ボクは橋を攻める
警察ゾンビはその両端にパトカーを展開してバリケードを作っている。先ずはそこを突破し、その後に橋に陣取る警察ゾンビを打破しなければならない。
ジェラルミンの盾(SRランクの盾)を持つクランが突撃しているが、警察ゾンビの弾幕の多さになかなか前に進めないでいた。仲間数名を守りながらだから仕方ない。そして耐えきれずに撤退していく。
昼に大橋を攻めに来たクランの数は五組。そのうち三組が先行して返り討ちに会い生き残りが基地で療養。そして今四つ目のクラン――【ナンバーズ】の先行部隊が撤退したのだ。威力偵察としては充分と判断したのだろう。徹底の迅速さは見事なもんだ。
というわけで残りはボク等【バス停・オブ・ザ・デッド】のみである。
「警察ゾンビの装備は拳銃と警棒。あとは手錠を持ってるよ」
改めて、警察ゾンビの特徴を情報共有する
遠距離近距離対応できるうえに、『麻痺』のバッドステータスを与えてくると言う事である。おまけに警察と言う仕事上なのか、動きも他のゾンビよりも軽やかである。犬ゾンビ程動きは俊敏ではないが、拳銃から警棒、そして手錠への切り替えが素早い。
(装備の切り替えが早いタイプ。要するに、
ただし
「にしてモ、ゾンビのくせにバリケード作るとか。頭いいヤツがいるみたいデスネ」
「それなりに知恵のあるゾンビが指揮を執っているのかもね」
「……あの、ソンビに知恵ってあるんですか? 音子、そんなの見たことないですけど……。もしかして
「あー……。そういうのとは違うけど、高ランク狩場のボスゾンビは喋ったり知恵があったりするんだ。
怯える音子ちゃんにそう告げる
「つまり『大橋』にそう言った高ランクのゾンビがいると言う事ですか?」
「そう見てもいいかな。バリケードの奥に陣取る警察ゾンビと、恐らくどこか――多分パトカー車内かな?――に潜んでいる伏兵がいる。
迂闊にバリケードに近づけば、銃で足を止められて伏兵が出てきてタイホーって感じだと思うよ」
その後はフルボッコにされてゾンビの仲間入り。先行したハンター達もそれで何割かが犠牲になったと言う。ゾンビ化した生徒が見られないのは、警察故に補導されたのかな?
「聞けば聞くほど打ち手無しですね。
やはりしばらくは防衛に徹して数を減らすのが良策なんじゃないですか?」
福子ちゃんがため息交じりにそう言い放つ。ハンター委員会副会長さんが行っていた【ナンバーズ】の作戦だ。実際、それは有効だろう。
というより、これは真正面から攻めるには骨な戦況だ。数を減らさないと先に突撃したクランの二の舞になる。
実際、【ナンバーズ】の策に従ったのかこちらに来るクランやハンターは少ない。威力偵察に来た【ナンバーズ】も、既に撤退している。
「うんうん、困難な状況だね。
だからこそ、攻める。そして打ち破る! そんなボクってカッコいいと思うでしょ?」
親指を立てて
誰もが不可能と思う状況を打破する。それこそが
「……まあ、ヨーコ先輩らしい理由です」
「でしょ! もー、福子ちゃんもようやくボクの凄さが分かってきたみたいだね!」
「ヨーコ先輩の凄さは前々から……ではなく! だからと言って真正面から突撃、とか言い出すんじゃないでしょうね? 流石に無理ですよ」
「ん-。統率取れてないゾンビならともかく、隙なく撃たれたら厄介かな。リロードの瞬間に別部隊が弾幕重ねる、とかやられたら突撃する余裕がないし」
防御からダッシュに移行する
「それでも『厄介』ですむのがバス停の君らしいネ」
「じゃあ、音子が陰から移動するのはどうです? バリケードの裏に回って、ゾンビを誘えば隙はできますよ?」
「駄目。それだとボクらがバリケード突破する前に音子ちゃんがやられちゃう」
流石にバリケードまでダッシュ+乗り越えて攻撃、は数秒かかる。見えているだけで三〇は越えるゾンビを前に、音子ちゃんが耐えられるとは思えない。
「で、どう動くんです? どうせもう作戦は決まっているんですよね」
「まあね。皆に結構無理してもらうけど、ヨロシク!」
「このクランに来て無理してない狩りってなかった気がするデスヨ」
「えへ、音子頑張りますね。何でも言ってください」
そして【バス停・オブ・ザ・デッド】は動き出す――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「やっほー!」
言いながら
「のわっ、よ、やばばっ!」
それらを避け、そしてバス停を盾にして塞ぐ
(でもま、こいつらの動きはAI管理。優先順位が高い方を優先するから――)
「たったかたーん! ボク、華麗に参上!」
言ってポーズを決めるシャドウワン。決められた台詞、決められたポーズをとった。うーん、ボクカッコいい! 第三者目線から見るとこんな感じなんだ。最高!
(――っと、見惚れてる場合じゃない!)
シャドウワンが現れたことで、ゾンビの弾幕は
「これなら、行ける!」
その隙を逃さす、一気に走る
「怖っ! いきなりドア開けて襲い掛かるゾンビとか――」
警棒を手にした警察ゾンビが警棒と手錠を手に迫ってくる。そしてパトカーの向こう側で銃を構えるゾンビ達。
「――映画じゃお約束過ぎて、観る人は飽き飽きするよ!」
ゾンビの数。武器の射程範囲。攻撃タイミング。それら全てを脳内で構築する。同時にどこに移動すればいいかをイメージし、体は自然と動き出す。
間近にいるゾンビの腕をバス停で払い、移動してはためいたブレードマフラーがソンビの胴を割く。警棒と手錠の攻撃範囲から逃れながら、向けられる銃口を意識する。攻撃直後の僅かな硬直。このタイミングで撃たれれば、
まあ、避ける必要もないんだけどねっ!
「秩序を守る立場にありながら闇に堕ちた者達よ。汝の魂、ここに救済せり」
聞こえてくるのはそんな声。朗々と響く福子ちゃんの声は、
(ボクが囮になっている間に走って浮遊ブーツで一気にバリケード乗り越えて攻めて、って作戦だったけど……まあ、これはこれで)
「首を垂れて、罪を数えるがいい。『
声とともに乱舞する福子ちゃんのコウモリ。きっちり
さて、一気に攻めるよ!
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