品種改良

 長雨の中休みかのように、しばらく雨が降らない日が続いた。秋に備えて、農業用水の確保をすべく、高台の数カ所に、貯水池を設けることにした。どうやら、この長雨は、もうしばらく続きそうな感じがする。これ以上、降り続くようだと、浸水も心配になってくる。せっかく、移住したのに、その年に浸水騒ぎしたのでは、話にならない。


 この雨が降らない間に、やれることはやっておこう。1キロメートル置きに、3箇所、200メートル四方、深さ10メートルの貯水池を作った。当然、漆喰加工しておいた。畑は住宅地の高台より一段低いところにあるため、貯水池のそこに横穴を開けて、管を地下に通し、畑にたどり着くように、設計した。これで、貯水池に溜まった水を直接、農業用水として利用することができる。


 今後、貯水池の周辺に住宅街を建設できるように整備していこう。ゴードンに相談することが、また増えたな。


 まだ、貴重な晴れ間は続くようだ。この前、話に出ていたジャガイモを調査しに行こう。ゴードンに話を聞きに行くか。家に行くと、客人が来ているようだ。僕が行くと、いつも客人がいるな。まぁ、ゴードンはこの村のまとめ役だ。客も多いのだろう。


 「ロッシュ村長、ようこそ、いらっしゃいました。わざわざ、ご足労いただかなくとも、こちらから参りましたのに……して、本日はどういったご用件で? 」


 この前、エリスと話したように、ジャガイモのことを聞いた。


 「ロッシュ村長も、あれに目をつけましたか。あれは、毒があるので、われわれは、栽培することを諦めましたが……さすが、先代様のご子息だ。血は争えぬものですね。どれ、ご案内します」


 いいのかな? 客人が来ているようだけど。ちょっと、怪訝な顔をしてしまった。


 「あ〜。大丈夫ですとも。大した用件でもありませんし、妻だけでも対応できるでしょう」


 あっ! 妻がいたんだ。そりゃあ、いるか。今度、会ったときにでも挨拶するか。ゴードンはこの村の要だ。その妻も大切に扱わなければ、村の経営など出来ないだろう。


 ゴードンの案内で、来た場所は、鬱蒼うっそうと生い茂った草が広がっていた。


 「ここが、先代様がジャガイモの栽培実験をしていた場所です。少し収穫して、食べたのですが毒に当たってしまい、そのまま放置されています。少しは残っているかもしれませんね。どれ、ちょっと掘ってみますか……」


 話では、父上がジャガイモを植えた後に、米のときと同じように戦争に赴いてしまったため、誰もジャガイモの食べ方を知らなかったようだ。毒に当たったのは、それが原因だろう。


 ゴードンが一生懸命、草と格闘しながら、ジャガイモを探していた。しばらくすると、ゴードンが戻ってきた。


 「ロッシュ村長。前に見たときよりもかなり小さいようですが。これが、ジャガイモでよろしいんですよね? 」


 見ると、小さいがたしかにジャガイモだ。しかし、小さすぎる。ビー玉くらいしかないぞ。これでは、栽培用の種としては使えなさそうだな……どうしたもんか。とりあえず、実験的にいくつか持って帰ろう。何年かかってでも、これを実用化すれば、食料はかなり安定してくれる。


 僕はゴードンに指示を出し、いくつかのジャガイモを探してもらった。同じようなサイズのものを100個位、見つけてもらってから、僕達は帰路についた。


 屋敷に戻ってから、ジャガイモの実用化について考えた。どうしたもんかなぁ……。全然、いい考えが思いつかなかった。


 すると、エリスが執務室にお茶を持ってきた。僕が悩んでいると、魔法で何とかできないんですか? なんて言ってくるから、久々にステータス画面を覗くことにした。そんなに、都合のいいものなんて……あった。


 スキルの項目に、品種改良の文字が。なんだこれ……すごく、気になるぞ。意識を品種改良に集中すると、

栽培時期や栽培期間、食味、品質、収量を改善してくれるらしい。なるほど、これは……すごくいいスキルだ!! 


 そういえば、スキルを取得できるだけの経験値があったな。迷わず、僕は品種改良を取得した。


 さっそく、品種改良の魔法を使ってみよう。先程、採ってきたジャガイモに魔法を掛けた。すると、ステータスのようなものが表示された。


栽培期間 70日

栽培時期 春

食味   C

収量   C

品質   C

残ポイント 15/100


 おお! ジャガイモのステータスみたいだな。ふむふむ。このジャガイモは春植え用だったか……秋には植えられないわけか……もしかして、ここをいじれたりするのかな? おそらく、ポイントを使って、変更していくんだろうな。

 栽培期間に意識を集中して、秋にしようとすると、ステータスが変わった。


栽培期間 秋

残ポイント 5/100


 変わった! これはいいな。でも、このジャガイモは春作に不向きになったわけか……春秋植え用にはならんかな? 意識してみると……変化がなかった。ポイントが足りないのか? まぁ、結果は十二分だ! さて、5ポイント残ってしまったが……この中で、割り振るとしたら、収量だろうな。収量に集中すると……


収量 C+

残ポイント 0/100


 変わった。C→C+ になったな。これが、どれくらいの変化か分からないが……いい結果になっただろう。品種改良の魔法を解くと……ジャガイモが光り輝き……ジャガイモのサイズが大きくなった。種芋としては、やや小さいが、栽培に適するぎりぎりのサイズとなった。素晴らしいな。この調子で、他のジャガイモも品種改良していこう。


 一度の魔法で、品種改良できたのは、100個だけだったが、十分だ。まだ長雨は続く。その間に、やれるだけやろう。早速、ゴードンにジャガイモの収穫を大至急やるように頼むことにした。


 収穫したジャガイモを春植え用にしすることを繰り返せば、良質なジャガイモが作れるだろう。他の野菜も試してみたいな。本来であれば膨大な時間がかかる品種改良をここまで短縮できるなんて。なんとも、便利な魔法を授けてくれたもんじゃな……婆さん。



 

スキル

火魔法 取得可

水魔法 取得済み

風魔法 取得可

土魔法 進化可 → 大規模魔法+ 省魔力+

回復魔法 取得済み

品種改良 取得済み 栽培期間 栽培時期 食味 品質 収量 変更可


2/6→1/6   10/100


品種改良

A+ 10割増し

A  5割増し 

B+ 2.5割増し

B  普通

C+ 2.5割減

C 5割減


栽培期間 種まきから収穫までの期間 ただし、生育が停止している時間はのぞく。

栽培時期 種まきの季節

食味  味

品質  品質が上がると腐りにくく、見目もきれい

収量  収穫量

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