(ⅱ)

「何だ、こりゃあッ⁉」

 スキンヘッドが使っている携帯電話Nフォンの画面に映っているのは、8足タイプの地上用小型ドローンだった。

 その「背中」と云うか、「上」には、何かの箱が有った。

『どうも……このロボ公に取り付けられてる「箱」の中に……「結界」が検知した「呪物」が有るみたいです』

『おい……すまん……代ってくれ……。「結界」内に侵入者有り。2名。防御魔法を施した「護符」か何かを持っているようです』

 この雑居ビルの下の階に降りていったスキンヘッドの下っ端達は、そう連絡する。

「ちょっと待て、お前ら、1階に居るのに、そいつらが侵入したのを見落したのか?」

『上です。侵入者は、上の階から、このビルに入りました。どうも、隣のビルの屋上から飛び移ったみたいです。多分、これは……単なるオトリです』

「はぁっ⁉」

『うげっ‼』

「おい、今度はどうした⁉」

『「呪物」が入っている……らしい……箱を開けたら……何かが……撒き散らされて……目と……鼻と……あと、喉も……』

 携帯電話Nフォンごしに聞こえるのは、聞きとりにくい苦しげな声。

「どうなってんだ、一体?」

『多分……匂いや色からすると……』

「ヤバい薬品か? 催涙ガスか何かか?」

『唐辛子と胡椒みたいです』

「あっ?」

 次の瞬間、窓ガラスが割れる音。

「ガラス代は、どこに送金すれば良い?」

 聞き覚えが有る、あの糞メスガキの声だった。

「……て……テメエ……」

「臨兵闘……うわっ‼」

 この部屋に残っていたスキンヘッドの1人が呪文を唱えたが、その最中に、次々とガラス片が投げ付けられる。

「呪文唱えてる最中に攻撃するか、卑怯だぞ‼」

 部屋に残ってるスキンヘッド達の内、一番若いのが、的外れな非難の声を上げた。

「阿呆か」

 その一言と共に、またしてもガラス片が宙を飛び、その一番若いスキンヘッドの右の肩口に突き刺さる。

「ぐっ……」

 窓ガラスを割って部屋に入ってきたのは2人。

 両方とも、バイク用のヘルメットにプロテクター付のライダースーツを着ている。

 身長一八〇㎝ぐらいの男が1人。

 そして、身長一五〇㎝台前半のメスガキが1人。声からして、多分、こいつが……。

「お前が……」

「直に会うのは初めてだったな……。と言っても、知り合って2日ぐらいだが」

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