ボクはハンター委員会会長と話をする
「自己紹介が遅れたね。私はハンター委員会会長の
手を降ろし、こちらに顔を向ける会長。
「バス停に拘り、ブレードマフラーを補助武器に使って戦う。銃器に依らない戦い方を突き詰めている。
登録してしばらくは目が出なかったようだが、ある日を境に急激に討伐数を上げ、今や
「い・ぬ・づ・か。名前覚える気ないだろう、キミ」
「はっはっは。すまないね、犬月くん」
また違うし。
「そしてこちらは名うてのコウモリ使い。同ランクのテイマーはもちろん、ハンターランク30のテイマーでも勝てないだろうね。
オイレンシュピーゲルさんは御不幸だったね。正直者すごい痛手だよ。連絡の行き違いとはいえ、彼女を追い込んだ経緯は許されない事だ。謝罪するよ、大森さん」
「……いいえ。お気遣いなく」
オイレンシュピーゲル――福子ちゃんの『お
「
どうやら最近はクローンをあまり使用していないようだね。ロットンさん」
「オウ! そんな昔の話は忘れたネー」
頭をぺしんと叩いてそれ以上の追及を留めるミッチーさん。……ミッチーさんにも
「ネコと遊ぶのは好きにしていいけど、神様に振り回されないようにね。
宗教の自由はこの学園でも認められるけど、ここはブリテン島じゃない。コーンウォルのようなことはしないでくれれば十分だよ。佐尾さん」
「……? よくわかりません。エヘ、エヘヘ」
『偽典・バステトの書』を抱きしめながら笑みを浮かべる音子ちゃん。まるで神様の存在がいるかのような発言。いや、ただの社交辞令なのかもしれないけど。
「……とりあえず、キミがボクらの名前を覚える気がないことはよくわかった」
「申し訳ありません」
ため息と共に言い放つ
――とはいえ、人の名前を憶えないだけで他の情報はしっかり頭に入っているようである。
話を進めるように前に出て、口を開く
「さっさと本題に入っていいかな? とはいえ、話すようなことはほとんどないと思うけど。
要するに、カオススライムを倒した名誉を【ナンバーズ】に売ってくれって話だよね? 正直に事実を公表して起こるだろう炎上を避けたい為に」
「耳が痛いけど、そう言う事だよ。君たちが倒したのは事実だろうけど、それを正直に公表すれば色々面倒事が起きる。
先ずはキミ達へ矛先が向く。ナナホシの件でもそうだけど
嫌味交えた言葉に、笑顔で返す会長。
わずか四名の低ランクハンターが、数多のハンターを葬り去った存在を倒した。
そうなれば死んでいったハンター達は相対的にその低ランクハンターより劣ると言うことになる。事実はともあれ、そう受け取る人はいる。
「さらに言えば勘違いする者も生まれる。規模50のクランが
「……ま、それは」
ありえそうなことである。いや、事実
「勘違いして
謹んでお詫びするよ。君たちには不名誉だろうけど、協力してほしい」
言って頭を下げる会長。
……むぅ、そう頭を下げられると嫌味を言った
「はいはい。それはもう全員納得済みでこっちに来たんだ。もらう物を貰って終わりにしよう。
なんなら喋らないように念書か何かでも書いた方がいい?」
「いやいや、そこまでは。私は君達のことを信じているよ、犬木君」
「井口です。収集品の計算は既に終わっています。四等分するのならハンターランクはこちらになります」
井口副会長の差し出した書類を見る。
「あ、赤袋出たんだ。それも二個も」
中を開けるまで何があるかわからない赤袋。実際に手にもって見ても分からず、開けたとたんに重くなって、いきなり重火器が出てくることもあると言う。ゾンビウィルスってホント謎。
「オウ、一気にランク上がったネ。やっぱりカオススライムの欠片のオカゲ?」
「そうみたいですね。さすがは
「お、おー……音子、エヴァンスくんとランク並びました。エヘ、エヘヘ……」
ランク15を超えた段階でランクが一気に5も上がるのはまずありえない。それだけ貴重な品物だったのだ。カオススライムのスライム辺は。
「多少色を付けたけど、それでも『混沌肉汁』の欠片は貴重だよ。刺激を与えれば様々な形になるし、含有されているゾンビウィルスもかなりの濃度だ。それがこれだけあるのだからね。
向こう三年は研究者は暇なし。学園のインフラもだいぶ活性化する見込みだ」
「研究?」
「ゾンビウィルスの研究さ。私達はこのウィルスに関しての情報があまりに不足している。どこまでのことが出来るのか、あるいはこのまま使えば――
いや、それは私が決定することではない。ともあれ、キミたちの報酬は正当なものだ。受け取ってくれ」
「言われるまでもなく受け取るよ」
ハンターランク20。名の知れたハンターの入り口といえるランクだ。
ランクに拘るつもりはないけど、これが努力の結果なのだと言われれば悪い気はしない。
「ま、ボクの凄さはこんなランク程度じゃ表現できないけどね。バス停でマフラーでカッコキャワワなボクのスターロードはまだまだ続くのさ!」
「はっはっは。論より証拠を実践しているからね。これからも君達の活躍に期待しているよ。
実際、君達にある程度の箔があればこんなことをせずに済んだのだからね」
「……む。さりげなくディスられた?」
「いや、むしろかなりの実力者なのだから、もう少し巨大なクランに身を寄せてもいいんじゃないかという誘いだよ。
【ナンバーズ】……は軍隊式に拘っているようだから、他のクランはどうだい? テイマーの君は【しっぽのだんす】、【Hydrus】なんていう化学特化クランもあるし【
それは『AoD』がまだサービス中だった頃に有名だったクランで、僕も名前を聞いたことがるクランだ。かなりの活躍をしており、クラン規模も高いのでクランスキルも高くかなりのものがある。端的に言えば、かなり優遇された狩りが出来るのだ。
ぶっちゃけ、福子ちゃんを始めとして皆は今のハンターランク以上の動きをする。【バス停・オブ・ザ・デッド】から出てそういうクランに言っても、問題なく活躍できるだろう。
実力は認められるべきだ、とは福子ちゃんが言った言葉だ。実力ある人間が日の当たるところで活躍するのは正しい。
だから、この誘いを皆が受け入れるなら、それはすごく寂しいけど、それを止めることは――あ、やばい。想像しただけで胸に穴が開いた気がする。
三人の顔をまともに見れない――
「はっ、お笑い種ですわ。この『
「ソーデス。こっちの方が楽しめるデスヨ。VRでバス停に貫かれる経験なんか、他じゃできませんからネ」
「お、音子は洋子おねーさんに恩を返したいので。それにここは猫を飼ってもよくて、みんな心が温かいんで。えへ、えへへ」
シークタイムゼロで同時に答える三人。
ためらいも躊躇もなく、高ランククランの紹介を蹴ったのだ。
「あ、あれ? 割と悪くない紹介だと思うけどいいの?」
「ふざけないでください。私はヨーコ先輩の
「そうそう。がっつり楽しませてもらうデスヨ」
「えへ、へへへ。音子もです。これからもよろしくお願いします」
「あー……。うん、よろしく」
熱くなる目頭をなんとか堪えながら、
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