173話 虚無タイム2

「……この格好で白い粉持ってるとやばくね」


 南エリアから戻り、ゼイテの転移地点から自宅に戻って、早速畑に行く訳だが……うん、まあ、この格好で白い粉って言ったらもう薬に見える。別に問題ないんだけど、絵面がアウトすぎじゃね。

 バケツの中身をジャガイモ畑にぶちまけまくる、そりゃもう真っ白になるくらいに。


「これ、効果あんのかな」


 散々色々とぶちまけておいて、結果これよ。

 前にもまいたっけ?機械的に植えては収穫してを繰り返しているからちょっと前にやったことはすっかり忘れてしまうのはしょうがないね、イベントあったり寝込んだりしたし。


「いや、一回だけ撒いたな、余った分のちょびっとだけだったから効果が薄かったって事か」


 どれくらい撒いたらいいのかもわからんから何とも言えない。実は本腰入れてファーマーやるのって初めてじゃね?

 って言うかそもそも植える前に撒いておくもんじゃなかったっけ、これ?なんだったら消石灰にしなきゃいけないから、水で溶かすとか必要だっけか。


 それにしたってなーんも分からない状態って大変だな。農業ギルドに実は肥料が売られますってなったらどうしよう……って思ったけど、単純にマネーパワーでごり押しするだけだったわ。

 

「やっぱ本職でもないし、やったことない事やるのが大変だが……それを楽しむのがゲームってもんか」


 ツナギ着て鍬振るって、石灰撒いて、水撒いて、とりあえず作物が出来ますって感じの行為しかやってないわけで、あとの成果は収穫してみてだな。

 ファーマーってとにかく時間が必要になる場合が多いよね、牧場経営のゲームでも高回転の何度も収穫できる作物で稼ぎまくるのが鉄板の攻略方法だし、時間と初期投資を掛けた割にそんなに稼げるって訳でもない場合も多いんだよな。


「今は数で兎に角押してるから収支はプラスにはなってるけど、もうちょっと効率のいい稼ぎとかあるんでねーかな」


 ひたすらジャガイモ農家やるのもなあ……いや、まあ、金銭効率はかなりいいんだよ、100Zで苗買って5個分合わせて250Zで売れるから1.5倍になるし、そこまで時間も掛からないから数で攻められるけど、元価格が低いから結局数なんだよなあ。


『そういや、商人系の職ってショップの売値や買値に補正掛かる奴ってないの?』

『聞いた事はないけど、あるんじゃね?』

『しらなーい』


 まあ、バトルジャンキーが知らないのは知ってた、トカゲも鍛冶クランで繋がりがあったと思ったけど、そうでもなかった。一番の情報通でもある髭親父は反応なし。

 こういう時に限って頼りにならない構成員が多いな、もう。


『うちのクランって情報通がいないなあ……やっぱりWiki見るなりした方が良いんかね』

『次の引き抜きは情報クランの奴でも狙うのか』

『いやー、連中はクランで抱えてる情報とかネットワークの強みだから引き抜いてもねえ……集団で強いからって1人引き抜いても弱いなら意味ないじゃん』

『流石アカメちゃん、無意識ディスりぃ』


 そんな事はない、わけではないか。情報クランに関してはとにかく人数で情報網をカバーしているわけで、その人数のうち1人を抜いた所で、そいつがクランの全情報を持っている訳じゃないから、やるなら丸ごとか大量に引き込むしか有効じゃない。

 しかもその大人数を私がカバーしきれるのかって言うと……カバーできるけど、管理するのめんどくさいからやりたくない。

 それにどれくらいの規模がいるかは知らんし、ゲームWiki立ちあげてやれるくらいには情報網は広くて多いからそのうちの1人抜いた所でって話。


『海岸の砂を1つ掬ったからってそれで全部の砂を手に入れたわけじゃないでそ』


 それくらい無駄な事に労力を費やしたくないので、あいつらは金で使うってのが一番正しいって事よ。そういえば舎弟と砂丘は元気かな、しばらくあいつらの顔見てないわ。


『金稼いでギルドレベルあげるのに農作業してるわけだけど、待ちが長いのがなぁ……かといってちょーっとダンジョン行ったり回ったりしたらそれはそれで高回転出来ないし、いちいち戻るの大変だし』

『文句ばっかり言ってないでやったらどうだ』

『まー、そうなんだけどねー……街中巡ってギルド探すわ』


 これならそこまで遠出しなくてもいいから、時間を潰すのには最適じゃね?エルスタンで見つけられなかったけど、ゼイテだったらあるかもしれん。

 



 そういう訳でゼイテの街中をトラッカー使いながら足跡と建物を見比べまわる時間。

 イベント終ってからあまりにもやることなさすぎじゃね……?二次職やサブ職を取得するって目標もあったけど、レベリングってどこでやりゃいいんだろう。

 銃撃でほぼ一撃で倒せるって条件で経験値の美味しい相手が理想なのだが、そんな奴いるんかね。銃格闘と銃剣で立ちまわるのもいいんだが、それだと火力が低い上に自分の耐久力が無さすぎるから戦闘時間が長くなるから、効率が悪い。逆に銃撃だけだと、コスパがくっそ悪い。

 やっぱり先にガンナーギルド見つけて銃弾を買えるようになる方が良いってなるんだよなあ……1発1,000Zくらいだったらジャガイモ金策1回で100発くらいは買えるし。

 

「何かしらのヒントが欲しいけど……まさか二次職解禁しないとギルドも出現して来ないって可能性もあるか?」


 おしゃべり忍者の奴がそんな話も軽くしてた覚えがあるな。ってか私以外のガンナーってどういう分布になってるかもわからんのよね。

 あのピンク髪はまだ始めたてだったし、最初期に百人程いたのは一度全滅して私だけになって、今またちらほら人口が増えてるわけだけど、二次に到達したのがいるのかな。

 現実的にみたら初期職で戦えるものにして、ある程度の地盤を固めて、二次でガンナーを選ぶのが良いんだろうけど……専用スキルとSPの関係があるから二次までスキル無しって厳しいか。

 つまり何かしらの影響で初期職で選び直したか、出遅れ組の方が多いってことなら、ある程度の所で銃弾が切れるし、銃の開発できてないなら無理ゲーだよなあ。

 

「うーぬ、やっぱり先にレベル上げた方がいいんだろうけど、金策もやりたいし農業ギルドのレベルも上げたい……お手伝いNPCみたいなものも欲しい、銃弾の量産もしたい、銃の開発もしたい、アタッチメントの開発もしたい、機械工作もしたい、あー、庭の拡張と地下室の拡張はしなきゃならんし……」


 指折り数えながらあれこれ唸り、その間にも足跡見て、建物見て、マップにチェック入れて、メモ帳に書き込んで……マルチタスクにも程があんぞ。


『やっぱり、ちょっと手伝ってくんね?』

『諦めるの早くないか』

『戦闘以外何も出来ないけどぉー?』

『金属木工製品くらいなら出来るけど』


 うん、やっぱり頼りになるわ、うちの構成員。

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