465話 続卒業試験

 2人目、得物はアサルトライフルで地味に銃剣を装備している。

 これと言って特徴的と言う訳ではないが、連射しながら接近、そこから銃剣での近接戦に持ち込んでいく流れは強い……と言うか上手い。こっちもARだが、銃剣は付けてなかったのでそこの差は出た。だからってこっちが負ける理由にはならないので、銃受けと銃格闘を駆使して捌ききる。バンザーイって突っ込んでくる日本兵が出るゲーム思い出したわ。勝因は向こうが銃剣の練度が低いという点


 3人目、得物はハンドガン2丁。

 所謂アキンボスタイルで撃ちまくって前進してくる……と、思ったのだが跳弾を使って嫌らしくこっちの行動先に「置いて」くる攻撃がメインだった。こっちはこっちで対処が難しく、跳弾のレベルをガン上げしているおかげで迂闊な動きが出来ない。が、跳弾を使うのも結構大変な事は一つあって、MP消費。跳弾と装填の2つをガンガン回していくとあっと言う間にMPは枯渇する。こっちはIntにも振ってるのでMP余裕での部分で有利を取れる。相手の跳弾装填でのMP枯渇をしたところで接近しつつ、曲撃ち跳弾で反撃して距離を詰めて殴り倒す。


 4人目、ハンドガン1丁、ただし大型。

 オートマチックの大型ハンドガンは単純に取り回しが重いのでそこをどうカバーするかが問題なのだが、こいつはその重い部分を投げナイフでカバーするようになっていた。射撃の反動を押さえて次弾を撃つ際や、撃った後のカバーに使う辺りかなり使い慣れている。これの攻略は……かなり難しかった。投げナイフの本数が多くないと踏んでたら十分な本数を用意していたうえに、しっかり接近専用のナイフ術まで持っていた。此処に関しては打開策が殆ど無く、長期戦で投げナイフが尽きるまで不毛な射撃戦をしているうちにタイムアップ。


 5人目、ショットガンボマー。

 しっかり投擲を取得して手榴弾を使い、がんがんと前に出て主導権を握ってくるタイプだった。とにかくショットガンの利点とグレネードを使って遮蔽を崩して肉薄。撃っての起爆、転がしての起爆、投げての起爆……教えた事ないのにグレネードの使い方がとにかく上手い。こっちはこっちでグレネードは持ってないので、投げられた時には射撃して撃ち落とすしか対処がなく、少しでも後退が遅れると一気に弾幕と爆弾の嵐。何か私が対人イベントの時にもやったような戦法だな。これはもう、下がりながらとにかく相手のグレネードが尽きるまで逃げの一手……といかなく、途中で爆風を貰い、転倒からのショットガンでこっちの負け。





 5戦3勝1負1分、5連戦で自分の教え子ってのを考えると……もうちょっと行けたのが正直な所。と言うか全部勝つべきではあった。こっちの準備が良くなかった、そう言ってしまえば簡単ではあるが、それを言い訳に負けの理由にするのは単純にダサい。

 

「単純に力不足だな……いや、普通に強くなったというのもあるけど」


 教えた奴が強くなるのは喜ばしい事ではあるけど、私より強くなってくるとそれはそれで負けん気が出てくるのでどうしようもない。何て言うか犬野郎の奴とも言えないし、ガンナーの底上げが出来たから良しではあるけど……何にせよ複雑な感情ではある。これを顔に出したり態度に出すとそれはそれで確執が出来そうなので、なるべく抑えておくが。


「とりあえず各々反省する箇所に関しては、纏めてレポートをだしておくから目を通す様に……それで私の教えは終わりだ」


 そう言うと、全員が安堵しているような一息を付いて、各々礼を言ってくる。結構スパルタでやってきたから悪態の1つや2つ吐かれると思ったんだが、そんな事は無かった。いや、教え子なんだからもうちょっと信用してやれって話にはなるんだけどさ。


「これでお役御免、報酬貰って色々揃え直しだな」


 いつもの5人と言う訳で教え子たちは談笑しているので、私自身はその場をさっさと抜けだして犬野郎と連絡を付ける。


『要望通り、物になるレベルには仕上げたぞ、私がストレート勝ち出来ないくらいにはな』

『おっと意外ですね……もうちょっと負けるかと思いましたが』

『その根拠は何処から来たんだ』

『アカメさんが本気で教えこんだら、同じくらいの力量の人が増えると思いましてね』

『それは過大評価しすぎだわ、基本とちょっとした応用で強くなるなら本人の資質だよ』


 そんな犬野郎との会話を進めながら残りの報酬を貰うべく、クランハウスに向かう。ちょっと前に手間賃の話も済ませたので、報酬額が1Mになるとは。そのうち30万はゴリマッチョの経費に消えたんだけどさ。


『まあ、うちとしては戦力アップなので何の文句も無いですが』

『私としては金さえ払ってもらえれば、だな』

『Win-Winな関係は良いですね、後腐れもないので』


 そこまで腐れてる関係でもないと思うんだがな。

 そんなこんなで暫くは他愛もない話をしていればクランハウスに到着。相変わらず犬野郎は優雅にティータイムなので対面に座ってお茶を貰いながら、教え子の良い点悪い点をまとめた物を作って送信。


「どうでした?この1週間は」

「めちゃめちゃ疲れた、教えるのって気使うわ」

「次は教えられる側ですが」


 そうなのよねえ、と一言いいながら指で銃の形を作ってうぬぬっと唸る。

 全然出来る気がしないせいで暗礁に乗り上げてる感あるわ、これ。一応色々と調べてみたけど、こういう純粋な魔法じゃないものって情報があまりにも無いので何一つ参考にならない。ゲーム開始2ヵ月くらいだが、変に特化や王道を外れた組み合わせ、スキル、ジョブ、装備は自力でどうにかするしかない。だからメカクレの奴に教えてもらうしか方法が存在していない。

 犬野郎やメカクレの奴に話を聞いてみたけど魔法矢を使えるのはメカクレだけしか知らないとの事。アーチャー職としては色々種類がいるが、弓も使わないし、矢も出さないのは異端がすぎるわな。


「応用が出来れば魔法弾も行けると思ったんだけどなあ」

「スキル自由度は高いですから、可能性はあるかと」

「そこも分からないのがでかいんだよ、ファンタジー小説だったら魔力を意識してーなんてあるけど……MPってあくまでも消費リソースの1つだし」


 MP消費して何かしらの効果を付与ってのはよくあるものだけど、そもそも何もない状態からそれをやるってのは難しいって話なんだけど、我ながらよく分からんことに手を出した気がする。


「イメージ的には霊相手の探偵みたいな感じなんだけどなあ……」

「なんです、それ?」

「名作、かな」


 銃の形にしている指に念を込めながらふーぬ、とため息一つ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る