第85話 新作甘味はパンケーキ

No85

新作甘味はパンケーキ





 アンリエッタ邸の裏庭で行われた、"鉄板焼き"のデモンストレーションの最後のデザートを残して終わりを迎えようとしていた。


「皆さん、ここまでどうでしたか? ちょっと駆け足て来ちゃったんですけど...楽しめました?」


「楽しんだどころじゃないわよっ!! あなた、やり過ぎよっ!」

「セイジロウさんっ! 全部美味しかったよぉー! ありがとうっ!!」

 と、ギルドマスターのサーシャさんとアンリエッタさんからは叱責とお礼をもらう。


「セイジロウさんは、何者ですか?....まるで神様のようでしたよ....」

 受付嬢のシンディさんからは神様呼ばわりをされた。


「セイジロウ様、このような贅沢な料理を食べさせてもらい恐悦至極でございます」

「私もシバスと同じ思いです。セイジロウ様、ありがとうございます」

 シバスさんとメイリーンさんからは最上の賛辞をいただいた。


 いやぁ、喜んでもらえてよかったよ! 一人だけプリプリと怒ってるけど.....


 俺は、マダラに思念を飛ばし感想を聞いてみた。

『マダラはどうだった? 旨かった?』

『旨かったぞ。じゃがっ! 足りんぞセイジロウっ! 全然足りんぞっ!』


『だよねぇ....アハハハ...マダラまで気が回らなかったよ...ごめんよ。明日の昼間にアンリエッタさんに頼んで作ってもらうように言ってみるから、ここは影の中の料理で勘弁してよ?』


『グルルゥ.....明日は絶対じゃからな! フライドポテトもつけるんじゃぞ!』

『うん、マダラありがとう』


 しかし、疲れたなぁ......あとはデザートとか......プリンだけで良いかな?

 あっ...アンリエッタさんだけ新作を出す約束だっけ.....はぁ.....しゃーない。作るか...


「では皆さん、食後のデザートを用意しましょう.....こちらがプリンになります。アンリエッタさんには"パンケーキ" を作りましょう」

 アンリエッタさん以外には、マダラの影から出してもらったプリンを配る。そして、アンリエッタさんには新作のパンケーキを作り始める。


 ふんわりとはいかないから、何枚か重ねて......あとは、バターとハチミツをかけてっと。はい、完成!


「はい、アンリエッタさん。約束の新作ですよ。ついでにプリンもつけちゃますね!」


 やっと終わったぁーー! マジで疲れたよぉ!


「ちょっと、アンリエッタだけズルいわよっ! わたしにも作りなさいよ!」

 予想通り、サーシャさんが文句を言ってきた。


「サーシャさん、猫の皮が剥がれてますよー。アンリエッタさんには、この場所を提供してくれたお礼ですから」


「なっ!....ふん....今回はプリンだけで我慢するわ」

「ちなみに、プリンはハルジオンのギルドが優先販売権を持ってますから、ルインマスでは売れませんからね」


「なんっ! なっ!....なんでよぉー!!」

 だから、猫の皮が破れてるって....


「マスター、落ち着きましょう。皆さんの前ですよ。それと、プリンは売れませんけどアンリエッタ様が召し上がってる新作の甘味は販売できるのでは?」

 さすがは敏腕受付嬢。新作って言ったからね。


「シンディさん、正解です。アンリエッタさんがニコニコしながら食べてるパンケーキは、販売出来ますよ」


「そっ...そぅ...最初からそう言いなさいよね! まったく.....もう....」

 プリプリ怒ったり、ニコニコしたり忙しいサーシャさんだな。ちょっと面白いな。


「さらに、パンケーキとプリンを合わせた"パンケーキプリン" も販売可能ですよ」


「ハアァァァァァーーーー!!....あなた、さっき売れないって言ったじゃないのよ、プリンはっ!!」


「プリンとハチミツプリンは売れません。ハルジオンの冒険者ギルドとの契約ですから....ですが"パンケーキプリン" は別の甘味料理です。なので、区別して売れるのですよ」

 クククっ! サーシャさんて本当に猫みたいだなっ。実際はエルフィン種だけどね。


「ホホ、セイジロウ様は口が達者でございますね」

「まぁ、言っちゃえば屁理屈ですね。でも、料理名が"パンケーキプリン" ですからしょうがないでよね?」

「セイジロウ様は、子供が大人になった感じにですね」

 シバスさんとメイリーンさんがそんな事を言ってくる。


「ホントよ!! あんたそんな事ばかりしてると後ろから刺されるわよっ?」

「大丈夫ですよ、私には守護者が付いてますから。今はちょっとご機嫌ナナメですけど....」


 明日には機嫌直してくれるよな、マダラ?


「ん~~、美味しかったよぉ!パンケーキとプリン!! セイジロウさんに、感謝だねっ! みんなも感謝ですよ。特にサッちゃん。あんなに美味しい料理を、たくさん食べたんだから」

 もっと言ってあげてアンリエッタさん。さっきからプリプリニコニコと忙しいんですよ。


「.....分かってるわよ....ありがとう、セイジロウ」

 サーシャさんが、デレたっ?!


「ふふ、素直でよろしい。セイジロウさん、お疲れでしょう。今夜は客室をご用意しますから泊まっていってください。せめてものお礼です」


「良いのですか? 甘えちゃいますよ?」

「えぇ、どうぞ甘えてください。食事も部屋に運ばせますから、マダラちゃんの分もありますからねぇ!.....シバス、手配をお願い。メイリーンは客室に案内してあげて。....サッちゃんとシンディは今後について少し話をしましょう」


 と、アンリエッタさんが場を締めてくれた。正直、"餌付け亭" に帰るのはちょっとしんどかったんだよな....


 飯を食べたらゆっくり寝たいよ.....


△▽▽△▽▽△▽▽△▽


 翌朝目覚めると、

「知ならない天井だ......うん、言ってみただけだ....」

『何を朝からボケてるのだ、セイジロウ』

「マダラか....あれからあまりよく覚えて無いんだよね....所々は記憶あるけど...」


『セイジロウは、あのデモンストレーションが終わった後に、ふにゃりと倒れたんじゃ』

「えっ?...マジか...じゃあ、誰かが運んでくれたのか?」


『ワレに決まってるではないか、ワレはセイジロウの守護者じゃぞ』

「そうか....ありがとう、マダラ」

 と、簡単な朝の挨拶とお礼をマダラに伝えた時に部屋の扉にノック音がした。


 コンコンコンっ!


「セイジロウさま、起きてますか?」

 その声は、メイリーンさんか?


「はい、起きてます。どうぞ」

 扉を開けて部屋に入ってきたのはやはりメイドのメイリーンさんだった。


「おはようございます。昨夜はよく寝れましたか?」

「えぇ、よく寝れた...と思います。気づいたら朝でしたから」


「そうですか、よく寝れたのなら良かったです。ずいぶんと疲れていた様子ですから....マダラも心配そうにセイジロウさんを運んでましたよ」


「ハハ...面目ありません。少し張りきり過ぎたようです。マダラに話を少し聞きました。マダラには、さっきお礼を言っときましたから」


「セイジロウさんが倒れた時は、皆さんが心配しました。ご自愛なさって下さい....朝食はどうしますか? こちらにお持ちしますか?」

「いえ、アンリエッタさんと......サーシャさん達はいるのですか?」


「サーシャ様達は、昨夜お帰りになっています。お泊まりになったのはセイジロウ様だけです」

「そうですか....では、朝食はアンリエッタさんと一緒に食べます」


「分かりました、準備に暫しお時間を頂きますので、お待ちください」

 と、メイリーンさんは退室していった。


 それからマダラと話しつつ部屋でゴロゴロしてると、メイリーンさんから声がかかり朝食が用意されてる部屋へと案内された。

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