隣の女子大生

中州修一

第1話 朝ごはん

真夜中、俺は意識が飛びそうなくらいアルコールを摂取したあと、おぼつかない足で家に帰っていた。


「おえぇ……」


もうさっきから吐きすぎて胃液らしい透明な液体しか出てこない。


「くっそ、マジであの上司……」


普段からの不満や怒りから1人で飲みすぎてしまった。

だんだんと意識が無くなってくる……


「大丈夫ですか!?」


いきなり後ろから女性の声がしたような気がした。そこからはもう覚えていない。



「ん……んあ」

目を開けると、そこには俺の住むアパートの天井が目に入った。

「帰ってきたのか……?ん?」

そこで異変に気がつく。

天井は似ているが、いつも布団で寝ている俺には馴染まないいつもよりふかふかなベッド。

起きると、明らかに女物のものばかり並ぶ部屋だった。


「あ、起きましたか?」


キッチンの方からいい匂いを漂わせながら、女性が1人出てきた。肩まで伸びた髪は微妙に茶色がかっていて、顔は整っていて、顔は少し幼い感じを残していて、美少女と言った感じだ。


「昨日は大変でしたね、斉藤さん。よかったら朝ごはん食べていきませんか?」

「え……なんで俺の事知ってるの?」

「ここ数週間で結構お見かけしましたから……気づきませんでしたか?」

「全く気が付かなかった。そんなに見かけることあったかな」

「はい。だって隣の部屋の住人ですし」

「え!?」


驚いて、それから納得する。妙に似てる間取りとか、天井も似てたし。


「ごめん俺、隣の人のこと何も知らなかった。」

「いいんですよ、私だって先月引越ししてきたばかりですし」

「先月?あぁ、引越し業者来てた日があったな」

「はい!私堺ひなたと言います。これからよろしくお願いしますね」


真っ直ぐな目で俺を見る。


「うん、よろしく、俺は斉藤大輔」

「じゃあ大輔さんですね、あ、朝ごはんどうします?」

「じゃあ頂こうかな」


平日は会社だから朝昼晩とコンビニで済ませ、休日も外食の生活だった俺にとって、久しぶりの手作り料理だった。


「それじゃあいただきます」

「どうぞ」


味噌汁と卵焼き、ご飯という体に優しい献立だった。


「……おいしい」

「ほんとですか!よかったです!」


嬉しそうにはにかむ彼女。

実際、本当に美味しかった。母の味って感じがする。


「ごちそうさま」

「お粗末さまです」


結局朝はあんまり食べない俺がご飯をおかわりした。


「堺さんは大学生?」

「はい、今年から近所にある大学に通ってます。あとひなたでいいですよ。」


どうやらひなたさんは近所の有名女子大に入学したばかりの一年らしい。バイトは両親が心配するから相談中ということで、暇な時間が多いと言う。


「今日はありがとね、また今度お礼させてよ」

「いえ、そんな大したことないですよ。なんなら、また食べに来ませんか?ご飯」

「え、いいんですか?」

「はい!いつでもいらしてください、別に毎日でも構いませんから」

「え、毎日!?」

「ダメ……ですかね?」

「いや……逆にいいの?」

「基本家にいるので暇なんですよ。大輔さん朝早いですよね?私もそのくらいには支度始めてるので」

「そっか……」

「だから毎日来てくれませんか?」

「じゃあ分かったよ、よろしくね」

「やった……!はい!頑張ります!」


こうして毎朝女子大生にご飯を作ってもらうという謎な関係が完成した。




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