13章
331話 装い新たに
このゲームの課金ってゲームに絡まない所にすげえ力を入れてるんだよね。
私のお気に入りの宇宙猫Tシャツも週2、3のペースで新しい柄が入ってるから、愛用者としてはすごい楽しい。って思ってたら、あの宇宙猫T全然スキンとして使用者がいないって言う。なんだよ、可愛いのになあ。
そんなわけで、襲撃イベントが終わってから2日ほどたったわけだが、平日に突入したので夜ログインしかできなくなる。襲撃イベント終りの次の日は週明けだったのもあって、ログインは軽くしかできなかったので、がっつりログインするのは1日ぶりになるわけだが、その前にやる事がある。
先程言った課金だが、スキン以外にも結構使える物が多い。
例えば今手元にある、これ。1個1,000円なわけだけど、髪型と髪色等を自由自在に弄れることになるヘアサロン券。ゲーム内でも弄る事は可能だけど、買っておくと選択幅が大きく増える上に、ウィンドウ開いて使えばいつでもどこでも変更可能になりますって代物。見れば見る程、趣味に振り切ってるアイテムだ。大抵こういう課金アイテムって大体は使い切りになるので、無限使用できるなんて運営は優しい。
キャラ造形の変更は500円だが、あっちは名前以外の設定項目を全部ひっくるめて変えられるのでちょっと違う。その変更でも使えない髪型、髪色を使えるのがヘアサロン券になるわけだ。
そういえばキャラスキン券もまだ使い切ってないんだよな。お布施としてスキン券を買ったわけだけど、宇宙猫Tを送り付けるくらいにしか使った覚えないわ。
「さーて、どんな風にするかなあ」
クランハウスの定位置、2Fの椅子でくつろぎながら自分のメニューウィンドウを開きつつ、どうするかなーと考える。今日の隣はサイオン。
こういうのって自分の姿から合うやつを決めるわけだけど、奇抜なのはネタに走ってる奴じゃないと、選択しにくい。って言うかそもそもそういう遊びはあんまり趣味じゃないから無し。とりあえず髪色は変更したので、後は髪型。
選択するたびに勝手に自分の髪型が変わるってのは中々面白い。こういう時に自分の姿が見えないのは不便だと思っていたらサイオンが鏡を持って待機してくれるので、それをみながらぽちぽち選択して髪型を変えて楽しむ。
「なーにしてんの、ボス」
「ヘアサロン券で遊んでんの」
「マジ、あれ買ったの?」
「1,000円で変更し放題だし、運営のお布施としちゃ見返りが大きいから」
「あ、これにしよ、これ」
「パイナップルって似合わないでしょ」
一応選択すると頭のてっぺんがぼさっと広がり、文字通りパイナップルの様な髪型に。それを見てポンコツはけらけら笑う。
「まあ、スーツには似合わないよねえ」
「あんたが宇宙猫T着てパイナップルなら似合うわよ」
「ええー、ほんとー?」
「配信の投げ銭で買ってみたら?」
「それもいいねぇ」
ゲーム内での課金アイテム購入は出来ないので一旦ログアウトするしかない。流石にクレジットの情報やリアルマネーが絡んでくると、セキュリティ的にも敢えてそうしているんだろうな。
人がぽちぽち弄っている間に、ポンコツはログアウト、暫くしてからログインしなおすと、近くの椅子に座って同じようにウィンドウを開いて髪型を変え始める。
「カラーの選択幅に、種類、髪型もアレンジ可能で凄いなあ……」
「ゲームの髪型って開発のセンス出るのよねー、数が少ないと面白くないし、数が多い割に似たようなのが多くて、選択幅が狭いとか」
今の所、今まで見てきたゲームの色々な髪型を突っ込みましたって感じの種類があるので心配している所はあんまり意味がないが。
「流行りに乗って緑色入れてみるかなあー」
「ピンク色やめたらポンコツピンクって言えないからな、ポンコツレッドとかポンコツグリーンってのも面白いが」
「とりあえず曜日が分かるように7色ってのもいいね」
毎日呼び方変えるのは結構めんどくさいが、どうせポンコツとしか呼ばないから問題ないか。それにしたって7色毎日変えるってそれはそれでめんどくさい気がするが。
「ふっふー、今プリセット機能見っけたからねー、設定しよっと」
私より使いこなしてるし、楽しんでるじゃねえか。
「私はまだどの髪型にするかすら決めてないってのになあ」
「やっぱりマフィアやヤクザみたいなばっちり決まってる奴?」
「ノリノリでやってたけど、基本的に健全なクランであってだね……」
「いいんじゃないか、カッコいいぞ?」
髪型に何にも関係ないトカゲ野郎が口挟んでくるとは。
「あんたは決める物ないでしょ」
「鱗の質感や形状は変えられるんだよ、爬虫類でも色々いるしな」
「ほらー、ばしっと決めた方がカッコいいって」
「年頃の子にばっちり決める髪ってのもどうかと思うがな」
更に髭親父も参戦。平日の夜だというのに集まり過ぎじゃないか、こいつらは。
「子って言う程若くねえって」
「だったらそのバシッと決めたのでいいじゃないか、どうせ幾らでも弄れるんだろう?」
「そのもさもさの髭ももうちょっとおしゃれにしたら考えてやるよ」
「ほう、言ったな?」
そうするとログアウト、ログインのさっきと同じように見た流れ。
一応まあ、理髪店で髭も弄れるって考えたら髪になるのか?目の前のウィンドウを開いてぽちぽち選択すると髭の形が変わり、鼻の下に山なりになる、所謂カイゼルって奴に変更する。勿論それを見てトカゲとポンコツはけらけら笑い、髭親父は髭親父で気にせず、楽しそうにその髭を撫でる。
「ふむ、こういうのもたまにはいいな」
「いきなりダンディになったな、おい」
「さ、後はボスだけだよ」
「しょうがないなあ、まったく……」
とりあえず決めておいた髪型、さらっとしたショートヘア―に。
「ええ、ふつーじゃん」
「こういう事も出来るのよ」
一旦ウィンドウを閉じてから手で髪を後ろに流してやると、赤と黒が混じったオールバックに。
で、その様子を見て3人が「おぉ」っと声を上げる。
「ええ、何そのお洒落なギミック!」
「インナーカラーを赤にしたのか」
「だからショートなのか」
「こういう事をやってこそ、このヘアサロン券に意味があんのよ」
で、頭を横に軽く振って流していたのを元に戻せば普通の黒髪ショートに戻る。
「さてと、色々やる事やって今日も楽しむとするかな」
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