547話 少し懐かしいようなあいつ
適度に死霊を片付け、ちょいちょい叫ぶちんちくりんの声を聞きつつマップの奥深くへ。本当にマップとしては地上のエリアと変わりない。雰囲気だけやけに暗く重くしているってだけでこんなにも代り映えのないもんかな。
「目的もなく進んでる感じするけどぉ、なんかあるのぉ?」
「適当に暴れられるならいいかなーって思ったんだけど、あまりにもなんもないな」
「地下も地上と同じくらい広いらしいんで、地下専門の人もいるとか……」
「もの好きな奴もいるもんだ」
マップが広いとは言え、ぽつぽつと出会うプレイヤーがそういう事をやっているかって言われるとまあ微妙な所。真四角な世界で、敢えて地獄だけでやりくりするって変な縛りプレイをする人もいるし、そういうタイプだって思えば納得はする。降りてきた最初の方は正直打撃武器でも1本あったらどうにかなりそうなくらいには余裕な相手だから、下手に突っ込んで危ない事をしなかったら何とでもなりそう。
「それにしたってちんちくりんがびっくりするのしか今の所楽しめてないわ」
「連れてきたってのにその言い草ぁ!」
「ちょっとしたピクニックであたしは楽しいけどねぇー」
常にあちこち湧いてくる訳もなく、まばらにぽつぽつ。流石に高レベル3人がいるとそれなりな相手では何ともないので面白みは全く持ってない。本当にびびり散らかしているちんちくりんを眺めながらだらだらした行程。
「まー、もうちょっと手ごたえのある奴がいないと面白くはないけどなあ……?」
ロリポップを転がしつつ暢気に新調したウサ銃を回転させたりなんだり軽く遊びながらずんずんと奥地へと。まあ、奥地って言ってもエルスタンから次の街くらいまでの距離なので、エリア的には3個くらいか。周りの雑魚を蹴散らし、一休憩って所で何かがこっちに動いてきているのを確認する。
「ちなみに、此処にはボスって?」
「徘徊系らしいですよ、僕は見たことないですが」
「へー……どんな感じに強いのかなぁ」
こっちに向かってくるのは……まあ、十中八九ボスだろうな。明らかにでかいゾンビって言うかフランケンシュタインみたいなのがどしどしこっちに向かってくるんだから、ただの雑魚ではなかろう。
「昔ながらだよなあ、のんびりしてたらボスモンスターがやってきて引き殺されるって、気が付いたらみんな寝てるの」
「アカメさん、結構歳食ってるんじゃ……」
「ゲーマーと言いなさい、ゲーマーと。前はチェルとマイカ、後ろは私」
「ああいうタイプなのは平気ですね」
「すぐに戦闘態勢に入れるアカメちゃん、切り替え良すぎぃ?」
なんだかんだで毎度おなじみの陣形になって、近づいてくる大ゾンビ。最近のゾンビものによくある、特殊能力を持っている機敏な奴かな。これで太っていたらゲロみたいな攻撃をしてきて苦戦するもんだけど。
「流石に真正面からのパワータイプには負けないですよ!」
しっかり接敵から、思い切り振りかぶっての超大振りなダブルスレッジハンマー。上からの攻撃をチェルがお馴染みの大盾を構えて一発受ける。ずんっと音を立てて少しばかり地面にめり込みながらもしっかりと受けきれるようになったのは、あのころとは違うなあ。
「これでまた小さくなったな」
「ふざけてないで攻撃してくださいよ!」
「あんまり怒ると、血圧上がっちゃうよぉー?」
2撃目のダブルスレッジハンマー、ではなく片手で交互にチェルに向けて打ち付ける攻撃を始めるので、その交互の攻撃をマイカが蹴りで相殺していく。相手がどれくらいの威力か分からないけど、チェルが受けても陥没するくらいの強さで殴ってくる攻撃をマイカの蹴り1発で弾けるってのは、あいつの火力どうなってるんだ?
「うん、結構強いよ、こいつ……1発返すのに3発蹴ってるし」
「私の眼には1回しか蹴ってないように見えるんだけどな」
周りに敵もいないし、片膝を立てた状態で座って相手の眉間を狙いすませて引き金を絞る。大きい銃声と共に大ゾンビの頭をばしっと撃ちぬいて行動停止……とはいかずに、こっちにぎょろっと目をむいてくるので少し驚きながら排莢。この排莢して、響く金属音がたまんないのよね。
「結構HP高いな」
「ボスらしいですからね!」
口の中でころころとロリポップを転がしつつも、また頭を狙い一撃。銃声が響き、一直線に頭に吸い込まれて……行くことはなく、ぶっとい腕で防御されると少し下がって咆哮一つ。
「うーん、機敏」
「それと、ちょっとまずいかもなあ」
2発目の排莢をしつつ、咆哮がキーになったのかわらわらと大ゾンビの足元からゾンビが大量に湧いてくるのでロリポップをかみ砕きつつ、二人に少し下がるように指示。このままわらわらと湧かれて包囲されると盾が1枚の今じゃ問題ありまくりよ。
「いいね、歯ごたえのある戦闘って」
撃った分の銃弾を込めてからぐいっと髪の毛をかき上げて後ろに流してから、新しいロリポップを咥えてにんまりと笑いつつ状況を見ていく。
「ゾンビってやーねぇー」
「火炎瓶かなんか持ってきてないんですか!」
「そういうのは今日の気分じゃなかったからなあ」
投げ物は結構金が掛かるんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます