198話 敵としてみたとき
「うっわ、何だよ、あいつ……」
フルフェイス被ったキャットスーツの1輪バイクが地雷原を突っ切っていってるのだが、あいつアカメの奴じゃねえか?
ここ2、3日はあいつの事見てないし、何を仕込んでるのかわかんねえけど、今のうちに仕留めておくか?
この辺りでちょっかい掛けて、一発叩きのめしておいたら後々有利になるわけだし、此処で手を出すか。
そもそもこの地雷原で手を出すのは結構難しい気もするんだが、それは向こうも一緒だな。むしろこういった「攻撃をしにくい難しい所」で敢えて攻撃しに行くと言うのが勝ちに繋がる。
俺様の機体もバイクではあるが、前2輪後1輪のトライクで自動操縦付きの特殊能力は手放し運転用。どうしても獲物がでかいから、手放し出来るようになるのは非常に大きい。
そういう訳で背中にマウントしておいた鉄塊って名前の大剣を引き抜いて、地面に擦らせながら一気に横から接近。その接近した勢いで機体をぶつけると共に自動運転をオンにし、一気に大剣を振り抜いて正面から思いっきりぶち当てる。
「ぅおらぁ!」
全年齢のゲームだからひしゃげたり血が出たりするわけではないが、そのままプレイヤーだけが後ろに吹っ飛んでバイクだけが自走する。
落下して暫くはダウン判定にならないのだが、機体とプレイヤーが一定距離離れると強制的にダウン、プレイヤー側の方に機体が転送されるってシステムっぽいな。
今一緒に走ってた、バイクがモンスター倒したときと同じように粒子状になって消えていったからな。
「ちげえな、あいつじゃねえわ、あんな雑魚がアカメの野郎のわけじゃねえ」
振り抜いた大剣の切っ先をちりちりと地面に擦らせながら後方で転がっていったプレイヤーを見ながら自動操縦を切ってすぐに地雷を避ける。理不尽に密集している訳でもないし、避けるのは余裕なんだけどな。
「つーか、ライダースーツ多すぎんだろ!」
パッと見てもそういう衣装と言うか防具を付けているのが多い。
レース系イベントだし、アカメの奴が着てたのを知ってたのか、それとも裁縫ギルドのオカマが売ったのかはしらねえけど、とにかく多い。
やっぱり浪漫兼用で性能もあるから着てるのが多いのか?アカメの奴が妙に気に入ってたってのと、あれで街中歩いてたって言うんだからイベントと噛み合ったって所だろ。
「猿真似プレイヤー共がよぉ!」
何かそれはそれでイラっとした。
イライラするので直ぐに見つけた相手の所に機体をぶつけ、その接近した際の加速をかけ合わせて攻撃。こういうのは「大きさ×質量×スピード=破壊力」って図式が成り立つな。本当はステゴロだけどよ。
「ゴン」と大きめの音をさせてまた1人吹っ飛ばす、このイベントの肝はここだ、相手を確実に仕留めなくても良いから、落下させてダウン、遅延させてしまえばしばらく動けない上に、機体が戻ってくるまでの間、通常のダウンよりも長く足止めさせられる。
問題としては、狙っている相手じゃないと言うのが大きいのだが、マジであいつどこに行った?
「クソ、みつからねえな……先行ったか?」
しばらく近くにいる奴をとにかく落下させつつ周りをぎろぎろと睨みつけるが、俺様の攻撃方法を知ってか、此方側に向かってくる奴はあまりいない。クソビビり共が、生意気に立ち回りやがって。
「他のクランの奴らも見ないし、先に行ったか、そうそうに狙われて沈んだか……」
って思ったが、あのクラン連中って戦闘力はずば抜けて高かったはずだ。あの髭親父だってイベントの時の立ち回りをみれば明らかに強い、立ち回りがやけに堂に入ってる。その割に酒作ったり野菜作ったりしてるのはよくわからねえが。
バトルジャンキーとトカゲ野郎は場慣れしてんな、ゲームってのを理解して立ち回るから厄介な奴、戦闘勘が強すぎんだよ。
ポンコツピンクはよくわかんね、イベントでは見てないし、一緒になって戦ったわけでもないから何とも言えねえが、あの様子みたらそこまで強くはないだろ。
そして何よりアカメよ、あいつが一番よくわかんねえ。
色んなゲームしているのは分かってるし、考え方がゲーマーってのはよーく、理解しているのだが、やる事成す事に突拍子が無い。
この地雷原だって、加速装置くらいの感じで突破してる可能性の方が高いか?映画や漫画も好きみたいだからその知識を使っているのも分かるんだが、だとしてもよ。
あー、もううだうだ考えてもしょうがねえ、アカメの奴っぽいの見つけたらとにかく手当たり次第にぶん殴ってやる!
「てめえだろぉ!」
また接近してプレイヤーへのダイレクトアタックで叩き落とす。黒髪、ドラゴニアン、スーツってのどれか要素が入ってたらすぐに殴りかかる。
キャラ作り直しのアイテムを課金して手に入れたって言っていたからもしかしたら容姿を変えてる可能性だって高い。あいつのことだから目立った分をカバーするために一時的に変えるってのもあり得る話だろ?
「に、しても外ればっかじゃねえかよ……」
「何が外れだって?」
その声は聞き覚えがある。俺様の神経を逆撫でってわけじゃねえけど、飄々としていつも軽くあしらいやがる奴の声だ。
「てめえの事を探してたんだよぉ!」
すぐさま鉄塊を構えて声の方向に向き直り、さっきと同じ戦法で機体をぶつけてそのままの勢いで殴る……のだが。
「これから一気に前に行くから、遊ぶのは今度な」
それを聞いてハッとしつつ、すぐさま機体の制御をして接近しようとする前に一つ爆発。クソ、前にいた奴が地雷を踏んだか?
手でその爆風を咄嗟に防いでいる間に、もう一度隣で爆発が起きる。
次はアカメの奴が爆発したのかと思い目を凝らしながらそっちに視線を向ければ、急加速して先に進んでいる……野郎、お得意の爆弾を使って疑似ブーストみてえなことしたのか、機体二つ分くらい前に出てやがる。
こっちはまだ最高速度にはなってないので追いつけるっちゃ追いつける速度を保っているわけだが。
「てめ、何個爆弾もってきたんだ!」
「そりゃあ、沢山だろ?」
2発目のパイプ爆弾を後ろに、しかも地雷の所で爆発させてまた急加速……あいつ耐爆でも特殊能力に付けたのか?いや、そんな事は良い、このままじゃただ単に加速し続けるから突き放されるだけだ。
「小賢しい事を……!」
ボンボン爆発させて前にぐんぐんと出ていくアカメの野郎を見つつ、適当にバイクに乗っていた奴を叩き落とす。
あいつが誘爆させるってならこっちはこっちで他プレイヤーの機体を地雷に突っ込ませてそれを利用して……ってそんなにうまく行かないか?
「ええい、こちとら全財産が掛かってる大勝負なんだよ!」
勝ちに行くってのはこういう事だろ、なりふり構わず、不正じゃなきゃセーフってよ。
操縦者のいないふらふらする機体がダメって事なら、こうして……!
「んんおぉ!」
鉄塊を機体の引っかかりそうなところに突き刺し、そのまま持ちあげて地雷に投げ入れる。STR強のステータスにした恩恵がこんな所で出てくるとは思わなかったが……とにかく、自機体の後ろで爆発が起きるので爆風で加速。
そこまで距離を離されない様に、あのにやけ顔の野郎を見失う事が無いように追走していく。
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