208話 3対1

「てめ、おとなしくやられろ!」

「はいはい、やられるやられる」


 ぶんっと大きく振るのを受け流されてから銃撃の反撃を結構もろに受ける。すっげえHP減るんだけど、どういう威力してんだよ、あの銃はよ。

 そもそもさっきまで左手で持っていたのが右手に持ち替わっている、明らかに無理な体勢からの射撃と、ゲームシステム的にありなのかって部分があるんだけど、どういう事なんだ?そもそも本当に遠距離職なのかって位にHPが高いのも気になる部分だ。


「猪突猛進で向かってくるのはいいけど、もうちょっとずる賢くならんと、なっ」


 数度目の攻撃をガンシールドで受けると共にまた構えていた銃に撃たれてダメージ。防御力はあるからまだいいんだが、やっぱり抜けてくる固定ダメージが痛い。数発撃たれただけで100に届きそうなダメージを貰うのはゲームバランスがおかしいだろ。


「おい、お前ら最初に戦ってたんだから何かないのか?」

「んー、そうだなぁ……近接系に強くなってて、HPがやけに高いって所かなぁ」

「流石にレベルも上がっているし、立ち回りもしっかりしているな……じゃあ何でそんなに強いんだって話になるんだがな」


 ちょっとやってみろと言われたので、暫くはタイマンでやった感想で直撃してもあまり聞いた感じも無いのでそこは確かに感じた。

 前回前々回のイベント戦はどう戦っていたのかも一応は見たのだが、拳銃メインでは無かったので正直な所参考にもならなかったのはどういう事だよ。

 

 距離を取った時には向こうから攻撃して来ないのでじっくり相談事は出来るわけだが、どうもあいつのにやけ顔がちらついてくる。

 やっぱなんかムカつくな、何でこうも余裕しゃくしゃくで、手のひらで踊らなきゃならんのだ。


「やってて感じた事じゃねえか……先に来てた割に情報が薄いな、おい」

「やりにくいんだよねぇ、対多数戦もかなり手馴れているしぃ、地味だけど機体コントロールもうまいから、良い感じに動かしてくるしさぁ」

「ふむ……だったら正面はマイカ、左右で儂とニーナで行こう、武器のリーチが長い儂ら2人が挟み込んで前から当たれば流石に行けるだろう?」

「ボード吹っ飛ばされるのがちょっと怖いなぁ……ねー、薫ちゃん、あたしのボード飛ばされないように後ろにいてくんない?」


 何だあのごりごりのオカマは……猫撫で声で後ろに回ってくれるわけだが、そこは良いのか?あいつって別のクランの奴だろう?


「そーそー、出来る事はぜーんぶやらないとね」


 うんうん、と頷きながらアカメの奴が楽しそうに銃を回している。

 確かあの銃って何発か撃ったんだよな、だったらリロードとしてあのガンプレイって事か?だがそれにしても何度もくるくると回しているってのが引っかかってくる。


「もうちょっとやってくれないとさっさといっちゃうぞ」


 くるくる回していた銃を止めると同時にこっちに向かって発砲。流石に見ていた状態からなので大剣を盾にし、甲高い音をさせつつ防御し、そのまま接近。

 このまま相談して時間を潰すよりもとにかく倒すための行動をしていた方がまだ建設的だろ。


「流石に3対1はやった事ないだろうよ!」


 俺様が動いたのに合わせてさっき言った通りのフォーメーションになり、3方向からの連続攻撃。

 あまり横に大振りにすると反撃射撃も貰うし、振りは小さく、大きくダメージを与える様にしっかりと振り抜くようにするか。

 連携の髭親父に関しては槍先を回しながらじりじりと接近、バトルジャンキーは姿勢を低くしたままこっちの動き方を見ながら飛び掛かり待ちって所だ。流石にこれなら大きめのダメージを与えれるだろ。


「まあ、それが何もない場合の話なんだけどな」


 左右から挟み撃ちで攻撃する瞬間に、アカメの奴への攻撃がすり抜ける。いや、すり抜けると言うかからぶり、勢いのままで車体反対側の方へ大剣の切っ先が地面に触れてじゃりじゃりと音を響かせる。

 俺様の反対側にいた髭親父も驚いた顔をして、目標を探している。


「いっだぁ!」

「おっと、悪い悪い」


 声の方をちらりと見やれば、此処でブレーキをかけて速度差で攻撃を避けた上で、バトルジャンキーの方に正面からぶつかっている。

 クソ、機体操作での回避のわりに、あいつ後ろ向きのままで減速しやがったぞ、おい。

 こっちもこっちで減速を掛けて追撃する……訳にもいかない、あいつが落とした速度がどれくらいで最高速度に到達するか分からんから、減速タイミングで加速されるとまた空振りする。

 しかもぶつけて衝撃でバトルジャンキーがアカメの機体にへばりついているから助けてやらないとまずい。ボードが車体の下にあるみたいだし、どうにか落ちないようにしているってだけなのが、やばい。


「減速して追撃しろ!前は抑える!」

「うっせえ、わかってらぁ!」


 ブレーキをかけて同じ速度位にまで落とし込み、すぐさま追撃。髭親父がそのカバーで前に出て進路を塞ぐのをちらみしつつ、減速に合わせて大剣を横に大きく振り抜く。

 流石に後ろ向きってのもあったのでがっつりともろに攻撃入り、そのまま思いっきり振り抜いて攻撃がヒットするわけだが、それでもダウンしない。いや、耐久力高すぎんだろ、こいつ!


「あだだ……ちょっとはボスに優しくしなさいよ?」


 攻撃の当たった所を擦りながら、スーツの斬れたところから黒いてかった肌……じゃねえな。


「アカメちゃん、がっつり防御あげてんじゃん!」

「まあ、代わりに基本ステが落ちるからいいだろ?」


 あれは確か、1回目のイベントの時に来ていたキャットスーツか?だとしてもHPが高すぎる、生産職とは言え、かなり攻撃力の高い剣だし、勢いも付いていたからかなり削れた攻撃だと思うんだが……。


「とりあえず早く助けてぇ!」

「前から押し込むぞ!」

「バトルジャンキーはいつもの身体能力でさっさと上がれよ!」

「無茶言わないでよぉ!」

「いやー、元気だねぇ」


 一発大きいのを貰った割に余裕な顔は変わらない上に、挟み撃ちでも動じてないってどんだけきもすわってんだよ、こいつは。


 兎に角前方から髭親父が槍攻撃でアカメに肉薄。流石に攻撃されるのが嫌なのか、するっと右横にずれて回避、機体下にあったバトルジャンキーのボードを回収して、後ろに回りこむ。


「ほら、こっちこい、馬鹿!」

「うへぇ、ニーナちゃんやさしいー」


 人の機体の前輪に飛び移ってくるので、回収したボードを受け渡す。

 こっちは減速したせいで追いつくのキツい、髭親父が前を抑えているからそっちの対応に追われている間にこっちが加速して追いつかな。


 と、思っていたところで後ろからもう1人追加人員、もう少し早く来てくれないと困るだろうが。


「あー、いた!」

「ガンガンやり合っていると思ったら、本当にいるとは……」


 遅すぎるんだよ、あのポンコツ配信者め。

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