4章

99話 だから廃人

 廃人が過ぎると私生活がダメになっていく。

 まあ何でもかんでもと言うか、ちゃんとした生活をしたうえでの廃人生活ってのが理想的になる。

 とか言いながらT2Wを開始してからゴミ投げに行くとき以外はずっと家の中に引きこもったうえで生活している私が言う事ではないのだが。

 ログアウト時にはいつも通りのストレッチと食事にトイレに風呂に着替え。部屋の掃除と洗濯をして、ベッドのよれたのも直していく。

 幾ら私が超絶廃人プレイを出来るとはいえ、ちゃんとした生活が出来ているって条件での話になるからこの辺りは必然。


「ログアウトしたのが4時ってのはやっぱ後できつくなるわ……歳か」


 すっかり日が昇り11時少し過ぎになった時計を見ながら恒例の家事を済ませた上でふいーっと伸び。こういうタイミングで友達からメールやら電話が着て「あんたもT2Wやってるの?」とか「え、あのキャラあんただったんだ!」っていう展開には一切ならない。流石にそれは小説とかアニメの見過ぎだよ。


「ちょっと別ゲーやってからT2Wやるかなあ」


 ほぼソロゲー状態のT2Wだが、一応あれでもMMOだから周りを気にしないと行けないって所がある。って言うか銃弾作った段階で1つ区切りが付いてしまった感がある。別に飽きたとかつまらないと言う訳ではなく、どのゲームをやっても一通りの所まで来ると急激な「飽き」がくる。勿論クリアまではきっちりやるが、1~2日開けたくなる。


「昔ほどできなくなったジャンルもあるのよね」


 前はPCでがっつりやってたけど、今じゃコンシューマー機も性能が上がったし、わざわざPC立ち上げてゲームも専売しているのくらいしかやってないな。今も昔もまともにPCでゲームやるってなったら最低でも10万とかだし、それにソフトとかマウスとかまあ色々含めて15万くらいは吹っ飛ぶしなあ。コンシューマーじゃ5万もあればその手間とか含めて全部間に合うってのもでかい。

 

「揃えるまでが高いし、中を交換するだけでコンシューマー機一本買えるんだからそら廃れるわ」


 MODとかで遊びたいってのはPCゲーするしかないけど、そこまでいれたい!ってものもないし?


「たまにはFPSとかTPSでもやるか」


 ゲーム機の置いてある所に座り、ゲームを起動していく。T2Wの時に久々にマニュアルとか読み込んだけど、今じゃWebマニュアルが基本だし、なんならディスクとパッケージすら必要なくなってるのも時代か。まあDL版って値下げしないから数年前のソフトでも定価で売るとかアホな事ずーっとするけど。


「少人数チーム戦が流行って、大人数チーム戦、小規模チームが盛り返してからバトロワ物になったり、忙しいジャンルよね。時代背景もバラバラだし」


 鼻歌交じりにゲームを起動し、ソフトを立ち上げる。

 そういえばT2Wって対人戦がないけど妥当な判断よね。VRMMOっていうかMMOの対人ってどうしてもバランスとるのが難しいって言うか無理。あくまでもこういうゲームで対人バランスは考慮してませんって上での対人模擬戦とかならまだいいけど。それ主体になるとどうしても先にやってるとか装備が揃っているプレイヤーの方が圧倒的に強いし、対抗できる頃にはゲーム自体が廃れてるとかPKが嫌になってゲームをやめていくって最悪の展開になる。

 

「対人ってキャラの強弱はあるとしても公平性がないと面白くないのよねー」


 長い事シリーズの出ているFPSのゲーム画面を見ながらそんな事を思いつつ対人戦を続ける。まともなMMOでの対人バランス取れた物って聞いた事ないな。


「まあ、そんなに対人やりたきゃその手のゲームやりゃいいのに……って言ったらやんない訳だけど」


 無機質にゲームの画面をみながらキルを稼いでいく。



 そうしてたまに味方に暴言を吐き、イライラしながらも数戦やってから電源を落として一息。


「よーし、良い感じに荒んだ。T2Wいって癒されよう」


 コントローラーやらなんやらを片付けてからベッドにぼふっと横になってからHMDを装着。

 これまたいつもの様にログインをしていく。





『To The World Roadへようこそ』

 

 こっちも無機質なアナウンスを聞きながらログイン完了。光の輪を出しながらベンチの少し横の誰もいない所にリスポンする。


「毎回毎回、やる事リストをリアル編集でやってたけど、ゲーム内でやった方が結局時間的に節約になるってのにまさか5日も掛かるとは思わなかったけど」


 あれから1時間くらいゲームをし、リアルで13時過ぎゲーム内時間1/22の4時。やっぱり軽くゲームしたらすぐ時間経つわ。

 さて、これからどうするかっていう話になるわけだが、とりあえず火薬の売買入れるためにエルスタンに行くのは確定だが。


「実は急務な事はないし、ログインするたびに各材料を集めまわるってのが日課になるくらいなんだよなあ……とりあえず目標としてはこんな所か」


 ログアウト時の様にリストとメモ帳を開いて記載していくが、あの機能って基本的にログアウトが長い時にやるもんだよな。ちょっとやるくらいなこっちでやった方が圧倒的に便利だよ、ほんと。


1.アルコール量産

→酒の製造からアルコール抽出

 →酒製造の為の畑確保

  →金策

 

2.マイハウス購入

→場所と大きさを確認

 →金策は火薬?


 うん、まあ、今のところこれくらいしか思いつかない。

 って言うか、此処までくるのが大変だった反動ですごい簡単に思えるって。


「ゲーム内資金って何でもそうだけど無いと何にもできないわ」


 そういえば南エリアの切り替えで500Z(ゼニー)持ってかれるのは触れたが、戻すのには金がかからない。行きを払って帰りはタダってこと。

 ともかくゼイテからエルスタンに戻るわけだが、道中は余計な事をしないでさっさと走って通り抜ける。暗闇洞窟によってロックラックしばいて硝石もうちょっと稼ごうかと思ったが、それは後でいいや。



「やっぱり転移代くらいは持っておくって大事」


 徒歩でエルスタンに戻ってから一息、一応リスポン地点を更新。エリア直近の所に設定しておくのも今後気を付けておかないと。

 レベルが高くなった分、多少流れ弾を貰っても平気にはなったが、やられたらやられたで時間を食うしイラっとする。単純に移動時間も掛かるのもあるから最低でも1万くらい常に維持した方がいいのか。

 なんか改めてこのゲームをしっかりやるべき所を見つけているのは良い事だ、やっぱ一回荒んだ方がいいね。


「さーてと、とりあえず火薬作って売りに出すか」


 露店街に行く途中に持ってるアイテムで黒色火薬を生成……しようと思ったけど、木炭ないわ。そういえば褐色火薬ってのも作ろうとかって計画もちょろっとあったな。

 

 とりあえず手持ちの火薬40g分を露店に入れて1g/3万で値段設定。この間の様に裏路地……ではなく、露店街ちょい手前くらいに設営しておく。

 露店自体は街のエリアであればどこでも設置できるのだが、ここでまとまってるのはユーザールールみたいなものだ。そういえば対人ゲーでも日本は紳士ルールみたいなことで強すぎるスキルだったりキャラだったり使うのを咎めるのがいるけど、負け犬の遠吠えが酷いよな、あれ。


「と、露店はしばらくこのままで放置しておいて、家と畑の買える条件を改めてギルドで聞いてくるか」


 とりあえず困ったことがあれば冒険者ギルド。

 ヘルプとかチュートリアルが受けられる、メタ的な部分にも対応してくれるのでここで情報集めよう。

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