第731話 恐ろしい事
「ミーチャ。こんな時間にどうしたのだ?」
ミルクパンにミルクを注いでいると、物音を聞きつけたキラがキッチンに入ってきた。
「お姉ちゃん。あのねえ……」
ちなみにこの家で暮らすようになってから、ミーチャはキラをお姉ちゃんと呼ぶようになっていた。
「怖い夢を見たのか?」
「怖いというより、不思議な夢なんだよ。夢の中で僕はレム・ベルキナになっていたんだ」
「なんでミーチャがそんな悪党に!」
「お姉ちゃん。レム・ベルキナは、悪い人じゃないんだよ。かわいそうな人なんだ」
「かわいそう? まあ、戦災で両親を失った事は同情するが……しかし、レム神を生み出してしまったのはあいつではないか」
「それはそうだけど……」
それでも、ミーチャにはレム・ベルキナを悪く思うことはできなかった。
「それで、ミーチャ。夢の中でレム・ベルキナは何をしていたのだ?」
「あのね……戦争を起こした元大統領に会いに行くんだよ」
「会いに……復讐しに行ったのか?」
ミーチャは頷く。
「殺したのか?」
「ううん。レム・ベルキナは、殺すだけじゃ許せなかったんだ。だから、元大統領がもっとも嫌がる事をしてやりに行ったんだよ」
「嫌がること?」
「ベル・ベルキナは、人間の記憶を読みとる機械を使って、元大統領の記憶をすべて読み取ったんだ」
「それは……復讐になるのか?」
「元大統領は、嘘つきなんだ。そんな機械を使われたら、今まで自分がついていた嘘や隠し事がすべてばれてしまう。元大統領はそれがすごく嫌だったんだ」
「まあ……それは、確かに隠し事がばれるのは嫌だな」
キラのこめかみにツーと冷や汗が流れたが、ミーチャは気が付かない。
「復讐はそれだけじゃないんだ。元大統領は、機械にかけられた後、ボケ老人になってしまったんだよ」
「それは……死よりも恐ろしいな」
「でも、その後で……」
「ん?」
「その後、レム・ベルキナの身に、恐ろしい事があったんだ」
「恐ろしいこと? 何があったのだ?」
ミーチャは首を横にふる。
「それが、思い出せないんだ」
「思い出せない?」
「何か恐ろしい事があったのだけど、何があったのか思い出せないんだよ」
キラはミーチャを優しく抱きしめて言う。
「大丈夫。ただの夢だ。おまえを苦しめたレム神は、もうすぐ海斗殿が成敗してくれる」
とは言ったものの、キラもミーチャの夢のことが気になり、翌朝この事を香子に相談した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます