第139話 ランクアップ試験・1

No139

ランクアップ試験・1



 翌日は"餌付け亭" のベッドで目を覚ます。今日の予定はすでにセイジロウの中で決まっていた。


 いつもの通りに身支度を整えて宿の食堂に向かった。

「おはようございます、ロゼッタさん」

「おはようさんだよ。今日は、少し遅いね。依頼は受けないのかい?」

「はい、今日は装備を見にいきたいと思いまして」


「なんだい? 依頼で危ない目にあったのかい?」

「いえ、そうじゃないです。ただ、見るだけでも勉強になりますし、今後の事も考えて見ておきたいと思いまして」


「そうかい、命の危険があるんだからしっかりと勉強してきな! 朝食を持ってくるからテーブルに座って待ってな!」

 俺は空いてるテーブルへと座り今日の予定を考える。


 今日は武器屋と防具屋に行ってから、ギルドの訓練場で魔法の訓練だな。イメージに合う武器や防具があれば買ってもいいし....


 と、予定を考えてるとロゼッタさんが、テーブルに朝食を並べてくれた。

「はいよっ! 今日もしっかり食べて頑張ってきな!」

 と、いつものように声をかけてくれた。そんな掛け声に応える為にもしっかりと食べて今日も頑張るぞっと朝食を食べていった。


 朝食を食べ終わり身支度を整えて街中へと行こうと宿を出たときに、冒険者ギルド受付嬢のシンディさんにあった。

「あれ? シンディさん、どうしたんですか?」

「セイジロウさん、朝から申し訳ありません。実はギルドマスターがセイジロウさんの事をお呼びです。一緒に来てもらえますか?」

 シンディさんは、申し訳なさそうな顔で、そう言ってきた。


 俺、また何かやらかしたか? でも、特に思い当たる節はないんだけどな.....今、動いてるのは水着だし、火水祭だって大人しくしてし.....なんだろう?


「分かりました。急な用事は無いので冒険者ギルドに向かいますよ」

 と、俺とシンディさんは一緒に冒険者ギルドまで歩いていった。マダラには悪いが事が終わるまでは影の中に入ってもらった。


 俺は歩きながらシンディさんに呼ばれた理由を聞いてみた。

「それで、シンディさん。私がギルドマスターに呼ばれた理由は教えてもらえるのですか?」

「はい、わたしがギルドマスターに言われたのは、ランクアップ試験の内容が決まったからだと言われました。内容は、ギルドマスターから伝えられると思います」


 あぁ、ランクアップ試験があったな。あの空飛ぶ怪獣の件ね。俺は、別にランクが上がらなくても平気なんだけど、ギルドではそうもいかないんだよな....簡単な試験なら良いんだけど.....そんな分けないよな。


「そうですか、私としてはこのままでも平気なんですけど?」

「そうは行きませんよ。実力が分かっているのに適正なランクになっていなければ、冒険者の皆さんから抗議が来ますし、ギルドの査定能力が疑われてしまいます。まずは、受けていただけないといけません」


「まぁ、そうですよ。希望的な事を言ったので適当に流してください。私自信の能力はそれほど高くないですし、マダラのおかげですから」


「それも含めて冒険者の実力です。セイジロウさんは胸を張っていれば大丈夫ですよ」

「そうですね....とりあえず、私自身も強くなるように努力しますよ。まだ、やりたい事はありますからね」


 そうだ。俺のやりたい事をやるまでは死にたくない。その為には強くならなきゃな。


 そんな話をしながら、俺とシンディさんは冒険者ギルドに着き、ギルドマスターの執務室へと向かった。


△▽△▽△△▽△


 ギルドマスターの執務室でギルドマスターのサーシャさんと案内をしてくれた受付嬢のシンディさんの三人で話が始まった。

「では、詳しい話をするわ。先日の件でセイジロウはBランクアップ試験を受けてもらうと話をしたわね? それで、ようやく試験内容が決まったわ」


「はい、ここに来るまでにシンディさんから聞きました。内容はまだですけど.....やっぱりランクアップ試験は受けなきゃダメなんですか?」


「はっ? なに、セイジロウは受けたくないの? そんな事無いわよね? あれだけの事をしておいて、わたしに働かせて、しかもまだ鉄板焼きの方の準備もして、毎日は忙しく送ってる間にわ・た・し・が方々に連絡を取りわざわざあ・な・た・の為のランクアップ試験をするのよ?」


 あっ、アハハ....サーシャさんの目がヤバい。ここで断ります、なんて言ったら俺は殺されるかもしれない.....


「ギルドマスター、お話を進めましょう。セイジロウさんが困ってますよ?」

 と、シンディさんが助け舟を出してくれた。


 シンディさん、本当にありがとうっ! サーシャさん、そんな怖い顔したら皺が増えちゃい.....いえ、何も考えてませんよ? はい。何も考えてません。だから、そんなに睨まないで下さい。


「(ジーーー).....、そうね。話を進めるわよ」


 それから、ランクアップ試験の内容が説明された。


 試験内容は、この世界ではありふれたものだが俺にとっては非日常の内容で、改めてこの世界が前の世界ではないと強く感じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る