第42話 がくえんさい(紫乃)

 高校に入ってから初めての学園祭が始まる。

 紫乃たちのクラスでは、模擬店をやることになった。

 みんなで描いたイラストが、壁一面に貼られている。


「やっぱり紫乃ちゃんが描いたイラストが目立つね」

「プロ並みっすもんね……さすがっす!」

「でも……よく描いてくれましたね。あんなに見られるの嫌がってたのに……」


 その中のイラストを見て、美久里たちは感激しながら言う。

 そのイラストは、他のどんなイラストよりも抜きん出ていた。

 ……と、紫乃は自分でもそう思った。

 力を入れすぎたかもしれない。


「いや〜……みんなが描くなら僕も描いてみたいな〜と思って……」


 さらに言うと、紫乃はイラストを見られるのが嫌なわけではない。

 描いている工程を見られるのが嫌なだけだ。


 紫乃が描いたイラストは、『魔法少女になれたなら』の主人公である結衣が描かれている。

 その結衣がメイド服を着ながら、笑顔で「いらっしゃいませ」と言っている。

 すごく生き生きとしていて、今にも紙から飛び出してきそうだ。


「やっぱ紫乃ちゃんの絵はオーラが違うっすよね。さっきも言ったっすけど、プロ並みっす」

「別のジャンルでプロのお前が何言ってんだよ」

「いや、そりゃそうなんすけど」

「……否定はしないんですね……」


 葉奈が放った言葉に、萌花は呆れた様子で苦笑する。

 朔良と葉奈はまだ何か言い合っていて、美久里はずっと紫乃のイラストから目を離さず魅入っている。


 そんな時間を過ごしながら、学園祭のスタートを待つ。

 学園祭のスタートは九時。今は八時半。

 どんな学園祭になるのか、紫乃にはわからない。


 だけど、そんな未知のことに……不思議と胸が高鳴った。

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