第33話 天使のような悪魔

 数時間前。謎の光が放たれる前のこと。

 西園寺星良、通称せーちゃんは――神社でとある謎の少女に遭遇していた。


「ま、魔法少女……の??」

「ええ、そうです! 知ってますよね?」


 まるでせーちゃんの答えを知っているように訊いてくる少女に、どこか不気味さを感じる。


 ここで安易に『知らない』と答えても、『知っている』と答えてもいけないような気がした。

 だからせーちゃんは――


「その人に――なんの用があるんですか?」


 少女の問いには答えず、問いを返した。

 すると少女は「ふーむ……」と顎に手を当てて考え込む。


「ちょ〜っと、その方が持ってるステッキ――ガーネット? がぁ、欲しくて☆」


 屈託のない笑みで、自分が“敵”であることをバラす。


 せーちゃんはその少女に畏怖を覚え、すぐさま戦闘態勢を取る。

 それを見た少女は目を丸くして、口元を歪めて言った。


「へぇ? 私と戦うつもりですか?」


 異常なまでの殺意と敵意を剥き出しにしながら少女は目を瞑り。

 何かを唱えると天使のような翼が生え、透き通るようなアクアマリンの瞳を濁らせながら――警告した。


「残念ながらぁ、私と戦うのは……無理だと思いますよー? あはっ♡」


 いっそ清々しいまでの上から目線で少女は――天使のような悪魔は、微笑んだ。

 そして笑みを外すと、尋常ではない威圧感がせーちゃんを襲う。


 ――“こいつには逆らうな”。そう、言われたような気がした。

 せーちゃんは身動きが取れず、ただ顔を顰めて少女を見ると。


「あははっ。なんですか? その程度の実力? いっそ笑えますねぇ」


 ガーネットに似ている笑い声を上げる。

 だが、悪意がガーネットに以上に感じられる笑い声だ。


「うーん、困っちゃいますねぇ……このまま殺しちゃってもいいんですけど……それはちょっと面白くないですし……」

「あ、あなた……目的はなんなの?」


 辛うじて出たせーちゃんの言葉を吟味するように、少女は熟考しているように見える。

 そして、目を輝かせながら少女が放った言葉で――今度こそせーちゃんの動きが完全に止まった。

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