第2話 第1章 新しい仲間

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 鼓膜が破れそうなくらい大声で鳴くアブラ蝉の合唱。

 オレンジ色のままなかなか家に帰ろうとしない西陽。

 透明なコバルト色の夏の夜空の輝く、ベガ、アルタイル、デネブを結ぶ三角形。

 ……どれも忘れることのできない夏の1シーンだが、きょうで金太の中学校生活最後の夏休みが終わった。

 これまでだったら、始業式の前の晩はベッドに入ってもなかなか寝つくことができず、いっそのこと死んでしまったほうがましだ、などと朝が来るのを拒んだものだった。

 それは、夏休み中に宿題を半分もやってなかったことと、工作も胸を張って持って行けるものがひとつもなかったことが主なる原因だった。

 だが、いまは違っている。これまでジンマシンが出るほど嫌いだった勉強も、不思議にも友が淵公園の池で出会った河合老人のアドバイスで克服することができた。

 この河合老人というのは、勉強から逃げ出した金太はいつも友が淵公園のなかにある池で釣り竿を垂れている。あるときその老人に声をかけられて親しくなり、そのうちに頻繁に老人の家に遊びに行くようになった。

 老人は金太の元気のない顔を見て可哀そうになり、相談に乗ってやることにした。そのときの金太の悩みというのは、いくら勉強が苦手といっても、高校受験の足音が聞えてきはじめると、周囲からおいてけぼりを喰らっているように思えるのだった。だが、そのときすでに金太がみんなより一歩出遅れているのは事実だった。

 勉強に対して拒絶し続けていた金太は、ここに来て真剣に悩んでいたのだ。そこに手を差し伸べたのが河合老人だった。金太は素直に老人のいうとおりスケジュールを立てて毎日こつこつとやった結果こうして出口の見えない黒いゴム風船から逃げ出すことができたのだ。

 金太はベッドに入ったまま、勉強机の上に置いてある合掌造りの模型に何度も目を向ける。五日間かけてこしらえた工作の宿題である。早くクラスのみんなに自慢したかった。

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