第124話 おひるね(葉奈)
五時間目の開始は13時10分から。
今日は日本史の授業が組まれてある。
「それでは、前回の復習からやりましょう」
日本史の担当はストイックなお母さんみたいな先生。
それでいて、どこか優しそうな雰囲気も持ち合わせている。
不思議だ。
「さっそくだけど、この時代の年号は何になりますか? ――朔良さん」
「……」
朔良は当てられたことに気づかず、すやすやと眠っていた。
こういう調子は、一年生の時から変わっていない。
かく言う葉奈も、もうまぶたが限界だった。
「おや? お休み中ですか? 起きてくださーい?」
先生は朔良のもとへ、キビキビとした速度で歩み寄って。
「朔良さーん」
と、一声かけた。
「……んぅ……むにゃむにゃ……」
しかし、朔良はまだ目を覚まさない。
すると先生は、ある行動をとった。
「起きてくださいねー」
朔良のうなじを指示棒で軽くチョン、チョンと叩く。
「ひゃっ、ひゃい!?」
朔良はびくんっと反応し、パチッと目を覚ました。
上手くいったみたいだ。
まあ、そういう感じの声だったから少しドキッとしてしまったのは秘密だ。
「おはよう、朔良さん」
「……あっ、あたし、いつの間にか寝ちゃってたのか……」
垂れたよだれを制服の袖で慌てて拭き取っている。
なんだか幼い子どもみたいで、葉奈は少し笑ってしまった。
また違った朔良の一面を見られて、得をした気分になっている。
「寝たら授業に追いつけなくなりますからね? みなさんも気をつけるように」
先生がそう言うと、クラスメイトたちは素直に「は〜い……」と返事をする。
すでにみんな眠そうだ。
そうして、今日の日本史の授業は終了した。
葉奈は朔良の一面を忘れないよう、ノートに今日の出来事をメモしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます