第95話 料理人マレルの誕生

No95

料理人マレルの誕生





 交渉の結果、マレルさんを手に入れ今は今夜の夕食会の鉄板焼きに向けて講習をしてる。俺とマダラが市場で手に入れた食材を使って、アンリエッタ邸の料理長とマレルさん、俺の三人が調理場を貸りてる。


「--んでな、ここ切れ目を入れていくわけだよっ!」

「「おおっ!」」

「では、こっちの魚は?」

 などと調理場に集まった三人が、あーだこーだ言いながら食材を弄くり回して、気がつけば陽も暮れ始めていた。俺とマレルさんは調理場を使わせてくれたお礼を料理長に伝えた。


「「料理長、ありがとうございました」」


「気にしなくていいよ! こっちも勉強になっからね! さっ、アンリエッタ様が裏庭で待ってるから行きなさい」


「マレルさん、裏庭に向かいましょう。さっそく覚えた調理法で肉料理を試しましょう!」

「おう! 忘れねぇうちに試そうぜっ!クゥーーっ! 腕が疼くぜぇ!!」


 俺とマレルさんはアンリエッタさんと執事のシバスさん、メイドのメイリーンさんが待つ裏庭へと向かうと、裏庭にはすでに鉄板焼きの調理設備が用意されていて揚げ物が出来るフライヤーもセットされていた。


「お待たせしました。では、改めて今夜の調理担当のセイジロウです。そして、こちらがスカウトしたマレルさんです」


「はっ、はじめましてっ! マレルですっ! お願いしますっ!!」

「初めまして、マレルさん。わたしはアンリエッタといいます。当屋敷の主です」


「初めまして、わたしはアンリエッタ様の執事、シバスです」

「初めまして、わたしはメイドのメイリーンです」


 みんなの自己紹介が終わり、早速調理にかかる。


「では、調理にかかりますか。マレルさんは魚介類と肉料理担当です。私は、天ぷらと揚げ物を担当します。先日の料理メニューからの抜粋になります」

 まず、マレルさんが魚介類を手早く調理していく。俺は、天ぷらをせっせと揚げていき、出来上がった物を冷めない内にみんなに提供していく。


「ん~~、このアスパとナースの天ぷらは美味しいわ。シバスは、どれが好み?」

「わたしは、マイター茸とスッパの葉が好みです。カモンを搾ってかけるのも良いですね。メイリーンはどうです?」


「わたしは、アスパのベーコン巻きと、キースの天ぷらですね。特にキースの天ぷらはサクッフワッの食感が良いですね。アンリエッタ様もどうですか?」


「あら、美味しそう! セイジロウさん、キースの天ぷらとマイター茸の天ぷらを下さい」

「はい、少々お待ちください」


 料理が始まり少しするとマダラから思念で料理の催促がきた。

『おい、セイジロウ! 我にも寄越さんかっ! この間みたいに味見程度の少量は許さんぞっ!』

『はいはい、ちゃんとマダラのも揚げてるよ。まずは、唐揚げを食べててくれよ。カモンは搾りかけてあるから』


 注文のあったキースの天ぷらにマイター茸の天ぷら、さらにナースにアスパを揚げていく。それと、シシトウシとカボンも揚げていった。



「こっちも出来たぜっ! まずは、エビの塩焼き、ハマグリンの酒蒸し、サザミの貝焼きとホタンのバター焼きだっ!」


 おおっ! 凄く旨そうだなっ! さっきから良い匂いがしてたんだよな。俺も食いたい! こっちが一段落したら作ってもらうかな....


「まぁ、どれも美味しそうね! いただけるかしら?」

「あいよっ! 熱いから気をつけてくれよ!」


「マレルさん、わたしはホタンのバター焼きとサザミの貝焼きをもらえますか?」

「あいよっ! サザミの貝焼きは、身をほじって取り出して食べてくれっ! 肝に苦味を感じるが好きなやつは好きだからな!試してみてくれよ!」


「マレルさん、わたしはハマグリンの酒蒸しとエビの塩焼きください!」

「あいよっ! ハマグリンは熱いから気をつけてくれよ! あと、貝に残った汁も旨いから試してくれっ!」


 マダラがマレルさんの作った料理を見て思念で料理の催促をしてくる。

『セイジロウ、ワレも魚介類を食べたいぞ! 頼むのじゃ!』

『あっ、俺も食べたいのに....多めに頼むから影に入れて保管してくれよ』


 俺はマレルさんにマダラと俺の分を多めに追加注文して頼んだ。みんなが俺達の作った料理を美味しそうに食べてくれる姿をみると自然と笑みが浮かんだ。


「このエビの塩焼きはプリプリして美味しいっ! メイリーンはどう?」

「はい、アンリエッタ様。とても美味しいです。 ハマグリンの酒蒸しも美味しいですよ。弾力ある歯応えに貝の旨味がたまりません」


「アンリエッタ様、ホタンのバター焼きも絶品です! ホタンの旨味とバターの甘味が合わさっていくらでも召し上がれます!」

「では、ハマグリンの酒蒸しとホタンのバター焼きをください!!」


「アンリエッタ様っ! セイジロウさんのカボンの天ぷらとシシトウシの天ぷらが美味しいですっ! わたし、これ好きですっ!」

「メイリーンっ?!あなた、食べ過ぎではないの?」

「大丈夫です! メイドは体力仕事ですから、明日からいつも以上に働けば問題ありませんからっ!」


 みんないつの間にか、あれもこれもと食べてるな!....俺もそっち側に行きたいよ....

で、俺の従魔はさっきから料理の催促しかしてないし....

『セイジロウ、魚焼きはまだか? それと、肉が無いぞ、肉が! はよ焼かんかっ!』

『分かってるって、てかお前は食い過ぎじゃね? 俺がせっせと揚げてる天ぷらがすぐに無くなるんだけど?』


『ふん、食べたもん勝ちじゃ! いつの世も弱肉強食じゃ!』

『...使い方間違ってないか? それ....』


 俺はマレルさんに魚焼きと肉焼きをするように伝えた。


「よしきたっ! お待ちかねのメインに移るぜっ! まずは、タインの香草焼きからだっ! このタインって魚は、めでたい時に食べる魚でな。縁起が良い魚だ!」


「そうなのですか?で は、この食会にピッタリですね!」

「おうよっ! アンリエッタ様の言う通りだ! しかも味も抜群だから楽しみに待っててくれよっ!」


 あれ、高かったんだよな.....俺の分は残るかな?.....残らないだろうなぁ.....はぁ....しょうがないか、またあとで買ってこよ。


「さぁ、焼けたぞ! アンリエッタ様に一匹丸ごとだ! シバスさんとメイリーンさんにも一匹ずつだ! さぁ、食ってくれ!」


 マレルさんはマダラ用に焼いてくれ魚を俺に渡した後は、肉料理の準備にかかった。


「ん~~!タインは美味しいぃ!身が引き締まっていて噛めば噛むほど、肉汁と魚の旨味が溢れてくる! とても美味しいです!」

「まさかこれほどとは....マレルさん、感服しました!」

「わたしもです! とても美味しいです!!」


「へへ、よせやいっ! 食材にあった調理をすれば誰でもできらぁな! んじゃ、最後は肉料理だ! まだ、修行が足りねぇがセイジロウ直伝だ! 見ててくれよっ!」


 マレルさんは、分厚いステーキ肉を鉄板に乗せると、


 ジユワアァァァァンっ!


 と、音と匂いが裏庭に広がった。鉄板焼きのステーキ肉の両面に焼き色をつけていく。そしてしばらく、マレルさんはステーキ肉と見つめ合い.....酒精の強い酒を振りかけると、



 ボワアァァァァァっ!


 炎が立ち上がったっ!....酒のアルコールが瞬時に飛び、炎が収まったら赤ワインを適量振りかけ鉄蓋を被せた。しばらくして赤ワインの蒸し焼きが完成した。


「待たせたな! バルファビーフの赤ワイン焼きだ! さぁ、食ってくれ!」


 マレルさんは分厚いステーキ肉のバルファビーフを手早く切り、アンリエッタさん、シバスさん、メイリーンさんに提供して余った肉をマダラに分けてくれた。


「美味しいっ! 溢れる肉汁と芳醇な赤ワインの味が混ざりあってて美味しいです!」

「ほぅ....素晴らしい! 一流の店にも負けない味です!」

「本当ですね! 美味しいです!」


 三人の言葉と笑顔がとても眩しいっ! 自分が作った料理を笑顔で食べてくれるのはとても嬉しい。


「マレルさん、やりましたね! みんなが美味しいって言ってますよ! あの笑顔が何よりの証拠ですよ!」


「ああ! やっと....やっとお客に喜んでもらえたよ! ただ肉を捌いて塩と胡椒を振りかけ焼いただけじゃダメだったんだな....肉にもそれぞれにあった調理の仕方があったんだ! ありがとう、セイジロウっ! これからもよろしく頼むっ!」 


「はい、こちらからもよろしくお願いします、マレルさん」


 この後も余った食材を焼き、食べきれない料理はマダラにあげ、さらに、マダラの影に保管してもらった。


 こうしてマレルさんのお披露目会は無事に終わった。

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