第19話 中学と大学と、高校と


「今日杏ちゃんまた来たって?」


「ああ。兄貴が帰ってくる前に帰ったけど」


「そっかー、杏ちゃん元気だった? 最近会えてないから少し寂しいなぁ」


「そう思うならもう少し早く帰ってきたら」


「うッ、い、いや家事の大半をお前に任せていること申し訳なく思っているわけですが、その、……」


「分かっているよ。制作の締切が近いんだろ」


「駄目な兄貴でごめんな……。杏ちゃんにも申し訳ないなぁ、俺の代わりに健のこと見ててくれて。今度何かプレゼントでも買わないとなぁ」


「良いかもね」


「あと二週間だけ! あと二週間だけ我慢しててくれ! そしたら絶対にお詫びするから! お前の好きなもん食べに行こう! なッ!」


「別に……。良いよ、兄貴の絵。……俺も期待してる、おわッ!?」


「健んんッッ! お前はなんて良い弟なんだ! 兄ちゃん感動で涙が滝の如しだ! ちゅっ! ちゅっ!!」


「うぎゃぁぁあ! やめ、やめろぉぉ! 兄貴からキスされても気持ち悪いだけだボケぇ!!」


「ほ、本気で殴らなくても……、うぅ、あの可愛かった健はいったいどこへ行ってしまったんだ……」


「同じ事言いやがって」


「え?」


「何でも無い。……それより、絵が完成したら、杏と買い物行ってこいよ」


「杏ちゃんと?」


「プレゼント贈るんだろ。だから、一緒に行ってこいよ」


「え。でも、こういうのは秘密にしておくから良いわけで」


「良いから」


「そ、そうか……?」

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