(ⅳ)
「で、結局、あんたは何がしたいんだ? 妹と弟を助け出したいのか? なら、あんたは……大人しくしてろ」
「うるせぇ」
俺とスキンヘッド達は……あっさりと両手両足を縛られて、床に転がされた挙句、メスガキに説教される羽目になった。
「それとも、町の英雄になりたいのか? なら無理だ」
「何でだ?」
「英雄なんてのは、自分の意志や力だけじゃ成れないからだ。何かを成し遂げた者を別の誰かが英雄として扱ってくれるだけだ」
「って、お前ら、何やってる?」
「見て、判んないか?」
今度はメスガキの連れの男。
この2人は、俺の親父の形見の「
「どうする? 完全にブッ壊す?」
「いや、これで良いだろ」
メスガキは、「
ペキっ……ペキっ……ペキっ……。
小さな音が3つか4つ響いた……。
制御コンピュータのCPUとメモリは砕け散った。
たったそれだけの事で……折角、修理した俺の親父の形見は粗大ゴミに逆戻りした。
「英雄の息子を英雄に祭り上げるつもりだったらしいが……これで計画は1からやり直しだな」
「お前、それ、俺の親父の……形見……」
「その話なら、今朝、聞いたよ。床の間に飾っとく為の家宝の刀なら、別に刃引きしてあっても問題有るまい。むしろ、刃引きしてた方が事故が起きた時、怪我が軽くて済む。親父さんの思い出の品として、せいぜい大事にしろ」
「ふ……ふ……ふ……ふざけんなぁッ‼ 折角、修理したのに、何て事しやがるッ‼」
「ああ。所で、誰のお蔭で修理出来たんだっけな? 私が居なけりゃ修理出来なかった以上、私から見て感心出来ない事に使おうとしてるなら、私がブッ壊しても問題有るまい」
クソ、いちいち、痛い所を突いてきやがる。
「なぁ……お別れの前に1つだけ聞いていいか?」
「な……何だよッ……⁉ これ以上、どんな嫌がらせをやる気だッ⁉」
「英雄に祭り上げられて……あんたの親父さんは幸せだったのか?」
「えっ……?」
侵入者2名が出て行って、しばらくの時間が過ぎた。
この雑居ビルの1階で、唐辛子&胡椒を使った即席トラップに見事に引っ掛かった他のスキンヘッド達が戻って来て、俺達の縄を解いてくれた。
「なあ……おっさん……。あんた、平和ボケしてる『本土』のヤツらなんて、簡単に出し抜けるとか言ってなかったか?」
俺はスキンヘッド達のリーダー格にそう言った。
「うるせえ」
「ところで……あいつ……『火事場の馬鹿力』を出す自己暗示とか言ってたけど……」
「もし、俺達も似た事が出来るなら、お前も『火事場の馬鹿力』を出せるようにしろってか?」
「ああ……」
「似た呪法や暗示は俺達『台密』にも有る……。けど、鍛えてねぇヤツが、そんなモノ使ったら、病院送りだ」
「そうか……」
「後遺症が残っていいなら、いくらでもかけてやるけどよ」
「あと、金有る?」
「あっ?」
「まだ時間は有る……。夕方までに……あそこに行ければ……俺の親父の形見を再生させる手は有る筈だ……」
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