第15話 しまい(美久里)

「た、ただいま……」

「おー、おかえり。おねえ」


 美久里が帰宅すると、すぐさま妹が出迎えてくれた。

 妹も帰ってきたばかりのようで、家なのにセーラー服を纏っている。


「あれ……今日は部活ないの?」

「そうだよー。って言ってもまだ仮入部だからそこにするとは決めてないけどね」


 美久里がそう問うと、セーラー服を脱ぎながら肯定する。

 スカートが床に落ちると、体操服のズボンが顔を出し、一気に女子中学生感が抜ける。

 美久里と妹は年が三歳離れており、妹も中学に入ったばかりだ。


「おねえは部活何にするか決めたの?」

「へっ!? え……あー……その、まだだけど……」

「おねえってほんと優柔不断だよね〜」

「う、うるさいな……」


 中学と違って、高校の部活はバリエーション豊富だ。

 それに部活だけでなく、同好会というものもあり、本当に決めるのが難しい。

 しかも、タピ女では一年生の間は部活に入ることが絶対のようで、『帰宅部』という選択肢はない。


「ううう……どうしよう……」


 美久里はカバンを置き、ため息をつく。

 そして、部屋着に着替えるため、制服に手をかける。

 そんな姉を見て、妹はからかうように笑う。


「おねえはアニメとか好きだしそういう部活に行けば? 高校なんだからあるでしょ」

「ふぇっ!? そ、そんなのあるの……?」

「え、なんで知らないの?」


 妹の冷ややかなツッコミを無視し、美久里はタピ女の部活動一覧を取り出す。

 その中には妹の言う通り、『マンガ・アニメ研究会』というものがある。


(ほ、ほんとにあるんだ……)


 そういうのはマンガやアニメだけのものだと思っていた。

 美久里は自分が下着姿なのも忘れ、嬉しさで身体を踊らせる。

 突然踊り出した姉に、妹は頭のおかしな人を見るような目を向ける。


「大丈夫!? おねえ病院行ってきた方がいいんじゃない!?」


 心配しているのか馬鹿にしているのかよくわからないが、姉の奇行を止めるべく妹が近づく。

 そんな妹の言葉も手もかわし、姉は踊ることをやめない。

 個性的な女子高生は、家でも個性を爆発させていたのだった……

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