俺の魔力値上昇は留まる事を知らない

 3歳になった時、僕、いや私はそういえば異世界転生者だという事を思い出し、知らされたのだ。

 思い出したと知らされたは両立しないかもしれない。けれども私と僕は中身は同じだけれども、容器は別人なのだ。だから複雑な所である。

 それに理屈ではなく感覚の話をしている所に理屈を持ってこられても困る。


「ふむ」


 謎に偉そうに呟き、部屋を一周眺めてみれば、隙間風ピューピューだ。

 これが我が両親のマイホームである。これならば虫もぴょんぴょんブンブンと家におじゃましにやってくるだろう。


 では仕方がない。直してやろうか、と私は思ったわけだ。

 なに私も異世界転生者の端くれなのだ。3歳児がどうやって直すのかと思われるかもしれないが、直すと言ったのだから直す方法ぐらいはちゃんとある。


 貰った創造スキルというのを使えばちょちょいのちょいなのだ。創造スキルの他には各種耐性も貰ってる。

 まぁ自身の努力や才で修繕するわけではないのだ。だからそう誇って良い物ではないだろう。


 さて、目に見える隙間に手を近付け、念じる。


(埋まれ!)


 綺麗に修復された木材をイメージ出来ている。出来てはいるのだが、直らない。


【MPが足りません】


 なるほど。

 MPが足りない。そうであるのなら仕方があるまい。

 そうかそうか。MPが足りないのか。なるほど。



 さてMPという思わぬ伏兵に足をすくわれたわけだが、解決方法は俺が知っている。俺に任せろ。


 こんなもんはアレなのだ。

 少ない魔力を放出したり、体内にある魔力を体内でグルングルンさせれば勝手に上がる物なのだ。

 なろうで学んだ事は異世界では大概役に立つ。読んでいて良かったなろう系小説。


 まずは瞑想である。

 まだ魔力を見つけれてない私はどこに魔力があるのかを発見しなければならないのだけれども、流石は私だ。心臓のあたりにある気がする。


 さて、次はグルングルン体内循環させる工程だ。

 動かし方を探さなければならないが、なろう好き異世界転生者である私には赤子の首を捻るがごとくの様に簡単だ。

 回路だ。回路図を描くのだ。電源の向きを気にする事はない。抵抗だ、コンデンサ、ダイオードだ、そんな物はないからただ魔力元からにょーんとさせて、にょーんと戻せば、それがもう回路図なのだ。


 脳内にイメージすると、身体が暖かくなる。


【魔力が上がりました】

【魔力が上がりました】

【魔力が上がりました】


 ふむ。出来ておる。

 流石なろう。ありがとうなろう。読んでてよかったぜなろう。皆もなろう系を讃えよ、崇めよ。


 こうしてる間にも魔力はどんどん上がっていく。

 魔力が上がれば上がった分、効率も悪くなるのかもしれないけれども、魔力が上がったからカバー出来ているのか、そう魔力が上がるペースは落ちない。


 どうやら動作は安定してるみたいである。

 【魔力が上がりました】の通知がかなり煩いけれども、頑張って寝よう。

 翌日には私の魔力値がどえらい数字になっているのかと思うと胸が熱くなるぜ。







 その晩、

 名もなき集落とその周辺の地上は魔力の大爆発で蒸発した。

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