『貴重な材料です。回収を。』


 材料。視覚部うつろなめこちらを向いているピントをあわせようとしている。残り少ない時間に何を考えているの。

 やはりと言うべきか、バクハツブツは危険。緑色の袋はキラキラの線に触れる事で爆発する……。理解した。


 赤い点が再度止まった。胴体が、腕が、小刻みに震える。故障?


『各部、異常なし。』


 異常が無いなら、追いかける事もできるけれど……今は戻ろう。拾える材料を抱えもう一度赤い点を見ると、ゆっくりと遠ざかっていった。


 十字路に近づいた時、左側の壁が突然。自身の部屋ではない。被検体が開けたらしい。入って良いのかな? 開けてくれたんだから良いよね。


 部屋の中は正方形のこじんまりとして暗かった。射出ポッドも材料も無く、起きたばかりらしい。ごめんね。

 部屋の中央に被検体を置き、【製造】を確認する。頭部と施設の候補が1件ずつ白字で表示されていた。


『既存の施設を閉鎖し、移設可能です。』


 この部屋で作れたりするらしい。特に愛着も無いし、移しても問題ない。

 頭部の候補は、解析が早くなるらしい。ありがたく使わせてもらう。


 選択すると、片目が落ちた。材料の半分を捥ぎ取り作られていく。あまり見る事の無い内部には、四角柱の容器内に煌めく非晶質を見つけた。今回の【製造】には消費しないらしい。

 暗かった室内を見渡せるようになった。残りの目も始まった。


『貴重な材料を発見しました。出力向上を行いますか?』


 できる事は、しておこう。材料の半分が消えていく様子を見ながら、視界が暗転した。







『おはようございます。今日は記念日です。新たな種が誕生しました。殲滅してください。』


 どうやら横になっていたようだ。自身の上半身を起こすと、少し目線の位置が高いことに気づく。視線を下げると、各部が成長していた。

 【状態確認】のアウトラインもまた変化しており、いくつかの項目が追加されていた。


【解放】:条件設定


 選択すると、タイプと範囲を設定する画面に飛んだ。タイプを直線型、全方位型、誘導型から選ぶらしい。誘導型を選択した。赤い点へ届け。

 範囲は横方向のスクロールバーにて1M*から1000M*で調節するらしい。


 1000M*にした。”M*”が何を意味するかは分からない。下手に渋る意味もない。


『誘導型、出力最大が選択されました。よりよい種を選定してください。』


 【状態確認】に戻ると、貯蔵量という項目が目に留まる。1/1000とは何だろう。胴体の中心と右腕をつなぐ管状の導線が関係している?

 胸部のタイツが膨らんでいる……何か意味があるのかな。少し動きにくくなった。厚みの分、中心を守れることを期待しよう。

 左右の腕や足も成長し、伸びたようだ。タイツが7割ほどしか覆えていない。材料を追加する必要がある。


 【訓練】には新たな的が追加されていた。シルエットから多足の的と球形の的だと分かる。

 新しい自身の確認も兼ねて多足を選ぶと、5mほどのムカデしろいむしが落ちてきた。

 床に落ちた衝撃で怯んでいる隙に近づき右腕を突き出すが、白い外皮をへこませるにとどまってしまった。急いで距離を取る。


 仰け反った白い虫は、こちらを向いて足をワシャワシャさせている。威嚇されている? 今近づくのは危険かもしれない。

 狭い部屋の中で使いたくは無かったが左腕を突き出し、撃ってみる。成長したからか反動は感じなかった。腕を上に向けるように振る事で反動を逃がしているのかもしれない。

 着弾までは一瞬だった。反動への回顧あれこれの間には白い虫に被害を与え、苦しませる程度に。


 白い虫の胴体には大きな穴を開けたが、まだ動いている。当てる場所も考えた方が良いみたい。まだ動いている部分にもう一度撃っておく。

 【訓練】だから簡単なのだろう。【製造】の材料集めもしたいところだけど。


『貯蔵するか材料とするかを選択してください。』


 材料っと。窮屈な胸部が改善され、タイツが白黒のストライプしましまになった。フォークには白い線が無造作に走っている。柄に何か意味があるのかな。

 以前も試した動かない的に右腕を突き刺してみると、刺した箇所をねじ切るように割った。

 貯蔵量が1増えたが、報酬の木の棒は得られなかった。


 白い虫でも試してみる。相変わらず白い虫に突き刺すと、何の抵抗も無く突き抜けのめり込んだ。右腕が脈動どくどくしてる……貯蔵量が2/1000に増えていた。


 え? 2?


 【状態確認】を何度も確認する。どこにも黄色や赤色の表示は無い……異常?

 何かと教えてくれる文章が現れない。大きさや重さは関係ないのかな。とりあえず右腕で突き刺して数を増やしてみよう。


 【訓練】の白い表示を割って確かめ……あれ? 選べない? 【製造】も選べない?

 がらんとした部屋ですることがなくなってしまったと考えた時、扉のロックがはずれ緑色のランプが点いた。外で集めろってことかな。




 扉を出ると、小刻みな振動が伝わってきた。周囲を確認すると、かなり離れた所に赤い点を見つけた。いつか割る。

 今度は大きな衝撃を感じた。同じ方向からということは戦っているのかな? 貯蔵量が増えると良いなぁ。

 通路を歩いていくと、曲がり角からモヤがあがっている。覗き込むと、四つん這いの肌色がいた。緑色の服に黒い筒、黄色の毛……。

 赤い点かと身構えたが、顏を上げた肌色の形に違和を感じた。黒い筒を震わせながら後退る肌色は、割れそうだ。肌色にも強弱があるのだろう。この肌色は数に入るかな?


 小さな穴を何度も開閉している? 赤い点も確かやっていた。何か意味があるのかな?

 ゆっくりと近づくと黒い筒が何度も光り、その度に衝撃を感じた。【状態確認】は白色。恐れることは無いかな。右腕を黒い筒に近づけいくと、肌色は黒い筒を捨て走り出した。貯蔵量は3/1000、黒い筒でも増えるようだ——







 ——肌色では、いくつ増えるのかな。

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