第三章:絕地7騎士 ― The Magnificent Seven ―
静岡県富士宮市 二〇一X年八月中旬
「だ……誰? お……お姫さま?」
『ずっと、別の名前で呼ばれていましたが……良い呼び名ですね……。では、これからは、
小学1年生の時の8月。あたしの前に現われたのは、あたしが「お姉ちゃん」と呼んでいた、団地の隣の部屋に住んでいた女の人に良く似た「何か」だった。
しかし……その「お姫さま」が現われた時、辺りに有ったのは……「お姉ちゃん」の銃殺死体と、「お姉ちゃん」を殺した奴らの焼死体。
後で聞いた話では、あたし達、日本に働きに来ていた日系ブラジル人とその家族が住んでいた団地を、排外主義団体が襲撃したそうだ。
あたしが生まれるずっと前から、世界が……世の中そのものがおかしくなっていた……らしい。そして、あたしの家族や近所の人達の身に起きた事も……ある意味で「狂ってしまった時代」の「よく有る事」だった。
と言っても、もちろん、あたしは、二〇〇一年九月一一日、他人の精神を支配する力を持つ「異能力者」達が、ジャンボジェットをニューヨークの「2つの塔」に
「で……『お姫さま』は、一体……どこから来たの……」
『貴方が「お姉ちゃん」と呼んでいた方に宿っていましたが……残念ながら、こんな事になったので……今後は……貴方と御一緒させていただきます。貴方が亡くなって……貴方のお友達や家族が、
「えっ?」
『
「だから……『お姫さま』は……何なの?」
『言うならば「女神」です。あれのね……』
そう言って、「お姫さま」が指差した先に有るのは……。
「えっ?」
さっきまで、火と煙を吹いていた富士山は、いつもの姿を取り戻していた。その代り……。
「なに……これ……?」
周囲に居るのは何人もの兵隊。呆然と、富士山とは逆の方向に現われたモノを見ていた。
今にして思えば、その兵隊が着ていた戦闘服や持っていた銃その他の装備は……旧・自衛隊のものとも、旧・特務憲兵隊のものとも違っていた。
そして、後の方には軍用車。軍用車には手書きの「黒い桜」のマーク。その「黒い桜」のマークは兵隊達の胸にも有った。それも、何故か、見た範囲内では、全て急ごしらえの手書き。
兵隊達の凝視める先には……巨大なきのこ雲が有った。
恐怖と混乱のあまり、あたしが泣き出しかけた時………。世界は元に戻った。
いや、元に戻った世界も同じ位、絶望的なモノだったけど。
『たまに有るらしいのですよ……。
そして、当時、小学1年生だったあたしも、次の日の夜明けごろには、とんでもない事に気付いていた。
この「富士山の女神」を名乗る「お姫さま」は、数百万・数千万人の人間を殺したり、露頭に迷わせる事は簡単に出来るが(と云うか、実際にやらかした)、あたしや他の誰かの命を助ける事に関しては……もう、どうしようもない能無しだった。
あたしは……火山灰の降る中、ずっと、廃墟になった富士宮を彷徨い続けた。今にして思えば、「お姫さま」の
そして、富士山は、散発的に火を吹き、煙を上げ、火山灰を降らし続けた。
「やっと見付けた。この子だ」
女の人の声。
声の先には……作業着にヘルメット、ゴーグルにガスマスクの女の人が1人と、同じ格好の小柄な男の人が1人。……そして、
『あんたねぇ……。何て事したんだよ……。あたしが言っても説得力無いけど……「出来る事」と「やっていい事」は違うよ、まったく』
『これはまた、お久しぶりですね……確か、ここ九百年ほどの間、この
『ややこしい事になるよ……。あんたが、こんな真似をしたせいで……世界そのものが、またしても、いくつかに分かれた……。そして、あいつが動き出すかも知れない……。「時と闇の神」カーラ・チャクラが……。あ……それと、あたしの「巫女」が詳しい事情を知りたい、ってさ。あんな真似やらかした理由を、さっさと説明して』
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