527話 安定した強さ
「あー、硬いわー」
「はいはい、聞きました」
銃口を向け、いつものように連射せず、一発撃って様子見てどうするかを考える。私って考えてばっかりだな。とにかく今目の前にいるガウェインの奴、こいつをどう倒すかなんだが、敢えて私は倒さない。こんな奴と正面きって射撃戦なんてしたらあっという間に弾切れするし、私の弱点をよーく知っているだろうから、変にリロード隙を見せるのも良くない。なので私が狙うのはガウェインの奴の後ろ、アオメの奴を狙う。
いい感じに正面にじっくり陣取ってくれるから跳弾と曲撃ちで良い感じに正面を避けて、後ろの奴を狙う。自分で言っておいてなんだけど、結構難度高い事してるなあ。
「あんまし馬鹿正直に付き合ってらんないから、適度に相手してやる」
「つれませんねえ、長い付き合いじゃないですか」
「長い付き合いだからほどほどにするんだっての」
軽やかに前進してくると、これまた軽やかに剣を振って攻撃してくる。そうそう、こいつって滅茶苦茶目立つ装備と防御力を持ってるけど立ち回りに関してはかなり堅実なのよね。変な攻撃スキルを持っているというわけでもないし、スキルやら攻撃の仕方は教科書通りって感じ。まあこのゲームの近接戦のセオリーって殆ど知らないから、色んな別ゲーから見てだけど。
「強敵ばっかりでなおかつ変なのしかいないから基本の立ち回りに対して弱いな」
「そんなに褒めても手加減しませんよ」
横一閃の攻撃を拳銃のトリガーガードで受け滑らせて、すぐに構え直して銃口を向ける。剣を振った後の盾をすぐに構えられない所だから狙えるっちゃ狙えるんだけど、うっすらと目を細めれば、憎たらしい犬顔の奥に青髪が見える。だからこそにんまりと心の中で笑いながら、軽くバックステップからの射撃……の瞬間に曲撃ちでアオメを狙う。なのだが、あまりにもガウェインの奴を狙い過ぎたか、構え直した盾で弾かれて失敗。
「っと、狙いが甘いんじゃ?」
「いやいや、しっかり狙ってたって」
こっちがアオメを狙ってる事には気が付いてないっぽいし、目の前の奴を狙いつつ、後ろを狙うのを続けることは出来るってこった。相変わらず素直に戦うことが出来ないな、私って。
「ああ、もう大盾持ちって嫌い!」
「その大盾持ちをスカウトしていますし、私自身組んだこともあるじゃないですか」
「それはそれ、これはこれだから」
あんまりガウェイン自体を狙わないというのも不自然ではあるので、適度に攻撃を当てつつ、後ろを狙うタイミングを計る。勿論その間にもぶんぶんとキレのいい剣戟が飛んでくるのでそれを受け、捌きつつって事になる。これが出来るのも単純にガウェイン自体そこまで化け物な火力を持っているわけでもなく、アホみたいに速い攻撃速度って訳でもない、ごくごく普通の剣士ってのが大きい。
「ほんと、負けず嫌いだなあ!」
「人の事言えますか、それ」
何度目かの攻撃を受け鍔迫り合いの状態から離れて一発と一撃。お馴染み飛ぶ斬撃でこっちの銃弾を弾く、わけではなく叩き斬ってそのままこっちに突っ込んでくるのをガンシールドで受け、後ろに飛ばされる。
「もー、近接職が遠距離攻撃持つのマジでずるいわ」
「一発直撃したら防御力関係なしに固定ダメージ与える人が何を言ってるんですか」
ああいえばこう言うし、あのマズルに口輪でもつけて黙らせてやりたいよ。
「そもそも私の事ガン狙いしすぎだろ、知り合いばっかり呼びやがって、同窓会かっての」
「苦手そうな相手を見つけるの、大変でしたよ」
「性格わっるぅー」
後ろに飛ばされ距離をとった所で素早くリロード。ここまでのやりとりで距離を詰めるには遠くて、飛ぶ斬撃を出すにはちょっともったいない位置でしっかりと隙潰し。って言うか一発あいつに当てるだけでマガジン一本使ってHPとMPそこそこ使うのって結構消耗えぐい。
「かと言って接近戦するのもなあ」
軽やかな剣戟を避け、受け、タイミングを計り、ちょいちょいとアオメを狙って射撃する。盾に弾かれたのをさらに跳弾してアオメの方に、なんて事が出来ればよかったんだけど、そこまでの腕は残念ながらないし、角度的に物理法則を無視しすぎてる。
「じゃあ剣だけで戦いますか?」
「それもおめーが有利なだけじゃろがい」
そもそも剣って言うか刀はさっきへし折られたから、その時点で不利。そこまで派手な近接戦を仕掛けてくる訳じゃないけど、こっちはこっちでガンナーだから近接武器持ったら弱体化だっての。刀持てるようになってようやく普通レベルだっていうのに。
「だったらこのまま頑張るしかないですね?」
「このイベント終わったらお前の口に縄でも括って黙らせるわ」
こんな調子で勝てるんかいな。
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