30話 方向性

 クランから出てとりあえずまたどうしようかと考える。

 硝石は存在しているというのは確認できたし、木工、鍛冶は今後の課題と言うか大量生産での経験値稼ぎでのレベルアップが目標になる。スキル2枠に関してはとにかく生産していけばいい。ギャザラー関係に関してはひたすら回収していけばいいしで特にここでの問題はあまり考えられない。結局素材を回収し生産し、また素材を集めるというループを自前でやれば自然とレベルは上がるだろう。

 それと合わせてだが今後の事を考えてみれば金策に走ると言うのも悪くはない。

 今まで触れていなかったが、全部自作して自前で用意していたからこそ、あまり金を使わなかったというのもあるのだが、これからあの情報クランとの付き合いをするとなれば少なからず金は必要になる。あと忘れていたがガサツエルフに武器を頼むのもいいかもしれない、と思ったが、あいつの武器は私に致命的に合わないのを忘れていた。

 なら銃剣の「剣」も自作するか……それでも余計な回り道に……いや、悪くはない、結局鍛冶のレベルを上げるのであれば、鍛冶と採掘のレベリングをしつつ自己強化にも繋がっていく。ついでに言えば採掘へ行く途中でレベリングを進めておいて、SPをためていけば、先のエリアに行くための足掛かりにもなる。

 

「とりあえずもっかい整理しよう」


 

 HMDを外してログアウト。

 ベッドに腰かけ、伸びをしてから時計をちらりとみる。リアル時間で17時。ゲーム内時間で1/6の20時だ。

 廃人プレイと言っていたが、結構ログアウトしてデータ作って地道に進んでいる感じでどこが?と言われそうだが、ある意味で廃人プレイと言えば廃人プレイだ。


「んんー……夕食とお風呂済ませて徹夜するとして、もっかいやる事整理しないと……硝石のデータ、結構望み薄で考えていたし、全体像が見えたのも大きいなあ」


 考え込みながらちょっとペペロンチーノでも作ろうかと思って台所に進む。パスタソースでさっくりと思ったが、たまにはちゃんと自炊しよう。

 


 鍋で湯を沸かし、しっかりと塩水でパスタを7分間茹でる。その間にニンニクを細かく刻んで、ベーコンを薄切りに、玉ねぎも同じように切っておく。

 下準備が出来たらパスタの茹で加減を確認して茹で汁を少し残したままでパスタをあげる。


「オリーブオイルはけちけちしーない」


 フライパンにオリーブオイルを多めに入れて、温まった所でニンニク、ベーコン、玉ねぎを投入してじゃかじゃかと炒める。


「さくっと炒めてパスタと絡めてー」


 火が通ったら上げたパスタを炒めていた所に投入、ついでに茹で汁を入れて味を確認。ちょっと塩気が無いので軽く塩を入れて味の微調整。

 また少し絡めて炒めたら皿に移して完成。


「我ながらいい出来である」


 出来に満足しながらペペロンチーノを食べ、どうしようかなと考えていく。今まではとりあえずざっくりとやる事を羅列していたが、流石に効率が悪いと思った所が多かったので、今一度しっかりと計画を立てよう。

 とりあえず食べきって、皿洗いにシャワーを浴びて風呂も終わらせてからタブレットを開く。



「当面の目標と優先順位をどうするか、なのよねえ……硝石で狙っていくなら、自然硝石で乾燥地帯の方に行く訳だし、洞窟系なら蝙蝠とかいるダンジョンがベストかあ、あとは土間狙い」


 ネットの情報を調べつつざっくりとメモ帳に書いていく。


「硝石狙いのダンジョン攻略を考えれば私自身の強化も必要だから、ここでレベリングと装備整えるのも必要だし、鍛冶で銃剣用の剣を作ってレベルと武器の強化を併用して、上がるたびに銃身チャレンジってとこかな」


 とりあえず必要な事とか考えている事を文字にして書き起こしておく、整理するのと優先順位は後にしてとにかく書きまくる。

 

「そうなってくると一番優先度が低いのは木工かなあ……材料はすぐ取りに行けるし、なんならすぐその場で作りまくればレベルもあがるし、とにかく木材確保しておけば木炭量産も出来て錬金のレベルも上げれるから、伐採木工錬金は他が揃ってからでいいか」


 考え書き入れ、唇をタコの様に尖らせつつ整理をし始める。

 

「ああ、それでも防具の準備もいるのか……しばらく行かなきゃいけない東エリア2も慣れ始めてるとは言えボアとリスでガチるとすぐHP飛ぶし……他のエリアでの伐採素材も確認しないといけないし……」


 最優先事項はレベリングと鍛冶や防具作成での装備自前製作の自己強化として

 その準備をしながら採掘場所での安定戦闘化及び採掘と鍛冶を上げる

  →その為に鍛冶での銃「剣」部分の作成とレベリング

   レベリングとの平行による金策

   合わせて硫黄数も十分に確保

   →十分な装備とレベルを充実させて近場のダンジョン情報を聞いてのアタック、硝石探索

 硝石確保後、伐採錬金の木炭生産による錬金のレベリング

 →調合錬金の差の確認

 黒色火薬完成後、木工による銃床や細かい部分の作成によるレベリング

 →各パーツの試作、組み立て、先込め銃の完成


「書いてて頭痛くなってきた、頭痛が痛いわ」


 そういえば詳しくこうやって書き出したのは初めてだったかもしれない。って言うか此処までの道のりを考えてバランス調整したのだろうか……?

 火縄銃もβで存在しているのは確認できていないし、そもそも作れるかどうかが分からないので、そこも博打なような気もする。

 スタッフの作りこみがどこまでやっているのか分からないのがネックだが、硫黄と木炭と硝石が見つかっているし、火薬は多分作れるし、職業としてガンナーが存在しているのに銃弾は非売品と書いてあるからと言う部分もあるが。

 ちょっと思いついた考察だが、多分高火力高命中でのごり押しでは先に進めさせないという運営側のメッセージなのじゃないかと思う。

 

「でも銃推しのスタッフってプロデューサーかディレクターだったから、強い代わりの妥協としてこうなったっぽいけど」


 まあ結局はスタッフとか運営に聞いてみないと分からないので真相は分からないが。


「楽しんでるっちゃ楽しんでるから否定しきれないのよねぇ」


 タブレットに入れたさっきのリストとメモ帳をいつも通りHMDに落とし込んでいく。

 

「よし、今のうち掃除機かけとこ」


 読み込ませている間に寝ているベッドやら部屋の掃除をし、ログアウト中恒例の家事掃除を済ませてしっかりと綺麗にしてから再ログイン。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る