399話 癖ありパーティ

「それでアカメさんはどう動くのですか!」

「ダンジョン攻略をメインにかな、丸1日とあと半日以上あるからがっつりやればクリアは行けるだろ」

「やっぱり人が多いのでクランをやめたのですか!」


 何でそっち方面の話になる。別にそういう事は無いんだが、他から見たそういう風に見えてるって事か。勘違いされたままでも別に良いと言えば良いのだが、情報クラン所属ってのを考えたらちゃんと説明しておいた方が良いな。


「そりゃ、私が一番弱いからだよ、おんぶにだっこじゃ強くなれんだろ」

「……弱いって、それ冗談ですよね?」

「いいや、マジだよ」


 煙草から上がっていく紫煙を軽く目で追いつつ、ふすーっと紫煙を吐きだして一息。私がぶっちぎりで強い何て事をそこまで思って無いのは事実だし、実際固定ダメージでどうにかこうにかやりくりしているのは今でもそうだ。

 

「だってガンナーとして実績も強さも兼ね備えてるじゃないですか!」

「本人がそう言ってるんだから事実だろ?」


 メニューを開いて次の襲撃があろう時間をチェックし、吸い切った煙草をぷっと吐き捨てる。


「今だってパーティを組まないと先に行けないのを自覚してるから募集してるんだよ」

「ええー、だってー……!」


 何とも納得が出来ないような顔をしてこっちを見てくる。

 好意的に見られるのは悪い気はしないのだが、私の考えよりも他人の考えが広まっているのはあまり宜しくない。って言うか私に対してそんなに強いってイメージが付いているんだな。


「私の強さってのはひたすらに『勝ちたい』『強くある』そう言った気持ちの部分が大半だよ」

「……気持ち、ですか?」

「ちゃんとやってる事を見せたらあれこれ手を考えて、どうにかしているだけだしな」


 自分が誰よりも強いという気持ちで戦っていたのは確かではあるけど、基本的に行き当たりばったりで切れるカードをどうにか使っているだけだ。

 

「だから弱いと?」

「そ、自覚してるから手を考えるんだよ」


 露店からそこまで離れていない位置、拠点の壁にもたれかかりながら煙草を咥えて上下に揺らしていると、メッセージが1つ飛んでくる。露店を見たのが飛ばしてきたっぽい。


『まだパーティ募集してます?』

『ああ、露店から少し離れた所で煙草を吸ってるのが目印だ』


 しゅぽっと煙草に火を付け一服していればガンナーが1人気が付いて此方にやってくる。

 とりあえずどんな奴かを話してから考えるとしようか。





 はーっと大きいため息を吐きだすと共に煙草の紫煙を辺りに撒きつつ、手を払ってパーティ募集でやってきたプレイヤーを見送る。これで5人目だが、良い奴に当たらん。不作だ。銃弾の流通とギルド場所特定、金さえあれば高いとはいえ弾と銃もギルドで買える弊害だな。また大きいため息を吐きだし眉間に皺をよせ、そこを指で伸ばす様にしていると、おろおろと情報屋が私の心配をしている。


「良さそうな人ばかりでしたが、ダメでしたか?」

「私含めて3人、4人パーティを考えたら、それなりに動ける程度じゃダメなんだよ」


 武器や防具は揃っているけどスキルが足りてない奴、適当に戦ってきましたって感じの奴、攻略Wikiでも見てとにかく火力が出るから選んできた奴、こんなやつらに背中を任せられるかって言われたらNOだ。聞いてみたら対複数戦もしたことない上に、とにかく連射します!って答える奴もいるしでどうなってんだ。


「仕方ないか……とりあえず候補1人目はお前な」


 情報屋を指差してから露店の状況をチェック。そこそこグレネードが売れてる以外に特には無いが、結構な人数がチェック自体はしてくれているようだ。

 

「さっきは情報集めろと言っていたのに!」

「情報クランのガンナーなら殆ど私の直系みたいなもんだろ、ガンナーのあれこれやってくれーって言われてなかったか」

「ええ、まあ、それはそうですが!」

「トラッカーも持ってるだろうし、自作で銃弾も作れる、銃も作れる、下手な奴よりは信用できる」


 指折りで数えながら言っていくと「はあ」とか「まあ」とか言い、一応出来ますけど……と言った感じに返事をしてくる。あれこれとガンナーの情報を流していたし、それを検証していたのを考えたら一通りのスキルや能力は備わっているだろうって踏んでる。

 

「ま、嫌なら良いけどな」

「そんな事はないですが、そうなるとちゃんとパーティを組みたいですね!」

「あんたの人脈で良い奴いない訳?」

「アカメさんこそ、良い人いないんですか!」

「知り合いのガンナーには頼らないって決めてんの」


 トカゲやポンコツに声を掛ければさくっとこっちにやって来るのは分かるが、それをやったら私がクランを抜けてまで1人でやってきた意味がなくなる。たまたま見つけてこっちに来てもパーティ自体は断るだろうけどな。


「うーん、それじゃあ心当たりに連絡をします!」

「……やっぱ思い通りにはいかんなあ」


 



 また何人かやってきたプレイヤーと面接して落選を繰り返してから情報屋が呼んだ1人がやってくる。


「久々に連絡があったと思ったら……こういう事ですか」


 新しい煙草を咥えてぼうっとしていたところ、やってきた人物を見て成程と一言漏らす。確かに情報クランを使う、癖があるガンナーだな。


「ちょっとは私を超える事が出来たか?」


 目の前にいる、青髪青眼の私に似ている容姿の奴が少しだけバツの悪そうな顔をしつつ、まだまだですと返事をしてくる。

 

「あんたねえ、知ってて呼んだの?」

「しっかりボーダーをクリアしている人物ならいいかと!」

「何するか、知らないんですけど……」


 久々に会ったな、パチモン。変装しているから赤青で揃ったのは偶然が過ぎるが。


「まあ、私の真似事しただけあって動けないって事はないだろうしな。下手な奴だったらとっくの昔にクラン叩き潰しに行ってるのが証拠」

「すっごいプレッシャーなんですけど……」

「良いじゃない、こういう機会じゃないと共闘しないんだから」


 腹を括れと言ってやると少し大きめに息を吐き出した後に目つきが変わる。どうやらしっかりやる気を出したようだ、うんうん、私を見習うならそれくらいやって貰わないと困る。


「もう1人心当たりを呼びました!が、性格にちょーっと難があるんで!」

「それくらいでアカメさんが動じるとでも」

「だから呼んだんです!わかってますー!」


 何であっちでバチバチしてんだ。

 私としては戦力さえ整って、しっかりダンジョンアタック出来れば幾ら性格が悪かろうが、面倒な奴 だとしても良いわもう。ある程度いう事聞いてくれりゃなお良いけど。


「で、どんな奴なんだ」

「ええっと……一言でいえば物凄くロックパンク?」


 ざっくりしすぎだろ。まあ情報クランで知っている奴だから結構変な奴ではあるんだろうけど、実力派あるはずか。そんな事を思い、何故か知らんが私だったら大丈夫だ、信用していないのかと言い合いをしている。だから過大評価をし過ぎなんだよ。そうして更に少しだけ時間が経つと、1人プレイヤーがやって来る。


「こんなとこに呼んで何だよ」

「アカメさん、この人です!」


 黒髪黒目、ピアスめっちゃついてて、ジャラジャラとアクセが付きまくっている、文字通りパンクって感じのプレイヤーが1人。そういや情報屋の奴は金髪金目なので、それぞれ赤青黒金のカラーになる。傍からみたら中々に派手だな。


「ダンジョンアタックする面子を紹介してもらったんだよ」

「ああ、誰だてめー……?」


 すっごい不良って感じで私の事を上から下までじろじろと見てから、何かに気が付いたのか少しだけ離れて、何か照れたような感じを出してくる。とにかく何で呼んだか、何をするかを一通り説明してやると暫く黙ってそれを聞いてくる。案外素直なんじゃないのか、こいつ。


「いいぜ、その話乗ってやる」

「それじゃあ、早速ダンジョンに向かって攻略する……」


 何て事を言っていれば、急に鐘が鳴り響く。

 どうやら4回目の襲撃が始まるようだ。


「……前に、砦でそれぞれ防衛だな、パーティは今組んでおくとして、全部終わった後にもう一度ここで合流、補給してからアタック開始、何か質問は」

「いえ、ありません!」

「こっちもないです」

「ねえよ」


 物わかりの良い連中だ事。そういう訳でさっさとパーティを組んで、しっかり4人いる状態を確認してからそれぞれの砦に一旦防衛に向かう事に。ようやく進展がありそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る