第726話 好きになって欲しい

 ただいまの行動により、ご主人様の好感度を五パーセント下げる事に成功。


 ご主人様が、私に恋愛感情を抱く可能性は遠のいた。


 これが私の三つ目の任務。


 ご主人様の幼馴染である鹿取香子様以外の女性と、ご主人様が恋愛関係になる事を極力阻止する任務を私は制作者から与えられていたのだ。


 その女性には、私も含まれている。


 したがって私は、ご主人様のお世話をしても、けっして好感を持たれてはいけないのだ。


 でも……


「はあ……オムライス食べたい。ステーキ食べたい。ビールが飲みたい」


 悲しそうに非常食を齧っているご主人様を見ていると辛い。


 ロボットなのに、こんな感覚を覚えるなど変かもしれない。


 普通のAIには、感情や欲望など無いのだから。


 だけど、人の記憶をベースに作られたAIは感情も欲望もあり、時には人を愛してしまう事だってある。


 そして私は、鹿取香子様の記憶をベースに作られていた。


 だから、私には感情も欲望もある。


 そして、ご主人様に恋をしていた。


 この恋心は、鹿取香子様のご主人様に対する恋愛感情がコピーされたものだという事は分かっている。


 分かっていても、私がご主人様を愛おしく思う気持ちはどうにもならない。


 だから辛い。


 本当は、ご主人様にもっと美味しい物を食べさせてあげたい。


 もっと優しくしてあげたい。


 キスだってしたい。


 でも、それは許されていない。


 他の女が、ご主人様に近づく事を阻止する任務は私自身も対象になる。


 だから、ご主人様お願いです。


 もっと私への好感度を下げて下さい。


 もはや、オムライス程度では挽回できないくらい私の事を嫌いになって下さい。


 そうすれば、ご主人様にもっと美味しい物を食べさせてあげます。


 膝枕だってしてあげます。


 キスは許されませんが、ご主人様に恋愛感情を抱かれない程度には優しくしてあげます。



 でも、やはり好きになってほしい……


    (番外編2終了)

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