その48 いつものアレ(テンプレ)お願いね!
「お二人は付いてこなかったですね」
「まあ、ずっとべったりってのも変だしね。エリィ達も買い物に行くんじゃない? アレン達と旅をしていたころは結構二人で出かけていたからね」
ベルゼラとバス子を連れて僕は町中を散策していた。出がけにエリィとルビアも行くか聞いてみたけど、今日はパスでいいということで魔族二人とのお出かけになった。
「結構大きい町でしたねえ。わたし達は城から出ることは殆どなかったですし、町と言えば大魔王城近くにあったところだけですね」
「ああ、サイゴの町かあ。大魔王城に近いから住民は魔族ばかりなんだよね……」
と、バス子が言う。
いい機会なので、ここで魔族について少しおさらいをしておこうと思う。魔族って敵じゃないの? というのは間違いだからだ。
まあ、大魔王という悪の親玉みたいなのが居たけど、基本的に魔族を100とした場合、7割くらいは別に敵対しておらず、何なら人間と仲良く暮らしているケースもある。元々そういう世界だったんだから不思議じゃないんだけどね。
だけど、50年ほど前にどこからともなく現れた大魔王を名乗るエスカラーチが、今は無き国“カルヴィノ”を亡ぼしてそこを大魔王の領地とした。そこから全世界に宣戦布告し、魔物の数が増大。そして平和に暮らしていた魔族も、迎合する者が現れて戦争が始まった。光の剣を持っていたアレン達が勝てなかったのでその強さは相当なので、一人で国を亡ぼすくらい訳はないのだ。
え? アレンが弱いから? ……あれでも一応人間最強なんだよね……多分勝てるのは僕とエスカラーチというくらいの強さはあるんだ……アホだけど……
話がそれたけど、だからこそ、隣を歩いている大魔王の娘と名乗るベルゼラの真意が何なのか気になるんだ。僕がこの間3秒くらいで考えていると、ベルゼラがクスっと笑って口を開く。
「ふふ、ですね。それで私達の金銭問題をどうするかについてですけど……」
「エッチなことはダメですよ? レオスさんならサービスしますけどね、えっへっへ」
「しないよ!? 仲間にそんなことするとか外道じゃないか。とりあえず料理屋かな? そこで売り子をして欲しいんだ。少し前にポップコーンっていう食べ物を作って売ったんだけど、一人で全部はしんどくてね」
「なるほど。可愛いわたし達を餌に入れ食いを狙うんですね。流石はレオスさん! いよ、このスケコマシ!」
「で、ベルゼラには受け渡しをお願いしたいんだよね」
「わ、分かりました! 頑張ります……!」
「あれえ!? 無視ですか!? 無視が一番つらいんですよー、あ、ちょ、待って、待ってくださいよー!」
バス子の扱い方がだんだん分かってきたなと思いつつ食材を探す。そこでとある肉屋さんが目に入った。
「すみません、そのバラになった肉、売ってもらえませんか?」
「ん? 欲しいのか? 部位もバラバラだし奇麗な形をしていないけど、買ってくれるなら安くしておくよ」
「ありがとうございます! えっと……どれくらいありますか?」
肉屋の親父さんが量りを持ってきてどさどさと肉を置いていく。赤身と脂肪の部分のバランスはまあまあ悪くない。
「全部で5キロだな。いつもなら100グラム銅貨1枚だが、クズ肉ばかりだし、鉄貨5枚でどうだ?」
鉄貨一枚はチキュウのニホンでいうところの10円に相当する。グラム50円なら悪くないかな……? 5キロで銀貨2枚に銅貨5枚なら……
「全部お願いしていいですか?」
「分かった5キロだな。なら銀貨2枚と銅貨5枚で」
「それじゃこれを……」
僕が支払うと、肉を木箱に入れ、ロープで蓋があかないようにして渡してくれる。とても親切な人だ。
「何に使うかわからないけど、早めに食うんだぞ? まあお前さんはひょろっとしてるから肉を食ったら大きくなるだろ! はっはっは!」
「はは、どうも……」
肉屋を後にし、僕達はいったん路地裏へと移動する。そこで不思議な顔をしたベルゼラが声をかけてきた。
「? どうしたんですか? そのお肉を焼いて売るのでは?」
「まあね。でもその前にやることがあってね、誰もいませんねっと……<クリエイトアース>」
パァァ……
僕が魔法を使うと、土と石が形成されて箱形の何かが出来上がり、バス子が目を輝かせてみていた。
「おおおー何ですか何ですかこれはああ!」
という感じで、出来上がったもの、それは――
「これでこのお肉を挽くんだ」
「挽く?」
「そう、見た目がもうバラバラでしょ? いっそのこと全部一緒にしちゃおうってわけ。こうするんだ」
出来上がったもの、それはひき肉をつくる装置だった。クリエイトアースで鉄は組み込めないので石を鋭利にするなどで工夫した。
上の穴から肉を入れ、ハンドルを回すと肉が捻じれてひき肉にされるという簡単なやつだ。だけど最初はこれでいい。
「お、おおおー! レオスさん、やりたい! それわたしがやりたいー!」
「う、うん、すごい食いつきだね」
「あ、バス子でもできるのね。それで、これをどうするんですか?」
「まあ、見てなって。バス子、それくらいにして次へ行くよ」
「えっへっへ、楽しい~わたしの手で肉がうん●のように……」
「返せ!?」
うっとりとするバス子からひき肉機を回収して歩き出す。
そして雑貨屋で量りと適当な木のお皿、それに木のフォークに鉄の網、まな板を買い、露店や屋台の並ぶ通りへとやってくる。銀貨5枚は中々の出費……稼がないと……!
こほん。それはともかくこの露店通りは宿へ行く途中見かけていたのですぐ到着することができたのだ。
「それじゃ、もういっちょ<クリエイトアース>」
サクッと竈を作り、その中へ火の魔石を放り込み、準備完了だ! カバンから長机と肉を取り出し、バス子へ言う。
「バス子、この肉を50gだけ取ってこういうふうに作ってくれないか?」
パンパンと肉を形成する僕。
何かって? もちろんこれはご存じ、ハンバーグである!
「あいあいさー。挽いて……丸めて……」
「私はどうすれば?」
「お客さんが来たら相手をしてもらえる? 値段は……銅貨1枚でいいよ」
「分かりました!」
じゅぅ~
「ふんふん~♪」
バス子が形成した肉を網で焼くと良い匂いが辺りに漂い出した。すると道行く人が足を止め始める。
「お……」
「美味しそうな匂い!」
「それ、肉かい? 一つおくれ!」
「あ、はい! レオスさん、お皿とフォークでいいんですか?」
「うん。すみません、食べたら食器は返してもらえますか? こちらでどうぞ」
僕はクリエイトアースでテーブルと椅子を作り、最初のお客さんを座らせる。
「おお、なんだ今のは」
「手品です」
悪びれた様子もなく、僕はにっこりとそういいおじさんにハンバーグを出す。
「手品か……? ま、まあいいや、いただきます! ん!?」
どうだ……? 大人から子供まで大好きなハンバーグ……ソースは無いけどコショウは利かせてあるけど……
「んまい! それにとても柔らかい!」
「良かった、ごゆっくりどうぞ。って感じでお願いしていいい?」
「は、はい。色々凄すぎてなんて言っていいのか……あ、いらっしゃいませ」
その後もどんどんハンバーグは売れていく。
「えっへっへ、笑いが止まりませんね!」
「言い方が悪いけど、そうだね。これならお肉は全部はけるかな?」
そう思っていたところ――
「兄ちゃんたち、誰に断って店を出してるんだ?」
Tシャツにハーフパンツというラフな格好をした赤いつんつん頭にそんなことを言われた。
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