78話 ドラゴン肉

 そりゃあもう強行軍よ。

 今更東エリア2の奴に苦戦する理由もなくなったし、採掘中にちょっと攻撃を貰おうが反撃位は余裕だ。問題なく硫黄は回収完了、ついでにくず鉄と銅鉱石もそれなりな数を採掘出来た。

 で、粛々とエルスタンに帰還して暗闇洞窟……の前に松明が無いので10本追加購入。

 購入が終わり次第、さっさと暗闇洞窟に行ってロックラック狩り、勿論銃弾は使わないのでがんがんと殴り蹴りながら泥仕合を展開して硝石5個を入手。

 そして北エリア2を突破して北エリア3に突入。正直なところ此処を突破すれば、第二の街まですぐだ。……と思いたいわけだが、所謂3周目のエリアになるので敵のレベルも高い。一周回るたびに2~3倍のレベルが高くなっていく感じだろうか。


エルスタン 北エリア3

Lv8 ブラッドバニー

Lv12 コボルト(剣)

Lv13 コボルト(斧)

Lv15 ケルブ

Lv20 ボーデンドラゴン



 うん、まあ、一番やばそうなのはLv20の奴だな。

 ドラゴンとは言えどういったドラゴンなのかはまだ分からないが、爬虫類系ではあるだろう。後分からないのはケルブと言うやつだな。どこぞのモンスターを狩るゲームじゃ鹿のようなのが近い名前だし、その線が強いか?何にせよ、兎以外はアクティブっぽいし、警戒しながら先に進んで行くのが吉か。

 とりあえず3g分の火薬とくず鉄玉は装填しておこう、不意打ち食らって死んで、死に戻りするのは勘弁願いたい。ちなみにリスポン位置も北エリア1、2の間に設定しなおした。2、3の間にはセーフティはないので死んだらそこまで戻ってまた同じ行程を踏んで戻らないと行けないのは時間の無駄だ。

 だからこそ、ここは一発で突破して第二の街にまで到達しておきたい。幸いな事に北エリア側にはボスはいないのでLv20の奴にさえ気を付けていれば大丈夫だ、きっと。


「って。思っていたわけだけど、私としては一度倒せるかどうかってポイントになるのよね」


 一応北に真っすぐ進んで行けば第二の街に行けるわけだが北だけはエリア3までしかない。多分だが20超えるのがボーダーになってるんだろう。他のエリアは4までいかないと次の所に行けないわけだが、北だけだと素材的にもレベリング的にも頭打ちになるので他エリアに行くのも必然的に必要になる。

 北さえ突破できればまあ装備も第二の街の物を買えるし、Z(ゼニー)の支払いで転移も出来る様になるっていうけど……あれ、デスペナ早々食らえないな。

 

「通用するかどうかってポイントだし、何よりも」


 ドラゴン肉って美味そうじゃん?


「そう言う訳で、ちょーっとだけガチってやるかな」


 目の前にいるボーデンドラゴン、4足歩行のドラゴンっていうかトカゲ、現実で言うコモドドラゴンみたいな感じの地べたに近い所でぺたぺたと歩くやつだけど、かなりガチな歩行速度じゃん。

 VRMMOってRPGではあるんだけど、基本的にはアクション要素が8割なんだよなあ。一定距離を取らないと攻撃食らい続けるとかそういうのもないし、思考速度の問題よね。ぺたぺた歩いてきたと思ったら土煙上げながらばたばた走ってきたよ。

 あんぐりと口を開けて私がいる所に「ばくん」と口を閉じる。硬い物同士がぶつかる音を響かせる。Lv20の通常モンスター扱いだけど、流石にあの攻撃はキャットスーツでも厳しくないか?

 がちんがちんと牙をぶつける音、硬質って言うか鉱質な音だな。


「んのっ、これでも食らってろっ!」


 4足歩行の相手は基本的に横に移動するのが弱い場合が多いので右によけ、すれ違いざまにくず鉄を口に放りこんでみる。うわっ、かみ砕いてる。げんこつ煎餅じゃねえんだぞ。

 鰐とかに近いなら、上に乗って口を押さえつけてやれば、開ける力が老人並みの握力だから封殺できるとは思うんだけど、予想以上に機敏だよ。Lv20って強いんだな避けて攻撃するときにはもう振り向いてくるから避けるのに手いっぱいだ。


「なんでもかんでも喧嘩売るってのはいけないなあ……」

 

 横っ飛びに避けてごろごろと転がってから向き直り冷静に息を吐き出してから引き金を絞る。までの間に突っ込んでくるから落ち着いて狙えやしない。銃剣カウンターも考えてみたが、流石にこっちのリーチが短すぎる。やっぱもう少し長い銃剣部分の装備も今後の課題……の前にこのぺたぺたドラゴンをどうするかの方が問題だけど。

 そうしてぺたぺたトカゲの攻撃を避け、強めに息を吐き出す。こういう素早い敵に対してはやっぱり長物のライフルは扱いにくいな。先込めでも短銃の一本や二本作っておくべきだったか。このまま走って第二の街まで走るのもありなんだがそれはそれで負けた気がするので無いな。


「結局いつもの様に強行になるんだろうけど、ねっ!」


 何度目のかの攻撃を回避してある程度の狙い、と言うか、腰だめ射撃する時の感覚に近い、大体の銃の向きでこの辺に当たるだろうというものだが。

 とにかくトカゲの噛みつきを必死こいて避け、いつもよりも雑に狙いを付けたら発砲。角度が浅かったのかくず鉄玉がそのまま横に反れて後ろの方の木に当たる。やっぱり腰撃ちは命中率が落ちすぎる。この辺も慣れておかないとだめっぽい。

 しかもカス当たりだから固定ダメージは入ってない。うん、新しい発見だな、直撃しないとダメで、しっかり着弾しないと行けないと言う事か。

 アクティブ装填は使えないので走りつつ、雑に火薬と玉を入れて先込めしながらも攻撃を避けるわけだが、やっぱり攻撃自体は細かく貰ってダメージが積み重ねっている。

 流石にイベントの時の様な大型の敵の一撃って訳ではないので、一発で10ダメージ以上貰うって事はないのだが、掠るだけで2ダメ、3ダメと食らい続けている。


「避けきれてないんだよなあ……AGI差か、私の反応速度か……後者かな、FPSも付いていけなくなってきたし」


 それでも並みの連中よりは立ち回れるのは経験差だろうなあ。自分の後ろでがちがちと歯がぶつかる音ってホラーゲームより怖いぞ。こういう時って飛び技とかなんか新体操的な動きとかしてみたくなるわ、ここで後ろに飛んで背面取ったりとかすげえかっこよくない?出来ないけど。


「んん、マジでそういう動き方してみたくなったよ!」


 直線の動きからきゅっと左側に飛んで、私の事を追い抜かしたところを狙って一撃。よーし、次はしっかり当たったぞ。全然反撃出来てないからダメージ与えてないな。

 っていうかこんなにばんばん音鳴らしてたら他の敵が来そうだからさっさと片付けないとこっちが危ない。

 高火力ではあるけど、音の問題もあるのか……先込め銃のサイレンサーって原理的に意味ないしなあ……そういえばサプレッサーとサイレンサーでどっちが良いんだ見たいな無意味な議論をする事多いよね。アイス買ってきて、いやこれラクトアイスだし?って突っ込む奴がいないわけだし。

 

 にしても、Lv20の相手って耐久力高いな。3発目を装填しつつ息を整えながら自分のステータスを確認する。HPが19、MPが10、これで誰か別の敵が来たらそれで詰みだな。

 Lv10の奴らがウサ銃で一発だったので単純計算でLV20でHP100以上か?プレイヤーサイドのHPが敵に対してかなり低いとか言われてたけど、防具の複数装備にAGIでの動きの補正、VRMMOならではの回避もあるから、意外と被弾率は少ないからとそこでバランスを取ったらしい。それじゃなきゃ受け防御なんて実装してないわな。


「とは言え、私が貴様に負ける要素なんて1個もねえ!」


 何度繰り返したか分からない追いかけっこをし、口を開けてきたであろうタイミングで振り返り、口内へと銃剣で突き。勿論掴んでる腕ごと噛まれてもろに10ダメージ。そのままぐりっと捻りを加えてさらに深く突きさしてからの銃撃。外側の鱗が硬くても内側が柔らかいのはどのゲームでも作品でも鉄板だろ。

 蛇とかトカゲ特有の「シャー」っという鳴き声と共に消失していくドラゴンを眺めながらすぐにポーションで回復。


「あー……疲れる……!


 すぐにパイプライフルを構えて周囲警戒、走り回って銃撃音させていたから他のアクティブ範囲に入ったと思ったが、特に問題ない。たまたま運が良かったのか、それとも道が外れたのかは分からないが、追加の敵はいないようだ。


「北に真っすぐだって言うのに疲れるわ」


 メニューからマップを開いてすぐに現在位置を確認。エリアの広さ的には色々ばたばた走り回ったおかげか半分より少し先にまで到達している。


「トラッカーで足跡見ながらってのも考えたけど、視認できない所にいたらそれはそれでアウトだし……SLvあげて敵自体を視認出来る様になったら使えるんだろうけど、取ったのは早計だったか」


 便利なのよ?特定モンスターの足跡さえ把握していれば追跡しやすいし、悪いスキルじゃないのだが、私自身が求めているレベルに達していないというのが大きい。

 

「あー、銃3丁も交換しないでSP増やしておくべきだったわ」


 またパイプライフルを構えて第二の街へと進んで行く。

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