第194話 既視感のある光景

「ど、どうすんの!? ガーネットいなくなっちゃったよ!?」

「……どうせすぐ戻ってくんだろ。心配ねーって」


 ガーネットがいなくなったあと、結衣たちはどうすることも出来ず島に取り残された。

 ガーネットを追いかけようにも、ガーネットが放つ魔力すら認識出来なくなってしまったのだから。


「それにしてもすげーよな、あいつ。認識阻害であそこまで認識不可能にできるなんて」

「か、感心してる場合じゃないでしょ!? それほどすごかったら誰かに狙われるかもしれないのに!」


 ガーネットの力が凄まじいことは、結衣もよく知っている。

 だからこそ、誰かに悪用された時には手がつけられなくなってしまうだろう。


「心配いらねーよ。あいつは確かに自分でものを決めるのは苦手な奴だ。だがな、危機管理能力がなければ――そもそも結衣の前になんて現れてねぇよ」

「? そ、それって、どーゆう――」

「話はあとだ。来たぞ」


 変なことばかり喋る魔央に、思考が追いつかない結衣。

 だが、それを一旦切断するしかない状況になる。


 魔央が見つめる先には、ガーネットがいた。

 何かを決意した表情で、じっとこちらを見据えるガーネット。

 ここで戦った時の虚ろな表情は既になく、熱の――魂のこもった表情をしている。

 それこそ、ガーネットにふさわしい表情だ。


「……結衣様、魔央様。お二人のお力を、試そうと思います」


 そう呟き、ガーネットは堕天使のような翼を広げる。

 この世界を覆い尽くすほどの巨大な翼。

 結衣はなぜか、その光景に既視感を覚えた。


 前にも……こんなことがあったのだろうか。

 よくわからないが、今の結衣にはやることがわかっていた。

 ――目の前の敵を一発殴って、目を覚まさせなければならないということを。

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