438話 頭の出来が勝負の分かれ目

「急造のチームなんてこんなもんか」


 土を巻き上げるほどの砲撃をジグザグのバック走で回避しながら、前から斬りかかって来る相手に中型のソードで攻撃を返し、中距離で射撃戦をしてくるのは斬りかかって来る奴を使い射線を切る。うーん、確かに強い気はするんだけど、噛み合わせが悪すぎて強みが発揮されてない。

 いるんだよなあ、チームの構成を考えないで単騎で突撃して死んだら死んだで文句を言うやつって。しっかり連携取りたいならちゃんとコミュニケーションを取ってみろっての。


「全く……私が指示出した方がまだ動ける」


 何度目かの砲撃が横を掠めて、土煙があがり土の雨が降り注ぐ中、何度か剣戟を交わし、一瞬だけ距離が離れた所でぐるりと高速回転からの横薙ぎ。ゴシャっと大きな音をさせて斬りかかってきた奴を吹き飛ばし、射線が開いた途端に中距離にいたのがビーム射撃。

 こっちもこっちでちゃんと対策済みのビームシールドで弾きながらバック走で吹っ飛ばした近距離機体に挟まれない様に大きく迂回しつつ、射撃の応酬。ビーム兵器は浪漫があるけど、私としては実弾派。バチバチとビーム同士が弾かれる音が響く中、こっちはこっちでARで反撃。装弾も多くてレートも速い、代わりに攻撃力が薄めだが、中距離牽制攻撃用なので、これでよし。


「ふむ、がっかりだ」


 どういう理由でこいつらが組んで戦っているのかは分からないが、しっかりどういう立ち回りをするかを考えてから相手しに来てほしい。この程度なら下手なFPSゲームのAIの方がまだ強敵だわ。

 ビームシールドを展開したままで左腕にARの銃身をマウントし、射撃して牽制しながらちらりと長距離攻撃、近接戦、今射撃戦している相手の位置を把握し、ゆるゆるとバック走とスライド移動で相手との距離を図ってどう倒すかを考える。

 厄介なのは近接戦してくるのだな、中距離のは射線さえ塞げばいいし、長距離砲は近接戦とやっていれば問題ない。まあ近い距離のから殴り倒して片付けていくかな。


「襲撃イベントでひたすら戦っていた時と比べりゃ……軽いマルチタスクだわ」


 ARのリロードタイミングで近接戦の奴がブースト吹かして攻撃を振ってくるのでまた射線を塞いだ上で、そのままARにマウントしてあるブレード部分で受けて火花を散らす。こいつももうちょっと変化のある攻撃をして来れば私の事を攻められるんだろうけど、舐め腐ってるのがよくわかる。何度か攻撃を受けてからARにマウントしてあるブレードを回転。ライフルとチェーンソーって浪漫だよね。こういう組み合わせ武器を扱えるのはかなり面白い。 

 何度か打ち合いをした後、隙をついて一気にチェーンソーを振り下ろし、肩口から一気に削り取っていく。んー、でもこの感じで言えばグラインダーの方が切れるな。とりあえず振り切って相手の左腕を削り飛ばし、ばちばちと火花を散らしている所を見逃さずに、チェンソー付きのARからソードに持ち替えてからさっきと同じようにぐるりと高速回転し、斬り落とした左腕側から思い切り叩きつけ、そのままブーストを吹かして中距離で射撃をしてきた奴に思い切り叩きつける。

 がしゃんと大きく金属同士がぶつかる音を響かせている間、砲撃している奴はどうしようかと迷っている。まったく、1人倒すだけならさっさと砲撃してFFした時のデメリットと攻撃のメリットを天秤にかけてみろっての。


「がっかりにも程があるわ!」


 2体引き倒した所で前にやったように頭部と胴体の付け根を狙ってソードを突き刺しねじり切る……が、上手い事、射撃戦をしていたのがブーストを掛けて抜け出すので、1体だけしか仕留めきれない。

 

「ちぃ、逃した」


 離れればすぐに射撃をしてくるのでこっちもシールドで受け、ソードは突き刺したままでねじり切ったのが完全に機能が停止したのを確認し、また距離を取る。こういう射撃戦の時はどう相手と距離を詰めるかが問題だな。なんだったら砲撃している奴も、気にせずに撃てるようになるし、先に片付けたのはちょっと失敗だったか。

 バリバリとビームを受けるたびに徐々に警告音が響きはじめ、シールドの耐久がやばいと報告してくる。そりゃ無限に使えたらシールドでがん固めした方が強いわな。砲撃もかなりしやすくなったのか、私が逃げる先に偏差射撃もしてくるし、ちょっとは成長しているっぽいな。


「さーて、どう倒すか……」


 純粋な射撃戦になると、遠距離と中距離で滅多打ちにされている分、前に出るタイミングが難しく、長距離で砲撃しているのは上手い事掻い潜っても重装甲をどう打ち崩すかが問題にもなる。が、逆を言えば孤立させればこっちのもんでもある。何て事を考えているとビームシールドが音を立てて故障、すぐさまパージして少しでも本体を軽くしつつ、ARで応戦しながら考えをぐるぐると回す。


 相手は中距離射撃と長距離砲撃、装甲は例に漏れず中量、重量、距離を取ってしっかり自分の機体を信じているような立ち回り。

 こっちの手持ちはAR1丁、ソードは突き刺しっぱなし。足回りは良くしているし、装甲もそこそこあるがソードでの打ち合いや砲撃諸々で結構削られている。装甲や機体を弄る事は出来ないが武装自体のスイッチはメニューからやれるし、組み直すか?ただそれをやっている間は無防備になるからタイミングを見つけないといけないが……。


 あれこれ打開策を考えつつリロードを挟んだ所で直近に砲撃1つ。クソ、余計な考えをしていたせいで爆風のダメージが入った。ぐらつく機体を逃さずに中距離からのビーム射撃。ビームに対する装甲耐性はそこまで高くないので、シールドを付けていた方の腕で受け、少しでも胴体や他の部位にダメージが入らない様に、相手に対して斜めになって移動。シールド無くなっただけでばしばし攻撃当ててきやがるわ。


「どうにか装備を変えれればいいんだが……仕方ない」


 敢えて上から見ればワンパターンの動きをしつつ、中距離射撃をしてくる相手を中心に回り込んでやると、移動先で砲撃が着弾。毎回の様に起きる土煙と土雨の中、着弾地点で急制動してメニューを開いて装備変更。肩にキャノン1門と使い捨てのミサイルを両足に。ソードはそのままにしておいてARから威力の高いDMRに変え、増設ブーストを付けたら一気に土煙から離れて、位置確認。さっきの砲撃で左腕が死んだが、まだいける。

 土煙からいきなり出たおかげで急襲でき、中距離戦をしていたのをミサイルで攻撃しすぐにパージ。流石に不意打ちを掛けたのもあり、結構当たったっぽいので、そのまま振り切り砲撃していた奴の方にブーストを掛け、キャノンで撃ち合い。一発撃つたびに軽く減速するし、機体のバランス悪いから撃ち切ったらこいつもパージだな。


 キャノンで撃ち合いをしながら少し高台にいた長距離砲を撃ち込んできた機体にそろそろ接敵するタイミングで後ろから何発か撃たれ、追加で乗せていたブーストを潰されるので先にパージ。


「ただ、まあ遅いわな」


 掠めていく砲撃をするりと避け、DMRで攻撃。「ガイン」と金属の跳ねる音を何度もさせつつ体勢を崩した所でタックル……ではなくそのまま頭上を通り越し、後ろを取った所でキャノンの一撃をいつもの様に首を狙い一撃。流石に関節部分をガードしない訳ないので、一発で倒すには至らず。


「やっぱり硬いか」


 すぐさま残ったキャノン全部を撃ち切るが倒しきれないので、撃ち切ったのもすぐにパージ。ごとんと音を立てて地面に落とした所で、残り1機が合流。引き剥がそうと射撃してくるのでDMRで反撃しつつバック走で距離を取る。やっぱり詰めが甘いわ、私って。

 また射撃戦をしているが、左腕がやられているので一発撃たれるたびに振動と警告音が響く。そろそろ片付けないとこっちがヤバい。相変わらず斜めに構えて被弾面積を落として高速移動で撃ち合いをしていれば、砲撃も再開。元気だな、あいつら。


「……そろそろ、良いか」


 馬鹿正直に正面で撃ち合いしてくれたおかげで中距離機も鈍ってきている、攻め所は、ここだ。

 残った全ての弾を撃ち切ってから、バック走から急転換で前に。向こうは追いかけながら前進して撃ち込んできていたので、DMRで防ぎながら接近し、すれ違う瞬間に思い切りDMRの銃身で殴り、勢いのまま転倒させると、それを手放し、ブーストを吹かして近距離機に突き刺しておいたソードを回収。

 この間にも相変わらず馬鹿の一つ覚えで砲撃をしてくるが、場所も分かって撃つタイミングもわかっているのでもはや敵ではない。


「十分、楽しめたが……有象無象が調子乗るなよ」


 ソード以外の武装を全て外し、左腕も根元から外したうえ、最低限の装甲を残して砲撃の方にブーストを掛けて一撃を加えに行く。勿論だけど反撃してくるが向けてくる銃口が見えているのに避けられない理由はない。こういうのはあれだな、機動力が高い相手に対して自走砲が平打ちでお願い射撃してる時と一緒。ボンボンと後ろで砲撃の着弾音を聞きつつ、しっかり接近した所で一気に首部分、キャノンでぼっこぼこにしたおかげで歪んだ装甲を貫き、同じように斬首。

 うーん、倒し方がワンパターン。


「さーて、後はお前だけか」


 装甲はボロボロ、ブーストも結構ガス欠気味。武装は残ったソードだけ、左腕は無いし、脚部もそろそろ折れそうだが。


「負ける気は何も無いな」


 「ズン」と肩にソードを置いて相手を見据え、一気に駆け出すと共に、仕留めにかかる。

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