第58話 シーバル遺跡調査・4

No58

シーバル遺跡調査・4





 夕食時にマダラが賊を見つけたと聞き、ガーディルメンバーに話を持っていった。


「そりゃ、本当か!? セイジロウっ!」

「えぇ、マダラが狩りの時に言ってました。ただ、マダラには人を傷つけてはいけないと指示を出していたので放置したそうで...」


 ちなみに遺跡調査隊と護衛依頼を受けた冒険者達には、俺がマダラと意志疎通の思念、念話が出来る事は伝えてある。ので、俺が嘘の情報を流してない事や、以前冒険者ギルド内でマダラが他の冒険者達に思念を飛ばした騒ぎも聞いた連中もいて、話はすんなり信じてくれた。


「セイジロウ、規模と場所は分かったりするか?」

「えぇ、ちょっと待ってください。......マダラ、その賊がいる場所と人数は分かるか?」

 俺は、レグリットが言った質問を寝転がるマダラに話す。


『ここから、東南に向かって数時間の場所じゃ。ワレが見た時は男が三人じゃったが多分まだいるじゃろうな』

 マダラの答えをそのままレグリット達に伝えた。


「おい、周辺の地図があっただろ? ちょっと持ってきてくれ............さてと」

 冒険者の一人が地図を持ってきて、近くにある岩の上に地図を広げて場所を探す。地図と言っても精密な地図ではなく、簡易的な地図で描かれた物だ。


「この辺りじゃないか....近くの街道で獲物を襲ってるんだろ....多分、この辺だな。この依頼を受ける前に商人の一団が襲われたと耳にした記憶がある」

 一人の冒険者が地図を見て予測した場所を指差して言った。


「ああ、あれか....なんでも命からがら助かったが殆どの荷持は奪われたらしいな。護衛を雇っていたが数人の犠牲を出したとか....」

 何か心当たりがあるような発現を話を聞いていた冒険者が言った。


「ソイツらの可能性が高いな....人数も十人....もしくはそれ以上か...それなりの武装に腕もあるだろうな....」


「調べるか? 今なら夜だから、偵察は出来るぞ?」


「ちょい待てよっ! 俺らは遺跡の調査依頼中だぜ?これは依頼外だろ、報酬もないし相手は武装した賊だ。下手をしたくねぇな!」


「へっ!ビビッてんのか? 賊を倒したら冒険者ギルドで討伐報酬は出るぜ!それに、貯めた金や資材は倒したヤツの物だ。ヘタレに用はねぇよ!」


「っんだとコラッ!! 欲に眩んだボケがっ! リスクがわからねぇんから、危険だといってんだよ!」


「誰がボケだっ!」「てめぇだよっ!」


「やめんかっ!! 今は話し合いだ、それが出来ないなら向こうで寝てろっ!!」

 レグリットさんの声が夜空の下に響いた。周囲で話し合いをしていた錬金術ギルドの人が驚きこちらに視線を向けてくる。


「あー、すいません。ちょっと白熱しちゃいました。何でもないですから.....すいませんね。なるべく静かにします」

 と、驚いた人達に頭を下げて謝っておいた。


「セイジロウ、悪いな....オラァ、お前らも頭を下げておけ....まだ何も決まってないんだ。話を続けるぞ」

 レグリットさんに注意された冒険者達は渋々頭を下げたりそっぽを向いたりして口をつぐんだ。

 そして、話が元に戻り再開される。

「....それで、どうするのよレグリット? 実際に賊を確認して処理するのか、冒険者ギルドに通達するか決めなきゃよ?」


「あぁ、分かってる。.....セイジロウ、ちょっとギルバートさんのところまで一緒に来てもらえるか? 詳しい話と今後についての話をしたい.....他の連中は少し待機していてくれ」


 はぁ...仕方ないか、見つけたのがマダラで従魔の主が俺だからな....


「分かりました、マダラも一緒に来てくれよ?」

 俺とマダラ、レグリットさんでギルバートさんがいるところに向かった。


▽△▽△△△△


「--話は分かりました。ですが、報酬は出せても小金貨ニ枚ですね。それと、賊が貯めている物資や金については討伐した人達で好きにしてもらっていいですよ。もしくは、冒険者ギルドに通達してそちらで動いてもらうかです。通達する人には別途銀貨一枚を追加報酬に出しますが、連絡員はニ人までです」


「どうしますかレグリットさん?」

「ふむ......セイジロウのマダラに偵察を頼めるか? 詳しい位置と戦力が把握出来れば、討伐するし思ってる戦力以上なら冒険者ギルドに通達してそちらに任せようと思う」


「マダラに聞いてみます。.....マダラ、話は聞いてたろ? やってくれるか?」


『すでに把握しておるわ、犬狼を放して監視してるぞ。一応、脅威対象だからのぅ.....人数は男八人、剣に斧、弓の武装を確認した。あと、女が一人捕まっておるな。すでに、剥かれておるぞ』


 マダラにしちゃずいぶんと.....なに? 人質がいるのか....それに、剥かれてるって....

俺は思念でマダラと話す。


『マダラ、その剥かれてるってのは...』

『想像通りじゃ、男集団に女が捕まれば行為に走るじゃろ? すでに、慰みものじゃよ』


『そんな.....クソッ....どんな状況なんだ?暴力を受けてるのか? 怪我の有無は分かるのか?』

 俺はその話を聞いて気が高ぶっていく。男が無理矢理女性をいたぶる行為に虫酸が走る。


『ちと、待てセイジロウ.........多少の擦り傷や殴打痕はあるがそれぐらいじゃな、あとは少し衰弱はしておるがまだ命は持つじゃろ』


「....ジロウ.....セイジロウ! 大丈夫か!?」

 と、体を揺すられて俺は我に返った。


「..えっ!...あっ、はい。大丈夫です。マダラと情報のやり取りをしていて.....すでにマダラが能力を使って賊の監視をしていました。詳細を話しますが、女性が一人捕らわれているそうです」


 その言葉を聞いてレグリットさんとギルバートさんは顔に驚きを表しマダラから聞いた情報をニ人に伝えた。


「.....ギルバートさん、俺は討伐を推奨する。討伐に関しての責任は俺が取るが判断はギルバートに任せる。別に、押し付ける訳じゃないが今の依頼主がギルバートさん達にあるから、独断では依頼違反になる」


「......仮に討伐の許可を出したとして、賊の討伐は可能ですか? 被害はどのくらいで人数の分配や掛かる時間は? 気持ちは分かりますが、わたしの優先順位はシーバル遺跡の調査です」

「....それは...こちらに支障が無いように配慮するが....」


 俺はギルバートさんとレグリットさんの話に割り込んだ。

「...マダラと私が参加すれば問題ないですよ。なぁマダラ?」

『ワレだけ十分じゃ、何なら今すぐにでも殲滅か可能じゃが?』


「「えっ?」」

「今のはマダラの声ですよ。私が指示してニ人に思念を飛ばしてもらいました....ギルバートさんは何で驚くんですか? 以前、話したでしょ?」


「あっ? そうでした...ハハハ...突然でビックリしたゃいましたよ」

「これがマダラの....セイジロウはこれでマダラと意志疎通をおこなってるのか?」


「はい、他の従魔は知りませんがマダラとは思念が繋がるんですよ....それで、マダラはこう言ってますが?.....ヤりますか?」


「...いいでしょう。討伐を許可します。責任はレグリットさんに....報酬は先程話した通りでいいですか?」

「ああ!任せてくれっ!.....セイジロウ、戻って話をするぞ!」 



 俺とレグリットさんは他の冒険者が待つ場所に戻った。

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