睨んでくる。何故か視線がすごい痛いぞ……。


 何これ? あれか? 僕が清水さんのお誘いを断ったからか? ものすっごい涙目でプルプルしながら、僕を見つめて来るんだけど……何か選択肢間違ったかな?



「…………」 じぃ~


「もしかして……この小説について語りたいの? なら、僕が相手になるけど……」



 ついに、清水さんの視線攻撃に耐え切れず話しかけてしまった……。

 

 だって、あの視線をこれ以上無視することは僕にはできそうもないんだもん……。


 それに見た感じ、どうしてもこの超B級ホラー小説の話をしたいのは彼女の方だろう。


 なら、ここは僕が彼女に合わせてあげれば――、



「……はぁ? 貴方は何を言っているのかしら?」


「――え?」



 彼女はそう言うと、今までプルプルしてた涙目が『ぴょこん!』っと一瞬にして引っ込み、次の瞬間には新しい顔でもブン投げられたのかと言うくらいに元気百万馬力の勝ち誇ったかのようなドヤ顔をしてこう言った。



「ハッ……!

 最初はこの私の尊い慈悲を無碍にも断るものだから、このナマクラぼっちは何を血迷ったことを言うのかしらと頭を悩ませたものだけど……

 いざ、蓋を開けてみれば!!


『もしかして……この小説について語りたいの?』


 ですって……? まぁ、まぁ……まぁ! なんて白々しい演技なのかしら?

 さては、貴方……自分がこんなチンケな超B級ホラー小説を好きなのがバレて恥かしいからって――、


『僕はぁ~、こんな小説好きじゃないんだけど……君がどうしても、この小説について話したいってい言うなら、付き合ってもいいんだけどね~?』


 みたいな態度を取っているのね!?」


「…………」



 この女は一体何を言っているのだろう……?



「あらあら、なんて浅はかで愚かな思考なのかしら?

 みなまで言わなくても分かっているわ! 分かってる!

 そう、私は全て分かっているのよ!

 つ・ま・り、この『学校一の美少女』の私が突然話しかけて緊張しちゃったのよね……?

 ウフフ♪ だから、咄嗟にあんな態度を取ってしまったのでしょう……?

 ええ、いいわ! 許してあげる!

 そりゃあ~? 一度はこの私の情け、慈悲、お誘いを断ったんですもの!

 その代償として、嗚咽を吐き瞳に涙をプルプル溜めながら、天に懇願する哀れな子羊のように! この私を称えるのが礼儀ってものだけど……

 でも、私もそこまで鬼ではないわ!

 だ・か・ら♪ 今日の所は……」 チラ


「…………?」



 何でそこでタメを作ってまでドヤ顔で俺をチラ見するのかな?



「貴方がこの私の話し相手になることで許してあげてもいいのよ……?」


「……いや、結構です」



 なんか彼女の態度がムカついたので、僕がそう答えると……。



「…………」 プルプル…… ← 涙目



 やっぱり、学校一の美少女が仲間になりたそうな目で僕を睨みつけていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る