第111話 鳥のような気分

「よし、行こう! ガーネット!」

「ええ! もちのろんですよぉ!」


 やっと休み時間になり、結衣は今屋上に来ている。

 いつもは立ち入り禁止なのだが、そこはこう、魔法でなんとかできた。


 本当に魔法ってなんでも出来るんだな。

 と、結衣はそう思ってガーネットを見る。


「どうしたんです? 早く行きましょー!」

「わかったわかった! そんな急かさないでよ……!」


 こんなことを考えている場合ではない。


 結衣は浅葱色の空を見上げながら、足に力を込めて飛ぶ。

 清々しいほどの青空。どこまでも飛んでいけそうだ。


「こんないい天気なのに……熱を出すなんて……」


 明葉ももったいないことをするものだ。

 心地よい風を浴びて、結衣は不思議と笑顔になる。


 空を飛んでいる時の爽快感はたまらない。

 鳥はいつも、こういう気分なのだろうか。

 結衣は少し、羨ましくなる。


 ……ん? 空……飛ぶ…………飛ぶ?


「……ちょっと待って」

「どうしたんですかぁ?」


 結衣は立ち止まり、もう一度よく考える。

 そして、手に握っているガーネットを目の前に持ってきて、問いかける。


「ねぇ、今日龍を見たって人たちがいたよね?」

「え? ええ……それが何か?」

「明葉ちゃんが心配で思わず家に向かおうとしてたけど……もしかしたら違うかもしれない……」

「結衣様? よく聞こえなかったのでもう一度――」

「行こう! ガーネット!」

「え? だから詳しく説明してくださ――ってちょっ……! 結衣様ぁ〜!?」


 疑問に喘ぐガーネットを無視して、結衣は一直線に向かう。

 燦燦と降り注ぐ太陽が、結衣を照らし出しているような気がした。


 ☆ ☆ ☆


 休み時間とはいえ、あまり時間は残されていない。

 だから――


「超特急で探すよ!」

「それは別にいいですけど……」


 超絶すぎるスピードで探さなくてはならない。

 を。


「……宝って、まだそんな胡散臭いものを探すんですかぁ?」

「えー? 不満なの?」


 宝の地図を手に持ってはいるが、何せ――結衣には地図が読めないのだ。


 だから、ガーネットの力を借りるしかない。

 なのだが、ガーネットは不服らしい。

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