93話 リーチ一発ドラ3
辰砂、取得するときにも言っていたが硫黄と水銀の化合物だ。
水銀を取り出すのも簡単、加熱すればいいだけだから、あっという間に出来上がる。
「ああ、でも硫黄の取り出し方まではしらんなあ……二酸化硫黄だっけか、出てくるの」
でもここから窒素と反応させたら硫酸が取れたりするけど、そもそもそんな事まで取れるわけがない。そもそも気体を保存しておく容器が無いから無理な訳だし?
「って言うか、そもそも水銀も一旦冷却掛けないとダメだったかな?」
あれから何度も採掘を繰り返して辰砂を10個分回収できたが、まさか4~6合目を往復するとは……思ってた。そりゃそうだろ、だってレアアイテムだもん、私にはそのレアアイテムを引く運はないのでひたすら試行回数を増やすだけでしかない。てかもう何回このくだり言ってんだよ。
「とりあえず実験できる数はあるから試作していくかなあ……街戻ればいいけど、このままやっちまうか」
物陰に隠れて錬金窯を取り出す。とりあえず過熱処理と冷却処理を行えば多分水銀は取れる。この過熱した時の煙を撒いたらモンスター大量に倒せるんじゃね?
って言うかよくよく考えたらプレイヤーもいないなら爆破して採掘するのってありだよな。問題はその爆破するために必要な火薬の余裕がないっていうだけだが。
「地味にHPとMPも削れて使ってるし、やばそうなラインまではここでやって実地試験までするか」
とりあえず錬金のメニューを開いて辰砂の処理を決めていく。さっきも言った通り、熱して酸素と反応させて水銀と二酸化硫黄にしてから冷却して水銀を抽出するのがざっくりとしたものになる。勿論だけど、専用機材も無ければ余計な処理とかはないのでゲーム処理でさくっと作成できる。
「楽に作れるのはいいね、と言うかよくよく考えるとガンナーってそこまで不遇ではない気がしてきた」
でもまあ銃弾切れたら銃剣と銃格闘で立ち回らないといけないし、スキル解放するまで必死こいて殴り合いしなきゃならんし、新しい銃を作るしか最初は選択肢が無いし、買える所分からないし、そもそも火薬の製法とか材料を調べたり知っていないとだめだし、鍛冶と木工上げなきゃいけないから生産も手を出さざるを得ないし。
「いや、何言ってんだ私」
何より諦めないって心が無いと速攻で心へし折れるわ。色んなゲームで縛りプレイとかしてきたけどMMOで縛りプレイって……いや、あるわ。攻撃速度と回避率だけガンガン上げまくってドーピングしまくったうえで、T2WでおけるA極型とかやってた。まあそんな自発の縛りとか極型じゃなくてやらざるを得ないという感じなのが現状のガンナーだけど。
「その苦労ももう少しで報われるんだけどさ」
いつもの完成したSEを聞くと錬金窯に残ったアイテムを回収する。凄いな錬金術、加熱も冷却もしてくれるし、勝手に容器も作ってくれるって。
名称:水銀
詳細:原子番号80 流体金属 実は飲んでも死なない
「よーし、出来た……で、ここからえーっと……おっと」
錬金窯のアイテムを手に入れてから潜伏しなおし、トラッカーを発動する。窯を使っていた地点の少し横を馬が跳ねて通っていく。そういえばまだあの馬とはガチ戦闘してないな。する必要も今の所ないし、ほったらかしにしているというだけだが。
「うざったいのと高レベルだから経験値的にはうまいだろうけど、流石に1.5倍もレベル差ある相手には喧嘩吹っ掛けれないわ」
あー、あれだ、めんどくささで言ったらモンスターを狩るゲームの奴にいた雷落とす奴。硬いわ速いわめんどくさいわの3拍子揃ったあいつ、あれと一緒だ。とりあえず攻撃を貰った事はないので多分特殊アクティブかノンアクティブのはず。
「と言うか、もうちょっと落ち着いた所で錬金するべきだって言われそうだけど」
しばらく潜伏し、敵の影が辺りにいないことを確認してから再度メニューを開いて錬金を進める。
このまま硝石と水銀を混ぜ合わせて、硝酸水銀に化合、そこにアルコールを追加して混ぜ混ぜ、あれやこれはゲーム処理にお任せしていくわけだが、こんな所まで準備しているってのはある意味でガンナー優遇されてね?
「で、あっちゅうまに完成っと」
さくさくインスタント的に出来るのってマジ便利、レシピも分かったから今後はさくっと作れるだろう。
名称:雷酸水銀×10g
詳細:別名雷汞、起爆薬として使われる物
10gか、雷管としてはそこまで大量に使う物でもないし、1gで十分な起爆薬としては使えるだろう。一応実験して、それから雷管として使うのがいいか。……あれ、ちょっと待てよ、私何かものすごい大事な事忘れている気がする。弾はある、薬莢も火薬も持っているし、起爆薬もたった今作れたわけだから問題ないよな?
「まあ、ちょっと試してみるか」
そういえば最近だと忍者ゲーで雷汞とかあったな、あの手のゲームはストレスたまるからあんまりやらないわけだけど。
とにかく出来上がった雷酸水銀1gと合わせて黒色火薬3gを置いて近くにあった手頃な石をもってそれにぶつける。
「やばい、これ感動する」
「ボン」っと音をさせながら雷酸水銀と黒色火薬が爆ぜる。いつもの硝煙を爆ぜた部分から燻らせながらその様子を見つめて感動に浸る……暇はねえ、とりあえず結構な音をさせたから場所を移らないと。
音を聞いたのか、炸裂させた地点にオークがわらわらやってくるのを見つつ、にやにやを抑えられないままに先に進んで行く。
「やっぱり音の問題が出てくるのよなあ……相手が出てくる前に全部倒し続けるって脳筋プレイも出来るっちゃ出来るけど……すげえ赤字出るんだろうな」
それにしてもさっきからずっと何かが引っかかっている。材料自体は全部揃ってるし、後は組み合わせるだけだから試作してぶっ放すだけだよな?
ウサ銃復帰させてライフル、ショットガン、ハンドガンの構成が出来る……前にか。
「ああ、そうか、ガンベルトとか作らないとダメだった」
このままじゃガンベルトって言うかインベントリから直接出していちいち切り替えなきゃいけないっていうくっそめんどくさい事が起きるじゃないか。ついでに言えば銃弾をベルトにマウント出来る様にするのもいるのか。
いちいちポーチから取り出して何かするってダサいし、装填スキルあるとしてもかなりもたつくだろうからその辺を考えてい置くのを忘れていたな。
「どの映画だったかな、リボルバーのシリンダーでガンベルトの銃弾をなぞりながら装填する奴、ああいうのすげえかっこいいからやりたいんだけど」
撃ちきったリボルバーのシリンダーを出した状態で「チャリリリリ」って入れていってリロードを完了させたり、弾に弾を当てて押し込んで倒すとかビジュアル的に凄いカッコいい奴。
「まあ映画自体は後半20分までいまいちだったけど」
こうなってくると曲芸感が強いけど、銃のリロードと曲芸って普通に映えるからしょうがないよね。ちょっとキワモノだと胸リロードとか、落ちてくる銃弾を攫う様にしてリロードするとか、コッキングレバーで回転させて撃つとかもあるし、色々と夢は広がる。
「しょうがないガンベルト此処で作るか……」
ほぼ常にトラッカーを使い続けているので減っているMPを下級ポーションで回復して、次のトラッカーの準備をしながら細工のメニューを開いていく時に手が止まる。
「あ……ちげえわ……雷管があっても入れる容器作ってねえんだ」
そうだよね、粉状のものを固めて叩いたら銃が壊れるだろうし、そもそも雷管って金属のカップに入れてそれをはめ込んで完成なんだから、このままじゃ粉垂れ流しになるだけじゃん。
「鉄、全部使い切らなくて良かった」
銃弾作るのにもうちょっと掛かるわ、これ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます