第6話 入学
今日は、とうとう宮廷学校へ入学する日。
シャーロット様は相変わらず私を無視してるが、宮廷学校に一緒に通うことになった。
宮廷学校は、ある一定の条件を満たせば日本の大学のように好きな科目を好きなだけ受講できる。
7歳に入学して18歳になると卒業する人が多い。
私は魔力がないので、受講できる科目は限られる。
コルベーナ侯爵夫人に勧められた語学、算術、歴史、マナー講座に、私が希望した魔法初級講座を受講することに決めた。
シャーロット様は、魔法初級講座ではなく魔法基礎講座だ。初級は魔力を使わないが基礎だと使う。
基礎講座を学んで単位を習得すれば、精霊学、薬草学、魔法陣学、攻撃魔法実践学など、より高度な授業を受講できる。
宮廷学校の門をくぐると、他の生徒が私をなぜかチラ見してくる。
そしてコソコソ噂話をする。
「シャーロット様の隣にいる方は、どなたかしら」
「随分、みすぼらしい方ね。こっちまで恥ずかしくなってしまうわ」
「ほんと、メイドの方がまだ良い服装をしてるわ」
「シャーロット様が気の毒だわ」
今まで対して気にしてこなかったけど、確かに私の服ってボロい。
でも、無い物はしょうがないし。
シャーロット様も、他の生徒もみんな煌びやかだ。
髪飾りとか、流行りなのか、光沢があるリボンしてる子が多い。
私には到底買えないし。
はぁ⋯⋯⋯、制服があったらよかったのに。
なんで私服なんだっ。
私がクラスに入って、着席すると私の周りには誰も座らなかった。
みすぼらしい服を着ているせいか、ばい菌扱いされている。
どの授業に出ても話しかけてくれる人は皆無だし、話しかけても逃げられたり、無視される。
前にも思ったけど、普通の7歳児なら、不登校児になってる。
でも前世で思春期を1度経験してる私にとっては、ダメージが少ない。
どの世界でもイジメってあるのね。
ああ、イヤだ、イヤだ。
ただ、マナー講座以外の学業の方はかなり順調というか、天才級に成績が良かった。
それもそのはずだ。
前世の20年分の知識があるし、勉強の仕方も心得ている。
7歳児に負けるわけがない。
魔法初級講座は前世のゲーム知識レベルだ。火の魔法は水に弱いとかそんなもんだった。
それを面白く思わない子が多くいたが貴族のプライドがあるため、表立って嫌がらせはしてこない。
しかし陰湿なイジメをしてくる憎らしい男の子がいた。
その男の子の名前は、ルシウス・ド・ヴェルジーナ。
最悪なことに公爵家の次男坊だ。
ルシウスは、はっきり言えば普通の子だ。
見た目も、能力も、魔力も普通。
親の肩書きだけがすごい男である。
そんなルシウスが事あるごとに私をやっかみイジメてくる。
ノートに落書きしたり、ペンを隠したり、幼稚なイジメを。
そんなイジメに耐えていた私だったが、とうとう堪忍袋の緒が切れた。
ルシウスは私の腕輪を奪ったのである。
私は貴族とか女だとか全て忘れて、ルシウスに殴りかかった。
腕輪を取り戻すために。
7歳児ならまだ男の子に体力的に勝てる時である。
私はルシウスの頬を思っきり殴り、押し倒して馬乗りになった。
グーパンチである。
しかしルシウスもすぐに私の髪を掴み、振り回し、私を蹴り倒した。
そして思っきり私の腕を噛んだ。
思わず私は奇声を発してしまった。
「きゃー痛い!!!!」
そんな私の声を聞きつけた先生がすぐにやってきて、取り押さえられた。
でもなぜか私もルシウスも処分されなかった。
私だけ退学になるかもとヒヤヒヤしてたが、シャーロット様の助言のおかげでイジメが発覚しお
それに貴族の男性が女性の髪を掴み振り回すなんて言語道断らしい。
ので、この一件はなかったことになった。
「シャーロット様、先日はありがとうございました。本当に助かりました」
「・・・・・・ふぅ。あなたは、コルベーナ家の名誉に傷をつけるところでしたわ」
「申し訳ございませんっ。反省しています」
「でも、あなたがルシウス様を殴った時、わたくしも気分がスッキリしましたわ」
「あは、あはは⋯⋯」
私は乾いた笑をした。
「うふふふふ」
シャーロット様が私とルシウスの喧嘩を思い出し、笑いを
「あなた、成績も素晴らしくいいようね。悔しいけれど、わたくしはあなたを認めてあげる。お友達になりましょう」
「わぁ。ありがとうございます。シャーロット様。とても嬉しい。よろしくお願いします」
私とシャーロット様は、固く握手をした。
「そうそう、様はいらないわ。シャーロットとお呼びなさい。わたくしもアンナと呼ぶわ」
「はい。シャーロット」
「それとあなたの服装、酷すぎるわ」
「でも、私にはこれしかありませんし。また姉様からお古が送られてくるので、少しは良くなるかもしれません」
「わたくしの洋服を差し上げるわ」
「私は、姉様のお古も気に入っているんです」
「コルベーナ家には相応しくありませんわ。送られてきた洋服は孤児院に寄付なさい。慈善事業は貴族として責務ですことよ。さぁ、衣装部屋に行きましょう。好きな洋服を選ぶといいわ」
有無を言わさずに、シャーロットは私を手招きした。
この一件で、シャーロットとも仲良くなれ、学校のイジメもなくなり、このまま順風満帆の日々が続くと思っていた。
しかしコルベーナ侯爵邸で2年が過ぎた時だろうか・・・・またもや私に不幸が訪れる。
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