(10)

「なるほどね、そう云う事か……」

「でも……」

「勇気君が残るのは合理的な判断かもな……」

「あの……荒木田さん……」

 経緯を説明し終ると、荒木田さんは、そう言った。もちろん、勇気の反応は……。

「だって、おそらく、前線に出る予定だった人間の中で、勇気君が、総合的に一番……その……何と言うか」

「役立たず?」

「お……おい、レナ……」

「他に言い方は有ると思うが、端的に言えば、そうだ」

「でも、折角、こいつを再生出来たのに……」

「その強化服パワードスーツを着装したとしても、戦力・経験その他全てで、君が、その……」

「ドンケツ?」

「レナ、いいかげんに……」

「他に言い方は有ると思うが……端的に言えば……」

「レナさん、高木と気が合いそうだな……」

 ボソっと今村君が呟く。

 望月君とヒゥ君も、それにうなづく。

「あの……ところで、あの猿は?」

 問題の猿は、勇気の部屋まで付いて来たが、妙にお行儀がいい。

「助っ人の1人目だ……。正確には1人目の半分」

「半分?」

「人間1人と猿1匹で1組の『魔法使い』だ。ちなみに、魔法が使えるのは猿の方」

「は……はぁ」

「あと、これを預かって来た」

 そう言って荒木田さんが鞄から出したのは……。

 モバイル型のWi−Fiルータが5つ。

 モバイルPC1つ。

 モバイルPC用の増設モニタが4つ。

 お寺や神社で売ってそうなお守りが2つ。

「音声と映像を中継する仮想サーバーは既に出来てる。ただし、作戦終了後1時間で消える。あと、このルーターも、その時点で回線に繋らなくなる」

「何をもって作戦終了なの?」

「前線に出てるヤツの半分以上が死亡または行動不能・行方不明になるか、現場指揮官の『おっちゃん』が、作戦が失敗または成功と判断した時だ」

「ごめん……みんな……出てってくれ」

 その時、勇気が悲痛な声で言った。

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