21話 進歩

「んー、東エリア2か、前に来た時にちらっと反応した採掘ポイントがあるから、そっちを目標としながらしばらくこことエリア2行ったり来たりでレベリングもありかな」


 いくら銃剣のレベルが上がったからと言ってもそこまでステータスが強化されていないわけだし。無茶すりゃすぐに死ぬ、っていうか通用しないんじゃないか?って思うくらいには勝ち目も敵の情報も少ない。


 改めて東エリア2の敵だが、問題になるのはLv8の髑髏リスだ。以前来た時には骨投げとかみつき攻撃の2パターンを繰り出してきた。つまりアクティブかつ特殊攻撃を繰り出してくる新しいモンスターと言う分類だ。とは言え何度も言っているが、もうトッププレイヤーは第四の街まで攻略したらしいし、今更こんな低レベルモンスター相手に苦戦しているのも、そうそういないだろうけど。

 もう一体の高レベル、一番強いLv10のワイルドボアは突進攻撃しか見ていないが、ガチで戦えば確かにきつい相手になるだろうが、今の所逃げ一択だし、攻撃は避けさえできれば難しくない。

 特殊アクティブの食人花と蜂は手を出さなければ問題ないのも変わらず。

 

 此処からは髑髏リスの対処を確立させつつ、採掘ポイントで死なずに硫黄を掘り当てる。何、生き延びるとかそういう事をしてた時に比べれば楽さ。必死こいて逃げなくてもどうにか太刀打ち……できるのかわからんけどやるしかない。

 レベル差はあるが死んでも安い、それに連戦しまくるほどモンスターが集中しているという事もないので、ここに来た時と同じように戦っては休んでを繰り返していく。前回来た時はまともに戦闘が出来なかったから戦闘状態で逃げ回り、囲まれてやられたのが原因だったので、状況は変わってくるはず。



「さーて、何回死ぬかな」


 今このT2Wの中で一番デスペナを軽く見ているのは自信をもって私だと言える。まあ、そうそうこんな事にならんけどさ。とりあえず腹ごなしにいつものMREをむしゃついて満腹度を回復させておく。これを食べる事でHP減るんじゃないのかって思うくらいには相変わらず不味い。完全に投げ売りされていたプレイヤー産の物を買ったが、結局味も効果も変わらないので、経験値稼ぎの大量生産だったんだろう。なんだよこの産業廃棄物、もうちょっとアレンジしたら経験値稼げたんじゃないのか。


「それじゃあ、様子見の第一回戦かしらねえ」


 東エリア2、そこまで混みあっていない森を抜けて北東側の丘陵地帯へと進んで行く、それで森の方に中心にいるのが髑髏リス、だからこそここを突破することが第一の試練になる。

 

 そういうわけで第一回戦VS髑髏リス

 相手の生態やパターンを知る事で、勝率を上げ、確実に倒せる方法を編み出さないといけないので、しばらくは負け戦闘ばかりになるだろうと覚悟はしている。

 まず最初はいつも通りの銃剣を構え、森の中をじりじりと進んで行く。アクティブモンスターなので相手の感知範囲に入り、此方を認識すれば攻撃を開始する。なら常に受け防御できる状態で、相手の攻撃を一回受けての反撃。ノンアクティブ系のモンスターにいつもやっていることをやり返されるだけさ。


「まあ、そう思っていたんだけどさあ」


 飛んでくる骨を弾いて投げられた方向を確認すると、木の上にいるリスを視認してもう一度構えなおして様子を見る。今回たまたま受ける事はできたが、多分次は無理だと思う。しかも結構なダメージ貰ってる。直撃でもないのに5ダメージ、やっぱり防具かっときゃ良かった。


「いった……!直撃ダメージなんて確認したくないってのに……!」


 木から飛び降りて着地してくるのに合わせ、捻りを入れた突き攻撃を繰り出し、ざりっと毛の刈れる音をさせつつ直撃とまではいかないが一撃当てる。やっぱりレベルが高いだけあって防具無しなのが大分効いている。せめて今のかつかつ状態で装備できる布防具も欲しかった。

 って後悔している間に二撃目が飛んでくる。とりあえずかみつきでとびかかってくるのは既に他のリスで予習済み。バックステップから、着地狙いでもう一度突きを繰り出しカウンターのように攻撃を繰り出し、今度はしっかりと胴体に攻撃がヒットする。多少なりとHPを削れてるのかさっきよりも鳴き声が煩くなっている。

 素早く銃剣二回振り回して連続攻撃とかやりたいけど、重量があるし振り回すのも大変なので攻防一回ずつというのも足を引っ張っている感じ。二連続突けるのは別スキルがいるだろうし、そもそも振り回して銃剣って使うもんでもないし!


「ぶはっ、きつぅ…!もうちょいレベル上げておけば良かった!」


 五度目の攻防を済ませ、またとびかかってくる攻撃に合わせてさんざんテンプレと化した攻撃を繰り出したところでやっとポリゴン状になり消滅していく。結局一体倒すのに受け防御だけで三回も食らってしまった。これだけで22ポイントもHPを持っていかれた。

 ダメージ幅が若干あるのは単純にちゃんと受け防御が出来なかっただけなのでしっかり受けた所でも最低でも5ダメージ貰う。2回は回避できたので、これならまだ突破しやすい。

 また一つ気が付いたのが、開幕最初の攻撃は骨を投げてくるので確定していて、その後は普通のリスと同じようにかみつき攻撃を繰り出してくる。攻撃パターンを見つけただけでも収穫だがとりあえず倒せる。この間の骨を投げられまくったのは何回もリスに見つかって初撃の骨を投げられたという事になる。

 それにしても基本攻撃が北エリア1にいるリスと一緒で本当に良かった。あそこで諦めずに銃剣使ってて本当に良かった。


「回復中に見つかって攻撃貰わなければいいんだけど……」


 木の根元の茂みにひっそりと隠れるようにし、じっとしてHPの回復を待つ。座って休憩すればHPはゆっくりと回復するので、またリスが喧嘩を売ってこなければ戦えるはず。ついでにボアが気が付いて突っ込んでこなければ。……しばらくじっと石の様に潜み9割程回復した所で移動を開始する。やっぱりレベル差と防具の有無のせいで回復時間と戦闘時間を足しても移動距離に釣り合っていない現状が厳しい。

 ここは素直に安全地帯の方へと戻り、一旦体勢を整える。ここで無理して突っ込んで行ってもろくなことがないし、レベリングにもなるし、悪い事はない。……はず。


「ふー……一応ボアともガチっとくか」


 とりあえずリスに関しては初撃の骨、あとはいつも通りで対処できると思う。不意打ちで当てられるとバランスを崩して転倒したりとかダメージが増えたりするので、索敵しながら受ける事が出来る前提になるが。

 

 「突進に合わせて銃剣突き出したらダメージ倍加とかカウンター判定取れるんだろうか…流石に死ぬかもしれないのにやるのは博打すぎるけど」


 いくら軽くダメージを負った時に食らったとは言え、吹き飛んでさらに叩きつけられたのを考えると、よし、やってやろうって気持ちはそんなに沸いてこない。やるとしたらレベル上がった直後だけど。

 

「皮系は確か細工だったかな……防具まで自作ってなると流石に手が回んないぞ」


 金属系の防具ではないので勿論鍛冶ではないので、持っていない2枠目のスキル群になる。道のりが遠回り過ぎるよ。

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