1話 『魔法大全.xlsx』を修正してみた -1
僕は、鹿屋己慧琉(かのやみえる)。
葛城(かつらぎ)高校の1年。
どんな高校生かって?
実は……とかもったいぶりたいけど、残念ながら普通の高校生だ。面倒ごとは嫌い、勉強はそれなり、スポーツなどは興味なし、友達も面倒なのでいらない、学校ではもっぱらラノベを読んで放課後まで時間をつぶして、さっさと帰る。
ほら、普通の高校生だ。
普通じゃないって?
こんなヤツ、クラスに1人はいるでしょ。有意義な学生生活を当たり障りなく過ごしてるヤツ。それが僕だ。
もう一つ忘れてた。
ネトゲを朝方までしてるから、授業中はいつも眠い。
ほら、普通だ。
だからこうして、急に転がりこんできた連休をネトゲのギルドバトルに惜しげもなく費やす……費や……費やそうとしたわけなんだけど。
「……おい、サーバー障害てなんなのさ」
今日のために鍛えてきたカードの布陣を再確認して、ギルドバトルのバナーをタップすると、表示されたのは『サーバー障害』と『ギルドバトル延期』の文字。なになに……『今日の地震の影響で』? 『サーバーの遅延が発生』? 『回復に努めるが今月のギルドバトルの中止も検討』?
「クソ、ふざけないでよ。回復できないんなら石くらいよこしなさいよ石」
このゲーム、イラストは好きなんだけどトラブル多いんだよなぁ。まあ、そのたびに配布されるお詫び石でガチャが回せるからいいんだけどさ。
と思ったら案の定、プレゼント欄に運営から石が届いてる。……なにこれ、ガチャ三回しかまわせないじゃん。
「運営、クソだね」
ふと思いついてギルド板を覗いてみると、案の定荒れてた。メンバーの1人が運営を見限って引退宣言をしたようで、他のメンバーがそれを踏み止めようとしたりねぎらいの声をかけてる会話がダラダラ続いてる。
ギルド板を閉じる。
僕がこのギルドに所属してるのは強ギルドで上位を狙いやすく、なによりサイレントOKだからだ。
『うちは和気あいあいとしたギルドです』とか『最低限のコミュ必須』とか語ってるギルドを見かけるけど、どんだけウザいんだよ、とか思う。
引退宣言したヤツだって、ただの一般メンバーだ。ギルマスも止めはしてるけど、抜けたとたんメンバー募集にすぐさま走るんだろうし、ソイツの話題も2ヶ月経てばすっかりさっぱり消え失せるでしょ。新加入したヤツが強かった日には、2週間ももたないって。
そんなもんですよ、課金ゲーの人間関係なんてしょせんは。
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