4話 強制縛りプレイ
『To The World Roadへようこそ』
先程の装着できないショックで一旦ログアウトして風呂と飯を済ませてからログイン。
まあくよくよした所でどうにもならないので、気持ちを切り替える。これどのゲームでも結構大事。
「に、してもどうにかならないかな……職業ガンナーの特性ってなんだっけか」
ウィンドウを開き、データベースというタグを開く。
これ、運営が公式で実装しているもので、判明している物に対しては共通でプレイヤーが見られる。わかりやすく言うと公式でやってる攻略wiki。とりあえずガンナーのページを開いて確認しつつ、減ってきた満腹度を回復するためにレーションを貪る。
まずいわー、もそもそしてて味が微妙、レーションってもっとおいしいの増えてるじゃん、なんだよ『MRE』じゃねえんだぞ……レーション3つで60%分の満腹度を回復する。死に戻りするより苦痛。
目つきも悪いのにさらに苦痛に歪んだ顔をするわけで、私の近くにいたプレイヤーが数歩距離を取った。そんなに怖いか、私。そんな事を思っていたらガンナーのページたどり着く
名称:ガンナー
特性:特殊武器種『銃』を使用可能。他の武器種を使用時に大幅な弱体補正。銃弾の自作、銃の自作も可能。『銃』においてのカスタマイズはガンナー以外では基本不可。
これだけだ。はっきり言ってシンプル過ぎて逆に恐ろしい。つまり今の私はナイフ一本ですら正常に振るえない貧弱ちゃん。だって手に取ってナイフの具合確かめるだけですげえ疲れるし、この特性結構きつくない?そう思いつつ画面をスクロールしていくと続きがあった。
その他:銃の扱いに長けてる、それ以外はからっきし。超ハイリスクハイリターン、いえーい!ばんばーん!
最初の2時間だけだったよ、そのテンションを維持できたの!てか銃ってカテゴリーは特殊扱いだった。でも銃を使ってるのに銃で殴るのには大幅に弱体化したのは何故?と言う話になるわけで。
考えられるのは正しい使い方をしてないから、と言うのと。銃で打撃できるスキルが他にあるかもしれないという事。ガンカタとかあるんかな、これ。
スキルも今の所新しいものを取得できないし、スキルツリーの解放条件は行動とかで解禁されるというのはβで見たが、そのあたりも特に増えていない。
『M2ラビットにナイフを装備しますか』
『M2ラビットのアタッチメントが不足しています』
考え事をしながら付属品をどうにか装備できないか連打してる。私このゲームしてから連打ばっかりしてない?アタッチメントが不足してるという事だから、どうにか銃につける事ができれば良いはず。縄とかで括ってみるか。
数分後、道具屋で購入した縄を持ち、またギルド近くのベンチに座りながら愛銃になりかけてるM2ラビット、ナイフ、縄を持ちあれこれと試行錯誤、縛るだけでもずれたり滑ったりでうまい事できない。いくら知識があったとしてもスキル前提のカスタムと言う事だろうか。モンスターも倒さず、序盤でアイテム弄りまくってるの本当に私だけじゃないのか、これ。傍から見たら完全に怪しい奴だし。
しばらく銃身と縄を括りつけようとぐるぐると弄りまわしていると、ピコンとアナウンスが流れる。
『カスタマイズのスキルがアンロックされました』
「もう戦闘外のスキル出てきたよ」
まあ、速攻で取得だよね、3ポイント使ったけど。
名前:アカメ 種族:ドラゴニアン
職業:ガンナー
基本Lv:5 職業Lv:3
HP:26/26 MP:13/13
STR:5 AGI:12 VIT:2
DEX:11 INT:2 RES:2
SP残:7
【スキル】
二度撃ちLv1 装填Lv2 調合Lv1 カスタマイズLv1
【装備】
武器:M2ラビット(残弾0)×1
その他:銃弾×0 ナイフ×1 縄×1
【持ち物】
レーション×17
HP下級ポーション×10 MP下級ポーション×10
動物の皮×13
所持金:800Z
状態:無し 満腹度99%
銃弾切れただけでここまで苦戦するとは思わなかった、やっぱり銃自体が強力だからその分弱くしてバランスを取ってるらしいが…でもよくよく考えれば『特殊』武器なんだから、それに伴うデメリットも理解はできる、ゲームとしてね。
そこら中に銃弾が転がっているっていうのも言われてみればおかしい話だし、日本だってアメリカだってしっかりとした規制の上で銃弾が買えるんだから、正しいと言えば正しいのだろうか。
『M2ラビットをカスタマイズしますか?』
とりあえず新しいスキルはアクティブとパッシブの二つ効果があるみたい。具体的に言えば自分が思った通りに形になる程度にカスタムが可能かどうか確認でき、それを実行するかどうか。具体的に言えば「こうやって縄を巻けば緩まない」と言うのを理解できるようになると言った感じ
システム音声が流れるのは、このカスタマイズでいいですか?と言う最終確認なのでカスタムミスしたら自己責任。
そうして自らカスタマイズし、ゲーム時間10分程度たった後にようやくカスタムが完成
名前:カスタムM2ラビット 武器種:長銃
必要ステータス:STR5 DEX5
攻撃力:+15 命中:+20
効果:セミオート 命中時固定ダメージ50 装弾数5発
付属品:ナイフ(効果:攻撃力+3 命中+5 固定ダメージ無効 装弾数∞発 一定確率で破損)
詳細:M2ラビットをカスタマイズした物
「んー、なる程ね、アタッチメントがあればカスタマイズのスキルがいらないとか、効果の違いが出るのかな……システム的にがっちりついてるし、戦闘中の付け外しができないとかそういう弊害かしら」
つまり「装備品に装備出来るのがアタッチメント」「装備品に直接干渉するのがカスタム」なんだろう。だから最初の『M2ラビットにナイフを「装備」しますか』と言われたわけ。そりゃあ装備できる箇所がないんだから装備できるわけがないよね。やはり運営はこの縛りを見越していた。
そんなわけで出来上がった、ナイフを括りつけたM2ラビットを確認しつつ、具合を確かめる。スキル効果なのかがっちりと付いてるし、ちょっとやそっとで取れない様になっている。
「とりあえず試し斬りするかな」
もう一度北エリアに戻る。あのクソ鼠を倒すためにだ。っていうかLv5にもなってLv1のモンスターに倒されるって貧弱にもほどがあるよ、私。
そういうわけで北エリアのラットと対峙している。もう3回も死んでるし、そろそろデスペナルティを食らうと思う。銃剣になったM2ラビットを槍の様に構えてじりじりと近寄る。っていうかボスでもないのに緊張感ありすぎるよね。
「でぇい!」
一歩踏み込むのと同時に銃剣で突き、これでもDEX極だから命中率は高いはずだし、銃としてもちゃんと使えてるからいけるはず!
ザクっと土に突き刺す音をさせ、あっさり回避されると体当たりの反撃を貰う。はい4ダメージ。ティッシュ装甲は健在。すぐさま引き抜き、またラットを正面に据えて次は横に薙ぐように振るう。これなら突きよりも攻撃範囲が出るし、当たるだろう!
ぶんと音を立ててミスる。んで、また体当たりを貰う。はい合計8ダメージ。もう4分の1もダメージ貰った。
「くっそ、あたんねえ!命中率100%じゃないんかい!」
これでクソゲーだと喚くほど私は子供じゃない。そう、80%の命中を4回外し、20%の命中率で連続4回被弾する程、私の運は悪いし、確率は100%か0%しか信用できないんだ。だから2連続ミスなんて私にとっては日常ちゃめしごと!って言ってる間に3回目もミスして12ダメージ。
何でか知らないけどここでHPポーションがぶ飲みするのは負けなきがする。っていうかレベルあるんだから倒せよ私。
フルダイブ系なんだから落ち着いて相手の攻撃を待ったらどうだろうか?相手の攻撃にカウンターを仕掛けよう。さっきから私が手を出してるから負けるんだし?
相手の攻撃をしっかりとみて、ラットの体当たりと身を捻って回避。こっちへ振り向きする瞬間がねず公の最後じゃあ!
宣言通り此方にねず公が振り向く所へ長銃のリーチと遠心力を生かして横薙ぎに攻撃。ザシュっと斬撃音をさせるとようやく1ヒットする。記念日だよね、レベル上がるときより嬉しいわ、これ。ねず公の悲鳴のような鳴き声は流石にリアルすぎると思ったけど、斬り返してさらに横に振るって2ヒット。
しっかり撃ってた時もそうだけど、このゲーム、ヒットストップシステムがある。連続攻撃とか何かの動作中に攻撃を当てると一瞬怯ませられるというもの。勿論耐性持ちだったり、無効化してくる相手はいるわけだけど、非アクティブ、低レベルモンスターはこれに該当しない。
「ふっふー……Lv10のウルフを狩りまくってた私にとって、ラットなんて雑魚よ、雑魚」
明らかに動きが鈍くなったラットを見てにんまりと笑う。もう1、2発当てたら倒せるはずだ。追撃するためにじりじりと近寄り、威力よりも命中重視、もう一回横に振りぬく。
まあさっきの反省を生かしてないよね、ただでさえ近接戦闘できないのに先に攻撃振ってるんだから避けられるよね。鈍い動きになったとはいえ振りぬいたところにもう一度体当たりを貰うとそのままバランスを崩して転倒する。
「あだっ、ちょっと、これ敵にも適用されるの!」
しかしまだ2発は耐えられる。M2ラビットを杖代わりに慌てて立ち上がると間髪入れずにラットの攻撃。なんか攻撃方法違うんだけど?そんなに前歯むき出しにして攻撃してくるパターンは初めてみたなー、ダメージ高いんだろうなー。っていうか、何かダメージ表記が赤い?これがクリティカルなのかな?
そうして私は最速で破産した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます