第33話 名言


「歴史に残るような名言が言いたい」


「言ってる時点で無理じゃない?」


「でもあれって実際には本人が言ってないこともあるよな」


「偉大な行動をしていたこの人ならこんなこと言いそう! とかあるのかもね」


「つまり、言葉よりも行動で示せってことか」


「有言実行よりも無言実行のほうが格好良いのかもね」


「一番かっこ悪いのは有言不実行か……」


「うじうじする男は確かに無しね、少なくとも私は」


「なあ」


「はいはい?」


「好きです、付き合ってください……!」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「どんな顔だよ」


「どんな顔に見える?」


「この馬鹿をどうやって殺してやろうかって顔に見える」


「おしい。この馬鹿をどうやってバレずに殺してやろうかって顔よ」


「だが! 俺は行動した! その点に関しては評価してほしい!」


「告白スポットとして有名なこの場所に呼び出されて何分経過した?」


「三十分くらいかな……」


「その間、あんたは何をしていた?」


「意味の無い会話で誤魔化しておりました……」


「ギルティ」


「すいませんっしたッ!!」


「名言が言いたいとか言うわりにはさ」


「んぁ?」


「ありきたりな告白だったよね」


「簡単に格好良い殺し文句が思い浮かぶのは漫画のなかだけだと思う」


「とりあえずさ」


「はい」


「私は無言実行にしとくわ」


「はい。……え? んッ」

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