第22話 限定販売

Mo22

限定販売





 引っ越しの翌日、いつも通りにギルドの食事処でプリンの仕込みをして販売はギルドの職員さんにお願いした。それから、ギルドの受付に向かい、受付嬢のアリーナさんにいつもの魔力補充をした魔石と空魔石を交換して、依頼を受ける。


「あっ、アリーナさん。今日から新作のメニューを売りに出します。ギルド職員限定販売になりますから、良かったら買いに来て下さいね。ちなみに、今日は十名ですから」


「そうなんですかっ?! なるべく、早く行きますっ!!」

 と、すぐに自分の仕事に取りかかった。隣にいた受付嬢は、話を聞いていたのかすぐにどこかへ行ってしまった。


 これで、宣伝プラス売上アップ確実だな.....


 しばらく、ギルド職員と一緒にプリン販売をしてると、

「セイジロウさん、新作を販売するって聞いたわよ?」

「あっ、アンナさん。耳が早いですね。つい数時間前ですよ、それを話したの...」

「もうすでに知れわたってるわよ...で、早速食べに来たわよ、新作メニューをね」


「分かりました、すぐに作りますよ。掛けて待っていて下さいね」


 すぐに下準備をして、フレンチトーストを焼き始める。焼き始めると、バターの香りと甘い香りがギルド内に広がる。


「良い匂いがするわね。コレじゃ仕事に集中しようにも出来ないわね....」

「そうですか? 逆に食べたら元気が出てさらに働く気になりませんかね?」

「どうかしら、女性にとってこの匂いは反則よ....見なさい、そっちの職員を」


 俺は、アンナさんが目線で示した方を見るとお腹を空かせた子犬のような目をした、女性ギルド職員の2人が物欲しそうにこっちを見ていた。


「......たしかに、ハハハ.....と、出来ましたよ。一緒にアイスティーか紅茶はいかがですか?」

「えぇ、紅茶をいただくわ」

 と、紅茶の準備をしながらフレンチトーストを食べるアンナさんをチラ見する。


 アンナさんは一口フレンチトーストを食べると、最初は驚きの顔をしたがすぐに顔に笑みを浮かべながら、少しずつ大事そうに食べていた。


「紅茶、お待たせしました」

「凄く美味しいわよ....何てメニューなの?」

「フレンチトーストですね。まだ、作り手がいないので多くは販売出来ないんですよ」

「そうなの....なぜ、ギルド職員限定なのかしら?」

「試し売りと感謝ですかね? アリーナさんやフローラさんには色々と便宜を計ってもらいましたからね」


「そぅ? それだけなのかしら?」

「疑り深いですね。あまり疑り過ぎると皺が増えますよ?」


(クスッ)と、プリン販売の女性職員が笑った。

 が、アンナさんの睨みで顔を青くしていた。


「なかなかに言うわね、あなた....まだ、二回しか会ってないのだけれど?」

「アンナさんは親しみやすい方ですからね、つい冗談が出てしまいました。綺麗な女性に皺は似合いませんから、疑わないでくれると助かります」

「良く回る口ね....プリンとハチミツプリンをお土産にしてくれたら忘れるわよ」

「はい、帰りに渡しますよ。ついでに、あの2人も許してくださいね」


「.....いいわ........」

 アンナさんの事を笑った女性職員は、凄い勢いでお辞儀をしていた。


 アンナさんは、フレンチトーストを食べ終わり代金を支払ったらお土産のプリンを持って仕事に戻った。

 ちなみに、フレンチトーストは大銅貨1枚だ。


 その後は、短時間でフレンチトーストが完売になり夕方の依頼までギルドの鍛練場で魔法の練習をした。


 陽も暮れはじめた頃にギルドの食事処に行きビルマさんとリーナさん、エリナさんと一緒に、冒険者達相手に給仕をした。


▽△△▽△▽


 客が数名になると、四人で今日の昼間の話になった。

「セイジロウ、昼間の新作は手応えあったか?」

「えぇ、ありましたね。でも、作れるのが俺だけなんでまだ多くは売れませんよ?」

「セイジロウさん、甘味の新作って何ですかっ?」

「なんですかっ!?」

 と、リーナさんとエリナさんも食いついた。


「数量限定でギルド職員にしか売っていない、フレンチトーストですよ。.....明日、作りましょうか?」

「本当ですかっ! 食べたいです!」

「ワタシもー!!」

「分かりました。では、明日仕事が終わったら作りましょうか.....ビルドさんは、食べます?」

「当然だっ!!」


 と、約束してから仕事を切り上げて新しい自宅に帰ってきた。お土産にビルドさんに賄いを作ってもらった。


「さて、チャチャっと体を拭いたら魔石に魔力を補充するか....」


 練習の成果もあり魔法の熟練度も上がった。


 火と水の魔法でお湯が出せるようになったのだ。最初は別々にしてやってたけど、今では片手間で出来るようになり、温度調節もある程度は出来る。


 お茶のお湯もこの魔法だ。ちなみに、部屋の中の明かりはカンテラじゃなくて、光魔法だ。


 体も拭き終わり魔石の魔力補充だ。


「魔力も増えて魔力補充の魔石の数も増やしても良い頃だな。前は、数個で空になった魔力が今では十個以上補充しても辛くないしな....アリーナさんに数を増やしてもらうか」


 小一時間程魔力補充をして読み書きの為に写本の続きをしてから就寝した。


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