第9話 魔王の片鱗?

レベルが上がったからなのか狩り方を理解したからなのか…それからの彼女はひたすらスライムを狩り続けています。


「わはははははっ アルクウェイよ…スライムなど楽勝なのじゃっ というかそなたはレベル上げをせぬのか?」

「そうですね…折角ですので私は魔法でいかせてもらいますか」


LVが1だったとはいえ勇者が殴っただけでは倒せなかったのです。勇者よりも力が劣る魔王が殴ったところで倒せるとは思えないのです。きっと魔法でなら仕留めることが出来るでしょう。そうですね…低級な魔物ですし、こちらの魔法も下級魔法でいいでしょう。


「ほらアルクウェイよ…わらわが押さえておくゆえ、このスライムを倒すがよい」

「ではお言葉に甘えまして……ファイアーボール」


彼女が足で踏みつけて押さえているスライムに向かって私は下級魔法を使用しました。名前からわかるように本当に下級なのです。ですが…


「な、な、な……おぬしはわらわを殺す気かぁーーーーーっ」


思ったよりもその火の玉は大きくスライムの体など一瞬で蒸発させてしまいました。もちろんそのスライムを足で押さえていた彼女もただではすみませんでした。その場に座り込み涙を浮かべ、再び足元に水たまりが作られております。


「ここまでの威力が出るとは思いませんでしたので…あーまずはお湯を用意いたしますね」

「ふぐっ 早くするのじゃ…」


お風呂の用意をしながら私は首を傾げます。変ですねぇ…私のレベルは上がりませんでしたよ? 彼女は一匹でレベルが上がり、その後も何度か上がったのを確認しました。


「ひどい目にあったのじゃ…というか一体今日はなんなのじゃっ」

「あの、マノン様は今レベルはおいくつですか?」


お風呂に入り着替えが終わったマノン様に、先ほど汚された服を洗濯しながら私は訊ねます。


「5なのじゃ」

「ありがとうございます」


ふむ…LV5の勇者がLV1の魔王が怖いというのでしょうか。よくわかりませんね。洗い終えた服を乾かしながら私は考え込みます。


「アルクウェイよ。ここには魔物はスライムしかいないのだろうか?」

「どうでしょうね奥に進んでみないと流石にわからないかと」

「なら奥へと進むのじゃ」

「………」


低レベルの私達が情報もなしに森の奥へと進むというのですか。なんでしょう…気のせいでなければ彼女は勇者になったことによって考え方がかなり…いいえ確実にあほっぽくなっていると思われるのですが。


「日が傾き始めましたね。今日はここまでにして宿へ戻りましょう」

「ぬ…? 言われてみれば少し薄暗くなってきておるのう。まあいい、この先は明日のお楽しみにするのじゃ」


私達は薄暗くなった空を眺めながら町へと戻ります。


「宿へ戻る前に冒険者ギルドへ寄ってもよろしいでしょうか?」

「何をしに行くのじゃ? 依頼は受けていなかったであろう??」

「はい。明日のためにあの森の情報を少々いただこうかと思いまして」

「ふむん…知らないのも楽しいと思うのじゃがな」

「では、マノン様にはお教えしませんので…いかがでしょう」

「ぐ…っ それはそれでなんかずるいのじゃっ」


冒険者ギルドに着くと私は早速カウンターの所にいる受付の女性に声を掛けます。最初に登録をした時の女性はいないようでしたので、適当に空いていた女性に声を掛けました。こちらの望みを申し上げるとその女性は快く森の生息図を手に戻ってきます。


「こちらになりますが、あくまでも現在わかっているだけの情報だということを忘れないようお願いしますね。あっ 後持ち出し不可ですので、そちらに座ってお読みください」

「ありがとうございます」


女性にお礼を告げると私と彼女は言われたテーブルに生息図を置き、横並びに椅子に座ってその資料のページをめくるのでした。


「う~~む…文字しか並んでいないのう。こう…絵が描かれていたりするほうがいいと思わぬか?」


順番にページをめくる私の横で彼女の口から文句が出ています…が、まあそれは置いておき私は先へ先へと読み進めました。

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