第8話『家庭科主任 徳川康子先生』

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・008

『家庭科主任 徳川康子先生』 語り手・ユリ






 高校の先生というのは職員室に居るとは限らない。


 教科別の準備室、国語、生物、化学、体育、社会とか。分掌別というのもある、分掌というのは分担された学校の仕事。進路とか生活指導とか保健とか図書とか。そういうあちこちの部屋に散らばってる。だから、直接授業を習ってないと――こんな先生いたっけ? 先生の方からすると、こんな生徒いたっけ?――ということが結構ある。


 その――こんな先生いたっけ?――というところに向かっている、四人揃って。


 向かっている先は家庭科準備室。旧館一階の西側に被服室・調理室・作法室・家庭科準備室と並んでいる。つまり、一番奥。わたしたちが習っているのは脇坂先生なんだけど、用事があるのは徳川先生。


 徳川先生と言うのは家庭科の主だ。


 脇坂先生とは親子ほど歳が離れている。むろん徳川先生の方が上で校長先生と同い年。徳川という苗字は伊達じゃなくて、マジで徳川家康さんの子孫。でもって、帝都タクシーの社長夫人であったりする。なんでも、東京都の家庭科教育のボスであったりもするらしい。


 なんで、そんなにオッカナイ先生の所に向かっているかというと、例のお昼ご飯のためなのだ。


 三日間はマチカが作ってきてくれたお弁当を頂いた。マチカのお弁当に不足は無い、無いどころかメチャクチャ美味しい! 美味しいのは、先日おかずの交換をやって承知してるんだけど、ノンコと清美の分も作るようになって、さらにグレードが上がった。三段重ねの重箱に色とりどりのお料理が入っていて、お正月のお節かお花見弁当かっていう感じ。マチカは、どうってことないという顔をしているけど、三人は恐縮した。材料費だけでもすごいと思う。トリュフとか伊勢エビとか入ってる。こういうところにビビるのが庶民感覚ってか三人の良いところでもあると思うんだけどね。


 それでは、本格的にお料理講習会をやろうということになった。


 時間的にも場所的にも学校でやるのが一番。だから、脇坂先生に頼んで調理室を貸してもらおうと思ったんだ。


「わたしの一存では決められないわ、主任は徳川先生だから、直に頼んでくれる?」


 というわけで、奥つ城の家庭科準備室を目指している。


 ノックする前に互いの服装身だしなみをチェック。「「「「よし!」」」」の声が揃って、ジャンケンで負けたわたしがノック。「入れ!」の声にビクッとして「「「「失礼します」」」」。入室して最後尾の清美がドアを閉める。


「学年・組・氏名・用件を言いなさい!」


「ハ、ハヒ!」


「二年B組、要海友里」「渡辺真智香」「野々村典子」「藤本清美」

「以上四名、家庭科調理室の使用を許可していただきたくて参りました!」


「奥に進みなさい」


「はい、失礼します……」



 徳川康子先生……名前からして徳川家康を思わせる先生は、机に向かって提出させた実習ノートや被服作品のチェックの真っ最中。三十秒ほどあって、チェックに区切りをつけてあげた顔は一見穏やかそうなうりざね顔だ。去年やってた大河ドラマの西郷隆盛の奥さんに似ていた……。




☆ 主な登場人物


マチカ(マヂカ)     魔法少女としてはマヂカ、日暮里高校2年B組の渡辺真智香として72年ぶりに復活


ユリ  要海友里     マチカのクラスメート


ノンコ 野々村典子    マチカのクラスメート


清美  藤本清美     マチカのクラスメート


安倍晴美         日暮里高校 国語の講師


ケルベロス        魔王の秘書 魔法少女世話係 黒犬の姿だがいろいろ変身して現れる


田中先生 田中実     2年B組の担任

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