第二章 高校二年生(一学期)

第121話 みらいのはなし(朔良)

「さーくにゃーん!」

「うわっ! あぶねーぞ、瑠衣」

「えへへ、ごめんにゃあ」


 朔良と瑠衣は、ベッドの上でイチャイチャしていた。

 朝からこうして愛を確かめられるのは、婦婦だけの特権だろう。

 だから二人は、精一杯この時間を堪能するのだった。


「さーくーにゃーんー」

「うぐ……くるし……お前、夜も締め付けてくるよな」

「だってさくにゃんのことが大好きだからにゃ!」

「……ふーん、そっか」


 そんなような言葉を交わしながら、今日もまた一日がスタートするのだった。


 ☆ ☆ ☆


「……なんて夢を見てんだ、あたしは……」


 目覚めた第一声がそれだった。

 瑠衣にはなんの感情も抱いていないはず。

 それなのに、どうしてこんな夢を見てしまったのやら。


「多分あれだな……」


 瑠衣が自分に好意を向けてくれていることを確信したから。

 それが友情か恋愛かはわからないけど、自分のことを特別に想ってくれているのは事実だろう。

 朔良はそのことを色々考えすぎてこうなったのだと、自分に言い聞かせる。


「あたしが特別に想ってるわけじゃなくて、あいつが勝手に想ってるだけだし……」

「朔良? いつまでぶつぶつ言ってんの? 早く起きないと、今日から学校でしょ?」

「え、あ、わかってるって! てか、勝手に部屋覗くなよ!」


 母親に話しかけられ、朔良は考えることを後回しにした。


「とにかく今は早く学校行かなきゃな……!」

「その意気だー!」

「って、まだいたのかよ!?」


 完全に不意をつかれ、朔良は出鼻をくじかれたような心境になる。

 まあ何はともあれ、まずは学校だ。

 久しぶりに美久里や萌花、紫乃に葉奈……それに、瑠衣とも会える。

 リアルの、本物のみんなに会えて話せるなら、夢の出来事なんて些細なことだ。……と、思う。


「じゃ、行ってきまーす」


 朔良はそう言って、元気よく家を出た。

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